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第85話 終末的介護問題

「先日ゾンビ化しちゃった男の子って、孤児だったかな?」


AM11:05。

ここは札幌コミュニティの中心にある元学校の会議室である。

そこには山田をはじめ、10人の代表者たちが集まっていた。一応、5匹の代表猫(?)も勢揃いしていることを報告しておこう。


「は、袴田(はかまだ)(まさる)くん、15歳。お、お父さんが存命です」


立花まりもがそう答えた。


「そう。それで、身内……お父さんの希望は何っだったのかな?」


「け、検体、ふふふ、検体の希望」


「……まあ、普通そう来るか」



ここで、この会話の意味を説明しておこう。

身内がゾンビや昏睡状態になってしまった場合、いくつかの選択肢がある。


ひとつは、殺処分。


最も手っ取り早く、最も選択されるものだ。

ゾンビ化したとは言えまだ「生きている」身内を殺処分と選択するのは如何なものかと思うかもしれないが、多くの者が最終的に殺処分を選択するもには理由があるのだ。それは後で述べよう。



そして、介護。


これは基本的に身内が行うことになる。

だいたい、これをまず選ぶ者は多い。ゾンビ化したとは言えまだ「生きている」身内を簡単に見捨てられないということだろう。


ただ、ゾンビの介護は寝たきり老人の介護以上に大変なことなのだ。ゾンビには食事の準備、排泄物の処理、入浴などできるはずもないので全て自分が行わなければならないし、手足を拘束したり猿ぐつわをしたりしているとは言え、それで100%安全かと言われるとそうではないのだ。人間はどうしても慣れによる油断というものがあるので、万が一があるからだ。


それもあり、介護もちの者はどうしても疎まれる。想像してみて欲しい。隣人がゾンビを飼っているのだ。それでもピンと来ないなら、例えば君の隣人がもし毒グモとか毒ヘビの飼育マニアだったと知ったらどう思うだろうか。普通に気分がいいものではないだろう。


そのようなこともあり、介護を選んだ者はコミュニティの生活圏の最も端にある一角にほぼ強制的に住居を割り振られる。セキュリティ上の問題もあるが、さながら被差別者の様な扱いをされることが精神的に地味にキツい。


大変なのはそれだけではない。介護の恐ろしいところは、介護ばかりをしていればいいというワケではないということだ。ある程度の配慮はあるとは言え、コミュニティ内で割り振られた労働はきちんと行わなければならないのである。

いつ治るのか、いや、治らない可能性のほうがはるかに高いと言われているゾンビの面倒を見ながら、である。ボケ老人の介護なら近い将来亡くなるであろうから終わりは来るわけであなのである意味希望があるのだが、ゾンビの場合はいつ終わるとも知れずに延々と続くのだ。これは、肉体だけではく精神的にも厳しいことなのである。


このように、介護を選択した者の多くは数か月で心身の調子を崩してしまう。

こうなってしまえば介護とか言ってる場合ではないだろう。結局は面倒を見切れずに殺処分を願い出るか、介護不能として強制的に殺処分とされるパターンとなるのだ。



最後に、勝やんの場合でもそうであった検体としての提供。

既にゾンビと化して長期間経過している場合、そんなゾンビは普通にゴロゴロいる為に供給過多状態で基本受け付けてもらえないが、なりたてのゾンビは今となっては珍しい。経過観察の研究対象としてうってつけであり、非常に重宝されているからだ。


そうだとしても、ゾンビ化したとは言え、まだ「生きている」身内をモルモットに差し出す身内はそうはいないだろうと思われるかもしれない。

しかしながら、見方を変えてみてほしい。できたてゾンビは貴重な存在故に、簡単に死に至るような研究材料にはされないのだ。要するに、殺処分からは最も遠いポジションにあるゾンビと言えるだろう。


もしかしたら、勝やんが生きているうちにゾンビの治療法が見つかるかもしれない。

いや。とにかく、生きていてほしい。

勝やんの父親がこれを選択したのは、おそらくはこのあたりの心情であろう。



あと、番外編として郊外にリリースという手段もある。

殺すこともしのびなく、世話することも大変だ。それならば、捨てちゃえばいいんじゃね? の精神だ。

しかし、これを行ったことが周囲にバレた日には白い目で見られることは必至であろう。

犬や猫でもそうなのだ。ましてやゾンビは一応人間なのである。

そうでなくても危険生物を野に放ったとか、もってのほかであるからだ。

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