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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
五章 夏の終わりに戦士の休息を

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安息への切符

更新ですー


ソロ神官の六巻が発売となっております!

 シルさんに見送られ、スキル屋を後にした俺たちは、アンヴィレの街をあてもなく彷徨っていた。すでに夕刻を迎え、西の空には赤く輝く太陽が空を染めていた。



「どうっすかなー、これ」



 俺は歩みを進めながら、手の中にある細長い長方形状のチケットを見る。端っこが切り取れる形になった、何処にでもありそうなチケットだ。


 だが、これをくれたシルさん曰く、このチケットは一種の魔道具なんだとか。


 効果は、チケットの端っこを切り取ることで、その行動を行った人物を中心とした一定範囲内にいる人を特定の場所に転移させるというモノ。


 簡単に言えば、ちぎるだけで目的地にたどり着ける魔法のチケット、というわけだ。


 で、その『特定の場所』というのは、秘境に存在する自然豊かな安息地らしい。そこでは森林浴や綺麗な湖での水浴び、可愛らしい動物とのふれあい、夜になれば満天の星空を拝むことが出来、花火も可能だとか。あと、温泉もあるらしい。


 つまり、このチケットの形をした魔道具によって行ける場所は、リゾート地のような場所というわけだ。


 シルさんはこれをアンヴィレに住む知人の男性に貰ったらしい。だが、シルさん自身はお店を開けるわけにもいかず、使わずにいたらしい。


 で、それを譲ってもらったのだが……渡される時に言われた言葉が、未だに納得いかないんだよなぁ。


『こういうところで一度ゆっくりすれば、神官さんの異常事態も治ると思うから! またしっかりと戦闘狂に戻って周りを安心させてあげて!』って……。


 いやいやいや、まるで俺が正常時から戦闘狂であるかのように言うのは止めていただきたいんだが? だが?


 何度も言っているが、俺は戦うのが好きなだけで、戦いをしないと死んでしまうわけではないんだ。そこのところを間違えないでいただきたい。


 

「たく、酷いよなぁ……なぁ、アヤメ、そう思うだろ?」


「………………(こてん)」



 いや、なんでそこで首を傾げるんだ。


 アヤメの純粋な瞳は、『お前は何を言っているんだ』とでも言いたげだった。俺の心に百のダメージ。効果は抜群である。


 で、でも、俺の勘違いということもある。そんな、アヤメが俺を傷付けるようなことをするわけがない。杞憂だよ、杞憂。


 ま、まぁでも? 万が一ということもあるし、一応確認しておこうかなぁ。


 俺は小首をかしげているアヤメに、努めてにこやかに声を掛ける。



「なぁ、アヤメ? 俺は別に戦闘狂じゃあないよな?」


「(ふるふる)」


「……かはっ」



 あまりのショックに、胸を押さえてその場に崩れ落ちそうになった。


 か、間髪入れずに否定された……だと?


 いつもゆったりとした反応しかしないアヤメが、質問後コンマ零秒以内に反応するとか……『俺が戦闘狂ではない』という主張は、そこまで受け入れがたいものだったのか……?


 いや、まだだ。まだあきらめるわけにはいかない……! 今ならまだ、アヤメの認識を変えることが出来るかもしれない!!


 崩しかけていた体勢を元に戻し、俺はアヤメに微笑みかけた。頬が引きつっているような気がするが、気のせいだと思いたい。


 

「ア、アヤメー? もしかすると知らなかったのかもしれないから言っておくけど……俺は、戦闘狂じゃ、ない。オーケイ?」


「………………(そっ)」



 そう言った俺の額に、アヤメはその小さくたおやかな手を触れさせた。 



「………………(ほっ)」



 そして、露骨に安心したように胸をなでおろす。


 ……これは、アレか? もしかして俺、どこかおかしくなったと思われたのか?


 どうやらアヤメの中で『俺=戦闘狂』という認識は絶対なモノであり、それを変えることは不可能……ということだろうか?



「……………………ふっ」



 俺はしばらく黙り込んだ後、静かに笑みを零した。


 そして、夕暮に染まる空を見上げると、大きく息を吸った。


 見上げた先には、積み重なった雲に夕日が当たり、複雑な陰影と鮮烈な茜色が幻想的な光景が広がっている……のだが。


 おかしいなぁ? キレイな景色が視界がぼやけるせいでぜんっぜん見えない。あははっ、不思議なこともあったもんだ。


 いや別に……泣いたりしてないし。アヤメに戦闘狂と思われていたことがショックで泣いたりとか、これぽっちもしてねぇし。


 だからアヤメ? その心配そうにぽんぽんするのは止めてね? 大丈夫、大丈夫だから……。


 だいじょうぶ、だいじょうぶと自分自身に言い聞かせながら。


 アンヴィレの一角で、俺は小さな相棒の慰めを受けながら、瞳から流れ落ちようとする水分を止めるのに努めるのだった。








 

 ……ということがあったと、夕飯の席で蒼と太陽に話してみた。


 俺の話を聞いた二人の反応は……まぁ、予想の範疇から洩れず……。



「「ぶふぅ……っ!! くっ……くくっ……ふ、ふふっ……。ふはっ! あっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!!!」」


「配慮の欠片もねぇなお前らぁ……!!」



 大・爆・笑、である。


 もうちょっとこう、俺に対して気を遣うとかできないのだろうか? ……できないんだろうなぁ。


 不満を込めた視線を送ってみるも、二人とも笑い止む様子はナシ。ふむふむ、なるほどな。よぉく分かった。お前たちがそういう態度をとるんなら、俺にも考えがあるぞ?



「はぁ、しょうがない」


「「ひーっひっひっひ! くくっ……! ふはははははっ!!」」


「デザート用に冷やしておいた西瓜、お前らは食べなくていいんだな?」


「「ごめんなさいすみません調子に乗りました西瓜食べたいです」」



 ゴン、とダイニングテーブルに額を打ち付けるようにして頭を下げる蒼と太陽を見て、大きくため息を一つ。


 素直に謝れるのはいいことだが、いうこと聞かない子供に対して母親が『おやつ抜きですからね!』と怒るのと大差ない感じのことをさせないで欲しい。お前らもう高校生だろうが。


 ため息を吐きつつ席を立ち、冷蔵庫に向かう。切って冷やしておいた西瓜の乗った大皿を取り出しテーブルに戻れば、アホ共がキラキラとした瞳で俺の手に乗った皿を見ていた。どうやら反省の念を食欲が上回ったらしい。


 若干イラっとしたので、このまま冷蔵庫にUターンしてやろうと思ったが、大人げないので止めておく。いや、大人げないもなにも、俺とこいつらは同い年のはずなのだが……やめよう、こいつらが手のかかる子供っぽいのは今に始まったことじゃない。


 もっかいため息を吐き、皿をテーブルの上に。「「わーー!!」」と歓声を上げる蒼と太陽。無邪気かよ。


 てなわけで、デザートタイムである。冷えた西瓜、美味しい。塩を掛けて食べると甘みが増して、更にグッドだ。



「にしても、流も相変わらずだよなぁ」


「……ん。同感」


「なんのことだ?」



 しゃくしゃくと西瓜を貪っていた二人が突然要領の得ないことを言ってくる。相変わらず? 何がだ?



「流が貰ったチケットの話だよ! チケット!」



 首を傾げている俺に、太陽は大声でそう言いながら食べ終わった西瓜の皮部分を突き付けてくる。ちょっ、汁が飛ぶから止めろ!


 

「お前、後で机拭いとけよ……? で、あのリゾート地行きのチケットがなんだって?」


「……流くん。それ、激レアアイテム。しかも、『NPCに善意で譲ってもらう』っていう入手手段しかないから、ほとんど都市伝説レベルのヤツ」


「へぇ、そうなのか」



 そんなものをくれるとは……これはあれだな。後日、しっかりとシルさんにお礼をしないと。ボスモンスターの素材とかでいいだろうか? スキルブックを作る材料になるって言ってたし、あって困ることはないだろう。



「……あれは、なにも分かってない顔」


「ああ、それでこそ流だぜ」


「……その、『分かってます』みたいな顔止めて。キモイ」


「酷くない?」



 何やらじゃれ合っている二人を眺めながら、俺はふと思いついたことを口にした。



「でさ、そのチケットでいけるリゾート地なんだけど……お前たちも来る?」


「「勿論!!」」



 おおう、反応早かったな。ちょっとびっくりしたわ。


 せっかく複数人でいけるんだし、俺とアヤメだけでってのもなんだからな。とりあえず、蒼と太陽は来る、と……。


 後は……さて、誰を誘ってみようか?

 

読んでくれてありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] 紅月の時に出た白夜の試練のとこなんで6巻で回収してんないんですか。6巻は面白かったけどそこだけモヤモヤする
[気になる点] ディーアちゃんはもう出てこないんですか?リューとの絡みや所々に出てくるポンコツっぽさが結構気に入ってたのですが…
[一言] 自称一を聞いて十を知る人「なるほど、リゾート...はっ!              水着回か!待ってます!」
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