第39話 淑女たちのお仕事
今度は一般人じゃない視点から見たライ様
思わせぶりな言動が多いですが、中二病患者を見守る気持ちで読んでください!
「……はぁ。ほんっとに疲れましたわ」
不満たらたらな様子で入ってきた金髪の女性に、椅子に座っていたお団子髪の小柄な女性は一瞬だけ振り返ると、
「ごくろーさーん。ダンジョン掃除? たまには手伝おうか?」
気安い雰囲気で声をかけるが、金髪の女性は首を振った。
「珍しいですわね。ただ、残念ながら3号案件ですわよ」
「あー、森の間引きか。そりゃあたしにゃ手伝えないな」
あくまで気軽な女性の態度に、金髪の女性は不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「必要なことなのは分かっているのですけれど、こんな駆け出しにでも出来るような仕事をなぜわたくしが、とはつい思ってしまいますわ」
「だからこそ、隠されなきゃならない。……だろ?」
「それは、そうですけれど……。はぁ、今は集団失踪事件の調査もありますのに、本当に難儀ですわ」
ため息を漏らす女性の言葉に、団子髪の女性は少し眉を寄せる。
「集団失踪事件、その感じじゃ進展なさそうだな」
「ですわね。一人二人ならともかく、今回はクランの数十人が同時に消えているので、痕跡がないはずがないのですが……」
再び「はぁ」とため息をつく女性を見て、これ以上この話を続けても益はないと判断。
団子髪の女性は、わざとらしく話題を変えた。
「あー、そんじゃもう一つの方の調査はどうなったんだ? ほら、前に1号案件の疑いがあるってなったやつ。確か、最近戦闘職に覚醒した久利須様の息子が怪しい、とか言ってたよな?」
しかし、その問いかけにも、金髪の女性は渋い顔で首を振った。
「残念ですが、久利須様のご子息は『彼』ではないようですわ。確認は取れましたけど、魔法職でした」
「ま、そう都合よくはいかねえか。一応聞いとくが、それって前衛もこなせる複合魔法職じゃなく、純魔ってことでいいんだよな?」
念を押すように尋ねる言葉に、金髪の女性はノータイムでうなずいた。
「もちろんですわ。……〈ソーサラー〉、だそうで」
「はぁ!? ソーサ……どわぁ!」
金髪の女性の返答に、バランスを崩したお団子髪の女性が椅子から転げ落ちた。
転げ落ちたまま、金髪の女性に抗議の声をあげる。
「おま……おま……言えよ!! そういう大事なことはさぁ!」
興奮のままに叫ぶ彼女に、金髪の女性は肩をすくめて答えた。
「女性ならともかく、男性の方の職業がなんであっても徴発する訳にもいかないでしょう?」
「そりゃそうだけどよぉ!」
いてて、と腰をさすりながら、お団子髪の女性は椅子に座り直す。
「しかし、だとしたら候補からは完全に外れるな。久利須様が有名なせいで、〈ソーサラー〉のビルドは研究が進んでるんだろ」
「そうですわね。〈ソーサラー〉の魔法ではあんな攻撃は出来ませんし、そもそもあの職、刃物は短剣しか持てませんから。映像を加工したにしても流石に無理がありますわ」
やれやれとばかりに首を振る金髪の女性に、さらに話を振る。
「なら、ほかの連中はどうだったんだ? 再調査はしたんだろ?」
「もちろん。ただ少なくとも、ここ二十年で戦闘職に覚醒した男性の中に、あんなことが出来そうな方はいらっしゃいませんでしたわ」
女性の返答に、お団子髪の女性は「チッ」と舌打ちした。
「依然謎は謎のまま、か」
深刻そうにつぶやく団子髪。
ただ、当の金髪の女性はその横を通り過ぎ、自分の席にどすんと腰を下ろすと、すぐにカードからウィンドウを開いて配信画面を呼び出していた。
そして、
「はぁぁ! この仕事激務ですけど、仕事の名目でライ様の配信をリアタイ出来ることだけが救いですわぁ!」
さっきまでのクールな姿はどこへやら。
配信画面にかじりつき、と声をあげる始末。
「お前さぁ……」
さっきまで真面目な話をしていたのではなかったのか。
お団子髪は同僚のあまりの変わりようにドン引きしたが、金髪の女性は一瞬たりとも画面から目を離さず、平然と答えた。
「は? なんですの? これ業務なんですけど? わたくし仕事をしているんですけどぉ?」
「う、うぜぇ……」
ただ、どんなにうざくても、実際業務と言えなくもないので、そう言われたら黙り込むほかない。
さらに「あ、実況スレ実況スレ」と言いながら掲示板まで開き始めた時はピキッとしたが、「これも情報収集ですわよ」と言い返される未来が見えたので、お団子髪は賢明にも沈黙を保った。
「……はぁ。あたしも仕事しよ」
そのまま彼女は疲れたようにつぶやくと、そのままカードから画面を呼び出して仕事の続き……をする前に別窓でライの配信も開いて、二窓で作業を始めたのだった。
みんな大好きバーチャルダンチューバー!




