25 幕間 戦いの後で
~マリア・アローカ視点~
魔物襲撃事件の影響で、シャイターン学園は再び10日間の休校となってしまった。
私はというと、何もしないわけにもいかないので、教会で開いている無料教室で読み書きを教えたり、治療院でのお手伝いをしている。
休校期間はゴードンさんとクレバスさんが毎日のようにボランティアに来てくれた。
「他にやることもないし、どうせなら人の役に立つことをしようと思ってな」
「私もです。それに勲章までいただいたのですから、勲章に見合った行いをしなければなりません」
実は私も魔物襲撃事件の関係で勲章を授与されている。
私は回復魔法を活かした治療活動や魔物の討伐に寄与したことが評価されたようだ。因みにこの襲撃事件の際、「ライトビーム」という攻撃魔法を習得した。切羽詰まった状況で神様に祈りを捧げたら、これまた習得してしまった。
貧民街で、私の他に勲章を授与されたのは、司祭様とレジーナさんだ。
司祭様とレジーナさんは、住民の避難誘導やその後の治安維持に寄与したことが評価されたらしい。
「こんな私に勲章を渡すなんて、この国はどうかしちまったのかね?副賞の金貨は嬉しいけど、飲み代に消えるだけだしね」
「レジーナさん。折角貰った副賞です、大切に使ってください。教会も孤児院も寄付はいつでも受け付けてますよ」
「アンタも言うようになったね」
レジーナさんも司祭様も嬉しそうだ。
町の様子はというと、更に活気が出てきた。
とうのも、貧民街はほとんど被害を受けていない。防護柵がいくつか壊れた程度で、建物への被害もなかった。貧民街以外にも貴族街や商業地区にも魔物の襲撃があり、特に被害を受けたのが商業地区だった。その影響で、しばらく営業できなくなった商会もあり、その商人たちが貧民街に新たな商機を求めてやってきた。
今日も、貧民街のまとめ役にされた司祭様とレジーナさんと共に会合を開いていた。
会合を終えた商人たちが雑談しているのが聞こえてきた。
「怪我の功名とはこのことだな。この街は商機に溢れている」
「そうだな。特にゴーレム工場と魔道具工場は凄いぞ。今のうちに契約したい」
「噂では、防護柵を強化するようだ。俺はそっち関係を狙っている」
「ウチの商会は食品関係が主力だからな。新店舗をオープンしようと思っている」
景気のいい話をしている。
それからは魔物襲撃事件の噂話になっていった。
「カイン王子は商業地区で戦っていたんだろ?」
「いや、貴族街だろ?」
「影武者がいるらしいぞ」
「実はカイン王子は予言者で、魔物襲撃事件を予言していたんだ。だから、予め対策をしていた貧民街はほとんど被害を受けなかったんだ」
カイン王子が予言者?
その噂は初耳だった。カイン王子が商業地区や貴族街で戦っていたという噂はよく聞くけどね。
興味を引かれた私は、聞き耳を立てた。
「それは流石にないだろ?だったら何で、貴族街や商業地区に対策をしなかったんだ?」
「それはだな・・・今だからそう言えるけど、いきなり貴族街や商業地区で「魔物の襲撃に備えろ」と言っても誰も耳を貸さないだろ?貧民街なら職にあぶれた奴が大勢いるし、雇用対策も兼ねているから、やりやすかったんじゃないか?」
「言われてみればそうだな。でも貴族街と商業地区で同時には戦えないと思うが・・・」
「そこは俺も分からん。影武者か・・・それとも不思議な魔法か・・・」
そんな噂話を聞いていると、突然、怒鳴り声がした。
「汚い格好でチョロチョロするな!!明日はカトレアが来るんだぞ!!この金で少しはいい服を着ろ。明日も汚い格好をしていたら、ぶち殺すぞ!!」
あの人だ!!
私は「スキルキャンセル」の魔法を発動させた。間違いなく、銀色の髪をしたカイン王子だった。私はカイン王子に駆け寄った。
「何かありましたでしょうか?」
「どうもこうもない!!これがカトレアを出迎える服装か?おい、お前。金をやるから、このガキどもの服を用意しろ」
「は、はい・・・ありがとうございます」
いつも通り、口は悪い。でも本当に優しい。
カイン王子は明日、カトレアさんと連れ立って貧民街を慰問に来られる予定だ。その時に子供たちに恥ずかしい思いをさせないように、こうして気を遣ってくれているんだ。
そんな時、どこからともなく声がした。
「・・・王子、行きますよ。他にもやることがありますしね」
「うむ・・・」
振り返るとそこには、いつものお付きの少女がいた。
もう一度、カイン王子に視線を戻すとカイン王子は消えていた。
もっとお話がしたかったのに・・・
次の日、予定通りカイン王子とカトレアさんがお供を大勢引き連れて、孤児院にお越しになった。
その日のカイン王子は、いつものカイン王子で髪も金髪だ。子供たちや司祭様に優しい言葉を掛けてくれる。もちろん私にも・・・
「マリア。なかなかボランティアに来られなくて、すまないな。これでも忙しくてな。落ち着いたら必ず来るからな」
「ありがとうございます。でもカイン王子は、ちょくちょくここに来られてますよね?」
「いや、ここに来るのは初めてだが・・・」
カイン王子は誤魔化した。
多分、カイン王子は秘密の活動を知られたくないんだ。
私は空気を読んで、その話題には触れないことにした。なので、お帰りになる時に気持ちだけ伝えた。
「カイン王子、本当にありがとうございました。カイン王子の優しさは、私が一番分かってますよ」
「そ、そうか・・・こんなことでよければ、いくらでもするぞ」
その言葉通り、それ以後もカイン王子は度々貧民街にやってきては、様々な問題を解決してくれた。
それにしても不思議なことだらけだ。
お付きの少女はカイン王子のことを「王子」と呼んでいたから、間違いなくカイン王子本人だろう。それにしても、なぜいつもと髪の色が違うんだろうか?
私は益々、カイン王子のことが気になって仕方がなかった。
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次回から新章になります。




