レベル上げ三日目、これは酷い
レベル上げ三日目。今日でレベル50にならないといけない。
まぁ、昨日までのレベル上げ(という名のトカゲ漁)によってレベルは47まで上がっている。順調にレベルは上がりにくくなっているが、今日中に終わらないってことは無いだろう。
日課に加えたランニングを欠かさず行い、朝食づくり、アホ二人を起こす、家事をさっさとすましてしまう。くそっ、水回りをもう少しやりたかったが……。まぁいい。今日が終わればレベル上げからも解放されるんだし。
さっそくFEOにログイン。場所はもう見飽きた『竜の溪谷』の安全地帯だ。
今日は後輩の方が早かったらしい。岩に腰掛けて何かを見ていた後輩が、俺に気づいてこちらに駆け寄ってくる。
「お、来たっすね先輩。おはようっす!」
「ああ、おはよう」
「今日はレベル上げ最終日っすけど……。まぁ、先輩ならソッコーで終わらせてくれると信じてるっすよ。頑張ってくださいっす」
そう言って、あざといまでに可愛らしい笑みを浮かべる後輩。オノマトペで表すなら『きゃるるん』といった感じ。
言葉だけ聞けば、信頼を寄せてくれるいい後輩のセリフなんだが……。後輩がこういうわざとらしすぎる笑みを浮かべるときは何か裏があることが多い。
「……で? 本音をどうぞ」
「飽きたってレベルじゃないくらい飽き飽きしてるっす。さっさと終わらしてくださいっす割とマジで」
「正直でよろしい。じゃあ、アヤメ呼んだら、さっそく昨日の場所に行くか」
「はいはーいっす。先輩なら午前中には終わらしてくれると信じてるっすよ」
にひひ、と悪戯っぽい笑みでそういう後輩に、肩をすくめるだけの返事を返し、詠唱開始。足元に光が表れ、そこからアヤメが登場した。
「おはようアヤメ。今日もよろしく頼むな」
「………………(こくこく)」
「お、やる気だなアヤメ。頑張ってトカゲ共を血祭りだな!」
「………………(シュッシュッ)」
シャドウボクシングでやる気を表現するアヤメ。
うん、やっぱり俺の相棒は最高の癒しだぜ。
「……見てる分には微笑ましいんすケドねぇ……。会話が物騒すぎる……。というか、アヤメちゃんばっかり可愛がるのも、なんか釈然としないような……」
「おん? なんか言ったか? 後輩」
「いいえ、何でもないっすよー。アヤメちゃんを構うのもいいっすけど、さっさといってレベル上げるっすよロリコ……先輩」
「おい待て、お前今何を言いかけた?」
「何でもないっす」
そっぽを向いて全力でシラを切ろうとする後輩。アヤメをけしかければ口を割らせることもできるだろうが……。後輩のいうことも一理あるしな。今はレベル上げを優先しよう。
アヤメと後輩を引き連れて、昨日の広場を目指す。道順はちゃんと頭に入っているので問題無し。歩いて五分くらいだったな。
さて、この時間の間にSPを割り振っておきますか。メニューを開いてっと……。えーっと、ここをこうして……。んでもって、ここには……。あー、ここどうしよっかなー……。ここは…うん、こうしようか。
てなわけで、俺のステータスはこうなった。
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PN:リュー
RACE:人族
JOB:神官
SJOB:闘士
Lv47(7UP)
HP 1260(170UP)/1260(170UP)
MP 1570(180UP)/1570(180UP)
STR 101(11UP)
DEF 80(10UP)
INT 15
MIND 111(11UP)
AGI 65(10UP)
DEX 10
LUK 20
SP 0
SKILL:《治癒魔法LvMAX(進化可能)》《付与魔法LvMAX(進化可能)》《メイス使いLvMAX(進化可能)》《格闘LvMAX(進化可能)》《剛力Lv1(new)》《昇心Lv5(5UP)》《強身LvMAX》《強速LvMAX》《増命Lv1(new)》《増魔Lv1(new)》《信仰の剣Lv75(11UP)》《信仰の盾Lv66(8UP)》《夜目Lv54(8UP)》《召喚魔法Lv25(13UP)》《飛行Lv1(new)》
TITLE:【紅月の単独征伐者】【頭蓋砕き】【神官(爆笑)(new)】【鱗砕き(new)】
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STRが100を超えたことで、《メイス使い》と《格闘》が進化可能状態になった。まぁ、これも転職後に回してみようと思う。
あと、ステータス強化系のスキルが進化させることができたので、進化させてみた。変化は上昇率が増えただけ。
増えたスキルはあのデカトカゲ戦を終えた後に習得可能になっていたモノだ。《飛行》と銘打ってはいるが、別に飛べるようになるわけではなく、空中での行動に補正がかかるスキルらしい。あの剣でぶっ飛ぶ戦法はなかなか有能だったからな。
あ、後。称号も増えてるえっと【鱗砕き】……ふむふむ、鱗を持ったモンスターに与えるダメージが増加するのか。昨日のうちに手に入れていたらしい。入手条件はトカゲを一定数倒すことだろう。やったね、これでまたレベル上げがはかどるよ!
さてと、じゃあそろそろ広場に付くことだし、装備の確認を…………ああ、うん。スルーするなって言うんだろ? 分かってるよ。はぁ、気が進まないとかいうレベルじゃない……。
無言無表情で称号欄にて異彩を放つ【神官(爆笑)】を指でタップ。
【神官(爆笑)】
神官という職業に真っ向からケンカを売ったものに与えられる称号。
運営からのコメント
「いや、流石に飛ぶとは思ってなかったわww」
効果:職業『神官』のデメリット解消
転職の際、特殊職が選択可能
……ああ、うん。もうどうコメントしていいか分からねぇよ。何だよ運営からのコメントって。最後に『ww』ってつけるのやめてくれない?
まぁ、【神官(笑)】の時にはなかった『転職の際、特殊職が選択可能』って項目が増えてるからいいか……。この際、名前は気にしない方向で。
ステータス画面を見て肩を落としていると、後輩に「どうかしたんすか?」と聞かれ、称号ショックから抜け出せていなかった俺は素直に【神官(爆笑)】について答えてしまった。
当然のごとく後輩は大爆笑。もう、乾いた笑みを浮かべることしかできなかった。
……慰めてくれたアヤメのやさしさが、とても暖かかったです。まる。
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