案の定
「あははははははははははははははははッ!! お、お腹いたいっす……。ぷっ、くくくくくく……」
大・爆・笑。
遠慮? 何それ美味しいの? と言わんばかりの容赦ない抱腹絶倒をかましてくれやがった後輩に恨みがましい視線を送ってみるが、笑いを止める様子は無し。
「そ、そこまで笑うこと、ないと思うんだが……?」
「いやいや、何言ってんすか先輩。これ見て笑わないとか嘘っすよ。『狂戦士ん官』……ぷっ」
「ヤメロ……。めちゃくちゃ悩んで選んだ俺の決断を笑うな……」
「神官戦士とか狂戦士とかならまだ予想できる分マシだったんすけどねぇ……。いやはや、やっぱり先輩は先輩っすね」
「なんかすっげぇ馬鹿にされた気がするんだが?」
「そんなことないっすよー。というか、嫌だったんなら司祭とか僧兵にしとけばよかったんじゃないっすか? 選択肢にあったんすよね?」
「……性能的に、この職業に勝ち得る部分が名前のまともさ『だけ』だったんだよ」
ちなみに、一番ぴったりのように思える僧兵の職業効果は、神官から物理攻撃力低下のデメリットを消しただけというもの。そんなもん、【神官(爆笑)】で事足りてんだよ。
「もう、名前に関しては考えないことにした。気にしたら負けだからな、こんなもん」
「まぁ、先輩がそれでいいならいいっすけど」
「よくは無い。妥協に妥協を重ねた結果だ」
「あ、そっすか」
ははは……。と乾いた笑いであきらめたように言ってやれば、後輩も笑うのをやめて同情的な視線を向けてきた。あ、それはそれで心にくるものがあるなぁ……。
精神に多大なダメージを受けた俺を、アヤメが一生懸命に慰めてくれる。アヤメの頭をなでなで、ケモミミをモフモフすることで癒される。
「ああ、俺の味方はお前だけだよ、アヤメ……」
「先輩先輩、アヤメちゃんとイチャイチャするのは構わないっすけど、ちょっといいっすか?」
「言い方にかなり悪意があるのが気になるが……なんだ?」
「いえ、先輩が転職に成功したことをギルマスと副マスに伝えたところ、二人ともこちらに来ると言ってるんすけど……」
「なん……だと?」
あの二人が来る? ということは、転職結果を二人に報告することになるわけで……。そうなったらどうなるかなど、火を見るよりも明らかで……。
「ぎゃはははははははははははははははッ!! あーはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!! ひ、ひーひっひっひっひっひっひっひっひっひッ!! はははゲホッ! ゲホッ!」
大爆笑テイク2。笑い過ぎてむせているくらいだ。後輩以上に容赦のない笑いを見せてくれやがったアポロ。地面を転げまわる勢いで笑い続けるアポロの姿に、周りのプレイヤーがぎょっとした顔をしている。そういえばこいつ、結構な有名人何だっけか。
コイツの知名度とかは今はどうでもいい。とりあえず、この馬鹿笑いを止めるとしますか。
固く手刀を作り、大きく振りかぶって、狙うは~…………目ェ!!
「チェストォ!!」
「ぎゃぁあああああああああああッ!?」
俺の全力の手刀がアポロの両目を打ち抜いた。「目が、目がぁ~」と某有名映画の大佐さんの物真似をしながら地面を転がるアポロ。痛みはないはずなのでおふざけでやっているだけだろう。
さて、そんなアホはほっといて……。
「……ん、マオ。『わたしの』リューにぃの監視、ご苦労様」
「あはは~、いえいえ副マス。『私の』先輩のためっすから。このくらいはなんとも。ちゃんと先輩からご褒美も貰う予定っすから」
「…………ご褒美?」
「ええ、まだ具体的には……。いえ、とりあえず、喫茶店デートは確定っすね」
「ッ!! ……まさか、こんなところに強力な敵が潜んでいたとは……。獅子身中の虫とはこのことか……」
なーんでちょっと険悪な雰囲気何ですかね、このふたり。ほら、アヤメがおびえて俺の後ろに隠れちゃってるだろうが。まぁ、そんなアヤメも可愛くて癒されるからいいんだけどね?
ともあれ、俺の癒しのためだけにアヤメを怯えさせるのもあれなので、視線でサファイアと後輩にやめるように伝える。二人ともちらりとアヤメに目を向けると、ばつの悪そうな顔を浮かべた。やはりアヤメみたいな娘を怖がらせるのは不本意なようだ。
「しょうがない。マオの、正当な報酬」
「ま、先輩との距離が一番近いのは間違いなく副マスですし? このくらいのことは多めに見てほしいっす」
「……今回、だけ」
「それはどうっすかね~」
後輩がからかうように言うと、サファイアはジトォ……とした目で後輩を睨む。だからやめろといってるだろうが。
またにらみ合いを始めそうなサファイアと後輩を止めるために俺が口を開きかけたその時、俺の裏に隠れていたアヤメがとことこと二人に近づき、両腕を交差させてバッテンを作った。まるで「喧嘩しちゃダメだよ、お姉ちゃんたち!」と言っているようだ。いい子! アヤメ、圧倒的いい子!
「むぅ、何この娘。可愛すぎる。持って帰っていい?」
「いいわけねぇだろ」
「そうっすよ副マス。私だってお持ち帰りは我慢してるんすからね」
「こっちも危険だった!? アヤメ、戻ってきなさい。そこは危険地帯だ」
「「モフモフ逃がさん!」」
さっきまでの諍いは何だったのかと疑うようなコンビネーションで、逃げようとしたアヤメを捕獲し愛で始めるサファイアと後輩。ケモ耳やケモ尻尾をモフモフしては、「ふおおお」とか「ひゃぁああ」とか感嘆の声を上げている。うん、気持ちは痛いほどわかるけど、アヤメがじたばたしてるからそろそろやめてあげて?
「あの……そろそろ俺の方に反応してくれると嬉しいなー……って?」
「ん? アポロまだそんなことしてたのか。アホみてぇ」
「なんかいつもより辛辣!?」
ぐずぐずと泣き真似を始めたアポロは……まぁ、放っておくことにした。
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