分割
国境の砦は、速攻で落とされ、早馬と同じ速度で、ここまで来ただと、
「魔王様、王妃の首です」
「広場に捨てておけ」
「御意」
リリアは、異世界の戦闘服に身を包んだ状態で、私に話しかけた。
「私は魔族領付近で、暗殺されそうになった。正当防衛を行った。これを持って、魔族への宣戦布告とみなし、旧シシリー王国に攻撃した・・」
「リリア、やり直そう。マーガレットとは別れる!王妃になってくれ!」
バン!
何かを撃った。床が削れる。
「平民ライオネル、魔王たる我の話を遮るとは何事だ!」
「ヒィ、そんな」
リリアは、魔族の中心部族の一つイセ族の姫、次期魔王候補だったと、
魔族領内で争いが勃発。
万が一のために、人族の国へ避難。
イセ族は、時々、異世界の文明の物を、魔力を対価に召喚できる能力を持った者が生まれる。
その武器は強力で、類をみない。
彼らにとって、貴族は、異世界の本国「ミカド」のみ。
だから、この世界の貴族位には価値をおかない。
婚約もこの国にいるための方便だと、
父上の人柄を見込んでこの国に来た。
小国だから、利害関係にからまない。
俺は、これから、どうなるのだ。
「紹介する。この地の中心人物になる側近候補。リリー、サム、トムだ」
あの孤児院でリリアになついていた子だ。
「はじめは無理だ。先生たちの言うことを聞いて、良く学ぶように」
「「「はい、リリア様」」」
「失敗しても良い。クズが滅びるだけだから」
「いえ、リリア様の荘園です。しっかりやります」
「皇帝陛下よりお祝いの品を持って参りました」
「魔王即位おめでとうございます」
カールに、グレースまで!
「魔王陛下、今後ともよろしくお願い申し上げる」
「よろしくお願いしますわ」
「堅苦しい。私と君たちの仲じゃないか」
「フフフフフ、今度、劇団をこの城に派遣しますわ」
「・・・お願いします。今の身分じゃ。人族の国にいけないから、助かります」
リリアはよく話す。まるで、別人のようだ。
「なあ、カール、グレース・・・」
「そこの平民、無礼であろう!」
護衛騎士にたしなめられた。
私は、事務官になった。
ただ、帳簿に数字を記入するだけの日々、
マーガレットとは結婚したが、上手くいかない。
「ウワ~~~ン、お菓子欲しいよ」
「お小遣いちょうだい!」
孤児院の子は泣き叫ぶが、最低限の世話しかしてもらえなくなった。
あの三人は、本能で見抜いていた。力の付け方を教えてくれる者を、
しかし、殺されない。めっけものか。
ある日、城に呼ばれた。
会議室のテーブルに、大きな我国の地図がある。
リリアの他に、各国の使節が来ている。
何をするんだ。
私は立ったまま傍聴するように言われた。
「今から、旧シシリー王国の分割会議を行います」
何を言っている!
「この地は、魔族領への突出部でした。長年、この地を争い。人族と魔族は争ってきました。それ、やめません?不経済です。
なので、北から、この王都付近までを魔族領とし、南を人族の経営に任せます」
「魔王陛下、領地分割は難しいです。地図通りにうまくいかないのはどこも同じことかと」
「そう。だから、ライオネルを呼んだ。疑問点があれば、ライオネルに聞くように」
私は叫んだ。
「何を、そんなことはやめてくれ!」
バシ!
殴られた。
「平民ライオネル、低位の者が、高位者に話しかけるな。聞かれたことだけを答えろ」
「「「・・・・・」」」
「リリー、サム、トムは別だ。私の弟妹だ」
「「「はい!魔王様」」」
最後までお読み頂き有難うございました。