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ちょっと表出ろ

散々引っ張っておいてなんですが、転職開始です。

 カトルヴィレの中心に位置する大教会。遠目で見ても迫力があったそれは、近づけば近づくほどその迫力を増していった。心なしか、あたりの空気が澄んでいるような気がする。それが気のせいじゃなかったら、あの大教会は大きな空気清浄機ということに……。うん、教会関係者に怒られそうだからやめておこう。

 

 それにしても……。本当に凄いな。すごいという感想以外出てこなくなるくらい凄い。語彙力が貧弱なわけではないので悪しからず。

 教会……というより、もはや城である。白い城。……別に、駄洒落を言ったつもりはないからな?

 遠くに行かないように手を付いないだアヤメと一緒に、本堂を見上げると、思わず「おー」と感嘆が口から洩れた。近くで見れたことがうれしかったのか、アヤメの尻尾はぶんぶん。ケモ耳はぴこぴこ。可愛い。



「ほら、先輩。アホ面してないでさっさと中に入るっすよ」


「え? そんな惚けた顔してた?」


「はいっす」


「マジか……。気を付けよう。ところで、転職はこのバカでかい教会のどこでやるんだ?」


「正面の門から入ったら、案内があるっすから、それに沿って行けば迷うことは無いっすよ」


「ほーん、なるほどね。アヤメ、今からこれの中に入るぞー」


「………………(ぴくんッ! そわそわ)」



 アヤメのケモ耳がビシッと天を突き、こちらを素早く振り向いた。相変わらず無表情なアヤメの紫水晶の瞳には、隠しきれない興奮と好奇心が渦巻いている。

 そんな素直な反応を返してくれるアヤメが微笑ましくてかわいくて。いつもより多めになでなで、なでなで。くすぐったそうにしているアヤメの姿がまた可愛くて、さらになでてあげたく……っは! 無限ループ!?



「……先輩。公衆の面前で幼女を撫でながらそんな嬉しそうな顔をするのはやめるっす。事情を知ってる私が見てもアレっすから……。何も知らない人から見たら、ロリコンのやべぇヤツ以外の何者でもないっすよ?」


「後輩よ……アヤメの嬉しそうな顔と、俺がロリコン扱いされることを天秤にかけて、どちらに傾くかと言われれば、間違いなくアヤメだ」


「あ、手遅れだったっすか。アヤメちゃんの可愛さを見ていれば、それもしょうがない気がしてくるのが恐ろしいっすね……」



 あと、決してロリコンではない。アヤメに父性を感じることがあっても、決してロリコンでは無いのだ。

 


 アヤメに手を引かれながら、大教会の正門をくぐり、中に入る。外も凄かったが、中もまたすごい。入った途端に空気が変わったことがはっきりと感じられた。入ってすぐの場所はホールになっており、神官服やシスター服姿のNPCがたくさんいた。もちろん、プレイヤーの姿も多い。

 案内によると、ホールからいくつかの場所へと続く扉があり、一番大きな扉は『大聖堂』の扉らしい。多分長椅子がいっぱい並んでて、真正面にステンドグラスかパイプオルガンがあるんだろうなーと扉を見ながら予想してみたり。


 ホールにあった総合案内所みたいなところで、受付のシスターさんに「転職を希望します」と告げたところ、ホールの左側にある扉へと案内された。なんでも、俺の目的である転職は、『職業の神』の力が宿った結晶体が置かれた部屋でできるらしく、その扉がその部屋に続いているらしい。



「ま、ぶっちゃけると部屋の中でメニューを開くと、そこから転職できるってだけなんすけどね」


「そういうところはしっかりゲームなんだよなぁ……」


「でも、部屋にある結晶は綺麗っすよ? ライトアップされてて、めっちゃキラキラしてたっす」


「へぇ、それは楽しみだな。にしても転職か……えっと、神官の上位職は、司祭だったよな?」


「そうっすね。……ただ、先輩が司祭になることは、絶対にないと思うっすよ」


「まぁ、【神官(爆笑)】があるから、特殊職を選ぶことになると思うけど……」


「それ以前に、先輩なら選択可能職に司祭が表示されない可能性が否定できないっす」


「いやいや、それは流石に……」



 ……ないと、思いたいなぁ。

 うう、今までの自分の行動を振り返ると、完全に否定できないのが悲しい。神官らしいこととか、したことないからなァ……。というか、【神官(爆笑)】なんてものを渡してきた運営が考えた特殊職に不安しか感じないな。


 一抹の不安を抱えながら、アヤメを後輩に預け扉をくぐる。その先に続いていた石造りの廊下をてくてくと進むと、やたらと重厚で装飾の成された観音開きの扉があった。

 取っ手もドアノブもないし、どうやって開けるんだろう? と思いながら扉に近づくと、ゴゴゴゴ……と音を立てて開いた。なるほど、自動ドアでしたか。

 部屋の中に足を踏み入れれば、そこは学校の教室くらいの部屋。その中心には確かに結晶体が存在していた。複雑で精緻なカットがなされた極彩色の結晶体は、下からの光を浴びてその幻想的なグラデーションを部屋中に反映させていた。

 なるほど、確かに後輩が言うだけあって綺麗な光景だ。アヤメも連れてくれば良かったなとちょっと後悔しつつ、メニューを呼び出す。


 普段通りにウィンドウが開く。項目に目を通していくと、一番下のところに『転職』という欄が増えていた。これを選べばいいんだな、タップしてっと。


 あらわれたウィンドウに目を通す何々……?



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転職可能職業一覧

『戦士』

『重戦士』

『僧兵』

『司祭』

転職可能特殊職

狂戦士ん官(ベルセルクレリック)

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 ………………………………。



 ポチッ(詳細検索)。




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狂戦士ん官(ベルセルクレリック)

 もはやこの職業に選ばれた者が狂戦士であることは、本人が否定しようと誤魔化しきれぬ不変の真実。それでも、最初に神官の職業についたことをどうか忘れないで欲しいという運営の願いがこもった職業。

職業効果:『自己回復効果上昇』

     『自己強化効果上昇』

     『精神力強化』

     『筋力強化』

     『敏捷強化』

     『知力低下』

     『器用低下』

職業スキル:《血濡れの信仰心(バルバラ・ゲルスト)》《狂い猛れ神の子よアディクティバ・ゲルスト

============================





 ……ああ、うん。オーケーオーケー、お前の言いたいことは分かった。まぁ、そう言われても仕方ないことをしてるっていう自覚はあるし、ね? うんうん、大丈夫大丈夫。


 でも………一つだけ、一つだけ言わせてもらってもいいか?




 運営―――――






 ―――――――――――――いっぺん表出ろやゴラァッ!!

 

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― 新着の感想 ―
[一言]  ゲーム的に絶対異端審問官とかになるとおもったけどなぁー ゲームてきに。 異端審問官も神職者ですよ、神職者。
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