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第84話 退治屋の話⑩

先に目を覚ましたのは、勝やんだった。


将吾、中島、美鈴は学校帰りに必ず怪我人二人が収容されている部屋の前に誰が言うでもなく集まり、特に会話もないまま、壁にもたれかかって体操座りをしていた。

そこにバタバタと白衣を着た男とナース服の女、そして青年が二人駆けつけてきたのだ。

そして、勝やんの部屋の前に集合した。


「勝やんに、何かあったんっすか!?」


将吾が大人の集団に話しかけた。


「……ああ。彼はまさる君、だったかな? 目が覚めたっぽいんだよ」


白衣の男がそう答えた。

将吾たちはこの部屋は監視カメラのようなもので24時間監視しているとは聞いていたので、きっとそれで気付いたのだろうと思われた。


「勝やんが、起きたんでヤンスか!?」


「助かったってこと!?」


三人の顔がパッと明るくなる。


「……それを、確認しに来たんだよ」


青年の片割れが、険しい表情でそう言った。

将吾はその緊張感を察知し、一気に心が深みに沈み込んでいくような、絶望感に似た感覚を覚えた。


「そんな、まさか……」


「だから、それを確認しに来たのよ。まだそうと決まったわけじゃないわ」


ナースの格好をした中年女性が、優しく将吾たちにそう言った。

しかしながら、その表情には緊張が隠せずに貼りついており、大人たちの見立てでは勝やんは宜しい状態ではないということが、鈍い将吾ですら察しれてしまった。


「勝やん!」


将吾は居てもたってもいれず、大人たちを押しのけて勝やんの居る部屋の扉に向かって突進していた。


「やめないか!」


だが、多勢に無勢。

すぐに大人たちに取り押さえられてしまった。


「離せ、コノヤロー!」


将吾はジタバタと暴れるが、後ろ手にされて手錠をかけられ、膝裏を蹴られて跪くように崩れ落ちたところで両足首も手錠で固定されて床に転がされる。


アッと言う間のことであった。

ずいぶんと手慣れたものだと、それを見ていた中島は他人事のように思った。

実際、《《ああなってしまった》》患者の身内の反応はだいたいこうであることが多い為、この病院兼収容施設のスタッフたちは対処に慣れてしまっているということなのである。


「あなた達は大人しくしていてね」


ナース姿の中年は、強張った表情のままニコリと無理矢理笑みを作ると、中島と美鈴に語りかけた。


「どうせ、この鍵が無いと開けれないんだ。フライングは無駄だぜ」


もうひとりの青年が、ジャラジャラと鍵束を鳴らした。

腰から下げた鍵束の横には特殊警棒がぶらさがっている。

青年たちは、左腕に掲げられた腕章からコニュニティで俗に「警備部」と呼ばれているメンバーの様であった。


「じゃあ、この元気なボクのこと、お願いしていいかしら」


中島と美鈴は半分放心状態のまま、コクンと頷いた。


「ちくしょう、離しやがれっ! 勝やん! 勝やん!!」


将吾の悲痛な叫びが廊下に響いた。


僕だって叫びたいでヤンス。でも、なんだろう……動けないでヤンス……。


どうしよう。どうしようだし……。


無力であった。

それは、今後彼らが大人の階段を登る上でおそらくは何度も経験する、自分の力ではどうしようもない現実を突きつけられる事態……初めて真に味わう「挫折」というものであった。ただ「初めて」故に、中島と美鈴はソレとの折り合いの着け方というものを知らない。故に、ただ茫然とするしか無かったのである。


そんな子供たちの気など構うことなく、大人たちは勝やんの部屋の鍵を開け、そして扉開けてぞろぞろと入って行った。

ただ、流れ作業の様に。


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