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闇の悪役令嬢は愛されすぎる  作者: 葵川 真衣
第二章

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38.ミス


「ええ。オリヴァー様にお話がございまして」

「俺も聞いていいだろうか?」

「どうぞ」


 彼はメルの弟で、オリヴァーのハトコだし、一緒でも問題ない。


 それでルーカス、メル、オリヴァーと階段を上がり、屋上へ行った。

 青空が広がっている。

 誰もおらず、ここなら他のひとに聞かれる心配はない。


「で、話というのは何でしょうか、クリスティン様」

「単刀直入に伺いますわ。どうしてわたくしとメルの記憶を消しましたの、オリヴァー様?」

「思い出されたのですね」


 オリヴァーは、頭を下げた。


「申し訳ありません。誤ってメルの記憶を消してしまい、そのあとクリスティン様の記憶も消したのです」

「どうしてそんなことをなさったの」

「すまない」 

 

 間にルーカスが入り、謝罪する。

 クリスティンはルーカスに視線を流した。


「わたくしたちの記憶を彼が消したのを、ルーカス様、ご存じでしたの?」

「ああ。後でオリヴァーに聞かされた。記憶を戻すように言ったんだが……。記憶がないままのほうが、君たちの関係が周囲にバレず、良いのではとオリヴァーに言われ、そうかもしれないと思ったんだ。支障が出るようなら、記憶は戻すつもりだった」

「困ります。すぐに記憶を戻していただきたかったですわ」

「申し訳なかった」


 クリスティンは溜息を吐き出す。


「ミスで消したのですか?」


 メルが静かに問いかける。ルーカスは首肯した。


「オリヴァーも今言った通り、誤ってメルの記憶を消した。それに合わせてクリスティンの記憶も消したんだ」


 メルはオリヴァーを見据える。


「それは本当でしょうか?」


 オリヴァーはメルとクリスティンを交互に見た。


「本当です。お二人にはご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ありませんでした」


 オリヴァーは丁重に謝罪するが、メルは厳しい表情のままだ。


「オレは舞踏会の夜、クリスティン様に提案しましたが……それについてはどうなさいますか」


 メルは目を眇める。


「提案?」

「王太子殿下のクリスティン様への気持ちを消しましょうか、と。そのほうが、あなたがた二人にとって良いでしょう?」


 ルーカスがかぶりを振る。


「だから人の気持ちを操作するのは駄目だ!」

「オレは二人に聞いているんだよ、ルーカス」


 オリヴァーは再度、クリスティンとメルに言った。


「消しましょうか」


 それにメルが答えた。


「その必要はないです」


 オリヴァーは意表をつかれたように、僅かに目を見開く。


「なぜ? メルにとっても、消したほうが良いかと……」

「アドレー様の気持ちを消したとしても、婚約はすぐには解消できません。それに無暗にひとの気持ちを操るようなことは、私は反対です」

「クリスティン様はいかがです。強い感情そのものを消すのは難しいですが、王太子殿下が心を許しているあなたが協力してくだされば、可能ですよ」

「わたくしは……」


 クリスティンは、アドレーが自分に対して、どういった気持ちをもっているのか、よくわからなかった。

 婚約はアドレーにとっても、気が進まないものだったはずだ。

 

 しかし今は、ノーマルからの派生で、変則的なルート。続編に突入しているのかもしれない。

 ヒロインと結ばれなかった王太子は、イチから相手を探すのも手間で、大貴族の令嬢である自分との婚約続行を望んだのだとクリスティンはみている。

 

 アドレーの執着心を消してもらえるのなら、ぜひそうしてもらいたかった。

 だがメルの意見ももっともだったので、迷う……。


 クリスティンは考え、息を吸い込んで、気持ちを告げた。


「……アドレー様自身に、悪い影響がでないのであれば、婚約の意思をなくしていただきたいですわ」


 大きな悩みがそれで一つ減る。

 時折メルは機嫌が悪くなるけれど、そういうこともなくなるだろう。


「悪い影響はでません」


 オリヴァーはそう言い、にっこりと笑う。



お読みいただき、ありがとうございます。


今、連載している『悪役令嬢は愛から逃れられない』は、アドレーとはまた違った俺様王太子と、ヤンデレ気味な義兄のバトルになります。


どうぞよろしくお願いいたします!


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