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ソロ神官のVRMMO冒険記 ~どこから見ても狂戦士です本当にありがとうございました~  作者: 原初
四章 初イベントと夏休みの終わり編

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リバイヴ・オブ・ディスピア 連行

……なんでこんなに更新遅れたんだろう。

あっ、転スラのアニメ始まりましたね。楽しんでみてます。

 その後の訓練場は、とても騒がしくなった。


 【フラグメント】にやられた百人が反省やら現実逃避やらでギャーギャーと騒いでいるところに、上から降りてきたイーリスの登場。

 例外を除き、ゲーマーという生き物は負けず嫌いな性質を持つ。相手がFEO最強の存在であったとしても、負けてしまったという事実は面白いものではない。

 というわけで、不満が溜まる前に彼らの精神を安定させるために、『癒し』が必要になるわけで……。

 その『癒し』が、イーリスというわけだ。

 可愛い女の子に「大丈夫ですか?」と心配され、「皆さん、凄かったです!」と明るく笑顔で言われて、嫌な気分になる者は稀だろう。大半の者は、嬉しく思うはずだ。


 ただ、今回は少しばかり効果があり過ぎた。



「いやっふぅううううううううううううううッ!!」

「うぉおおおおおおおおおおおおおお! イーリス様! イーリス様ぁアアアアアアアアアア!」

「天使!? マジで天使何だけどぉ!?」

「ああ……イーリス様に優しい言葉をかけてもらえた……俺、もう死んでもいいわ……」

「ハァハァ……もっと……もっとその可愛らしいお声をお聞かせくださいぃいいいいい! ぶひぃいいいいいいいいいい!」

「イーリスちゃんかわいい……百合の花園におぼれさせたぁい……」



 阿鼻叫喚。


 まさしくその言葉が似合う状況だった。

 男性プレイヤー女性プレイヤー関係なしに、イーリスの魅力にやられ、奇声奇行に走っていた。

 彼らの状態を言葉にして表すと、『可愛狂い』とか『萌え狂い』といった感じだろうか?

 中にはどう考えてもアウト判定な発言をしている者もいる。

 率直に言って、気味が悪い。


 ここまでの騒ぎになるとは思っていなかったのか、イーリスはどうしていいか分からずにおろおろとしている。

 リューの背後に隠れ、そっと奇行に走る者たちをこわごわと眺めていた。

 そんな姿も、彼女の可愛さをアピールする助けになってしまっているのが、何とも皮肉だった。


 そして、そんなイーリスの隠れ蓑として使われているリューはと言うと……。



「えっと……そろそろ落ち着いてくれませんか?」



 そう、困った笑みを浮かべ、変人共を何とか落ち着かせようとしていた。

 リューだって、本音を言ってしまえば、こんな変人の相手はしたくない。というか、変態の相手なんて基本誰もしたくないはずだ。

 さりとて、自分の背中で怯え震えているイーリスを置いて逃げるわけにはいかないし、彼女がおびえている原因を排除する必要もある。

 だが、イーリスがしがみついていることで、直接的な手段に出ようにも出ることが出来ない。

 なので、リューらしからぬ穏便な手段で説得をしているのだが……。



「なぁ、アイツおかしくね? つーかズルくね? あんなに聖女様に密着されてるとかさぁ……」

「ああ、ずるいな。果てしなくズルい。ホント、そこ変われやこのクソ野郎って感じだな」

「……可愛いイーリスちゃんに男は不要……。うふふふふ……邪魔者には消えてもらわないとねぇ……」

「やっちゃう? やっちゃう?」

「やっちゃうか。思ったよりヨワソーだしな!」



 相手が弱気な場合、妙に強気になってしまうのが人というモノで。

 あはは……と苦笑いを浮かべ、できる限り穏便にことを済まそうとしているリューをみて、勝手なことを言い始める奇行集団。

 色々と恐ろし気な噂のある相手だと思ったら、温和な――弱気ともとれる――態度をとっている。そのことが、興奮状態である彼らから、『自重』の二文字を奪い去っていた。

 負けてしまったことによる苛立ちを、イーリスと仲が良いということに対する嫉妬に混ぜて。


 だが、彼らはリューにそう言った態度をとることによってどうなってしまうのかを失念していた。

 過去、リューに対して舐め腐った態度や敵対姿勢を向けた者たちがどうなったかを、よく考えずに発言してしまったのだ。

 それが、彼らの首を絞めるなど、この時の彼らには想像できなかった。

 そして、そのことを彼らは深く深く後悔することになる。



「―――――――てください」



 最初の一言は、小さすぎて何を言っているのか分からなかった。

 けれど、小さくともよく通るその可憐な声は、誰が主なのかを明確に示していた。

 声の主―――イーリスに視線が集中する。

 リューの背後に隠れていたはずのイーリスが、いつの間にかリューをかばうようにして立っていた。

 うつむいているので、その表情は分からない。



「…………やめてください」



 今度は、その場にいる全員にはっきりと聞こえた。

 硬い声音で紡がれたのは、拒否の言葉。

 それが何に対することなのか分からず、奇行集団は一度静まり返り、すぐにざわざわと近くの者と顔を見合わせる。

 そして、答えを求める様にイーリスに視線を戻した。

 彼らの視線を受けたイーリスが、ゆっくりと顔を上げる。

 そこに浮かんでいた表情は…………怒り。

 柳眉はきゅっと吊り上がり、口元はきゅっと引き締められている。頬は紅潮し、瞳には険しい光が宿っていた。

 誰が見ても分かるほど、明確な怒りがそこにあった。

 


「うぇ……?」

「おぅ……?」

「な、なんだぁ……?」



 イーリスの怒りを真正面から受けた奇行集団が、目に見えて狼狽える。

 イーリスは、そんな彼らに視線を一度ぐるりと巡らせると、すぅと息を吸い込んだ。

 そして、



「私のリュー様を、馬鹿にしないでくださいッ!!」



 そう、大きな声で叫んだ。

 


「…………え?」

「………あれ?」

「…………ふぅん」

「あはは……はぁ」



 きょとんとする者。状況についていけず首をかしげる者。冷たい視線をある特定の人物に送る者。半笑いの後、「ああ、またか」とため息を吐く者。

 イーリスの叫びに、対する反応は、人それぞれだった。

 そんな彼らの反応など気にせずに、イーリスはまくしたてる様にして言葉を続ける。



「リュー様はすごいんです! どんなに強いモンスターも簡単に倒しちゃうくらいに強くて、けどその強さを鼻にかけたりしなくて、どんなことがあっても私を守ってくれて、優しくて……とにかく! リュー様を悪く言うのはやめてくださいッ!!」

「イーリス様……!」



 その言葉に感極まったようにイーリスの名を呼ぶリュー。

 イーリスの言葉からは、リューへの強い信頼が見て取れた。それは、このイベントの最中、短い期間の間に築き上げたとは思えないほど強固なモノだった。

 言葉で、行動で示してきたことが実を結んだことを、リューは実感したのだった。

 

 リューとイーリス。二人の間にある絆の強さ。それがよく分かる一幕だった。


 良き哉良き哉……と、話を綺麗に閉めたいところだが、そうは問屋が卸さない。

 イーリスの言葉に感動しているリューの背後から、ガシッと肩を掴む手が二本、伸びてきた。



「…………リューくん?」

「ははは……先輩?」



 両耳に聞こえてくる異なる二つの声。しかし、そこに込められた感情は二つともよく似たものだった。



「……随分と、仲良くなってる」

「そうっすねぇ。まったく、この短時間でなにをどーやったら此処までになるのやら……。流石っすね、先輩」

「……えっと、二人とも?」



 なぜだろう。振り返って二人の表情を確認するのが酷く恐ろしい。

 リューは内心で冷や汗だらだらになりながら、そう思った。



「昨日と今日。わたしたちの見てないときに、聖女様と何があったの?」

「うわぁお。それは興味があるっすねぇ。せ~んぱいっ! 教えてくださいっす!」



 サファイアは淡々とした口調で、マオは明るく元気に。いつもと変わらぬ様子だが、それがさらに恐怖を駆り立てる。

 ひくっ、と口元を引き攣らせるリュー。そんな彼に、逃げるという選択肢は残されていなかった。



「だ、誰か……助け……!」



 最後の望みと、リューはアポロやライゴのいる方に視線を向ける。

 サッ、とリューの視線でのSOSを受けた二人は顔を全く関係ない方に向けた。要は、見捨てたのである。



「おまッ!?」

「さぁ、リューくん。こっちでゆっくりとお話。しよ?」

「そうっすね。色々と聞かせてほしいっす♪」

「え、あっ、ちょッ!? う……うわぁああああああああああああああああああああああ!?」



 ずるずると二人に引きずられていくリューは、悲痛な悲鳴を上げるのだった。



「くっ……わりぃ、リュー……!」

「お前のことは忘れんで……!」

「ですから、リュー様は……って、あれれ? リュー様?」 

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