1.闇の現
基本、煮え切らない部分が多くイライラすることも多いかと思いますが、宜しければお付き合いください。
蓬郷 儚と最上 暁の物語。
―――――儚の手を暁が捕らえた。
儚はこういう時の暁の眼が怖くてたまらない。
まるで自分の心を見透かしてしまいそうな程、透明できれいな暁のうすい灰色の瞳。
それでいて、その奥に炎を宿しているような暁の……瞳。
どうしても、その瞳にさらされる事が耐えられずに目をそらす。
そんな目で見つめられたくない。かつきの瞳を見ていると、優しいはずの彼が肉食の獣のように見える瞬間があるのだ。
血に飢えたぎらぎらとした眼差しに、己のすべてを飲み込まれそうで…ぐらぐらと不安定な感覚を味わってしまうのが、たまらなく不快だった。
こんな時は、愛しいはずの彼が怖くて怖くてたまらなかった。
お願い、そんな目で私を見ないでっ!混乱した頭で、彼から離れようともがく。
儚は何とかして手を振りほどこうとしたが、バランスを崩し床へ倒れてしまった。
…これまで、独りで耐えてきたの。
今更、頼っていいと言われても、やり方なんて分かる訳ない。どうかお願い、私の中をひっかきまわさないで。
貴方が私に、何を求めているのか分からない…。
意識が薄れるあいだ、自分のまぶたから涙が一筋零れるのを感じた。
恋路の闇……恋い慕う情に苦しんで、物事の区別も分からぬこと。
闇の現……暗闇にまぎれた現実。乱れまどう時の、わずかの間の本心。
二つとも広辞苑より




