第1戦 サハラのシャーマン
映写機のフィルムがカラカラ回り、映像が溢れ出る。
そこには人型の動く鉄塊が映っていた。
第一次世界大戦、塹壕戦が主流になり、戦車が現れ戦況は一変したが、さらに戦車は革命的な進化をした。
ルノーFTと言われた新型の兵器は、人型で2人で操縦、射撃までできる優れものだった。蒸気機関で動く"戦者"は、戦争を540°変えさせたのだ。
しかし、当時の技術では故障が多く、運も試されることになってしまった。諦めるわけにはいかず、第一次大戦後も開発は続行。他国にも知れ渡り、いつからか、人間のように進化した。
1933年、ドイツではナチスが政権を握りヴァイマール憲法とヴェルサイユ条約を破り捨て、大規模な軍拡を行った。
一方、各国はまるで知らんぷり。唯一警戒を鳴らしていたのはイギリスのある海軍大臣だけだった。
1939年9月1日、開戦。1941年には真珠湾攻撃でアメリカも参戦。俺は西部戦線に飛び立った。
アメリカでは、第一次大戦後から強く戦車開発が続行され、今では二足歩行かつ腕、手まである。顔は砲塔。鏡を使った光の屈折で主砲から除くことでキューポラがメインカメラとなっている。この戦車から進化した兵器を、俺らは"戦者"と呼んでいる。
俺の名前はアレックス。アメリカ陸軍戦者隊のチームリーダー。
1943年
-北アフリカ戦線-
「全員聞こえるか?」
<こちらレコン。聞こえる>
<こっちもだ>
<俺も>
<同じく>
「無線は良好。これより交戦中のイギリス軍の援護に向かう。ドイツ軍は既に包囲しているそうだ。即座に包囲網を突破しイギリス軍を援護。後に我々も撤退する。帰りたきゃ俺について来い」
俺らの乗る機体はM4シャーマン。アメリカが誇る最高傑作だ。
基地を出発し目標地点に向けて出発。北アフリカ戦線はまさに灼熱地獄だった。戦者のコクピットは狭い上に密閉空間。本来は危険な行為だが、戦闘以外は暑さを凌ぐためにハッチを開け活動している。
<かなり今日は暑くなります。エンジンがオーバーヒートしなきゃいいんですけどね>
「シャーマン自体は軽いが武装が重い。エンジンへの負担も考えなきゃだな」
戦者は素手ではいかない。頭部の砲塔はオートリロードとはいえ装填時間というものがある。故に、戦者専用のバカでかい銃、通称、ビッグガンを持つ。俺の持つM1919ビッグマシンガンは歩兵が持つ機関銃に値する。
<敵機だ!正面に3機!>
「よりによって戦者の偵察隊か!即座に片付けるぞ」
砂漠を歩くドイツ軍の戦者。1機には無線パックを背負い、虫の触覚のようにアンテナを生やしている奴もいた。
<Ⅲ号戦者だ。側面に入れば副武装でもやれる>
正直、ここでの交戦は避けたい。目標地点まで約6.2マイル(約10キロ)。弾薬消費はもちろん、マズルフラッシュと戦闘で位置を把握されては救援対象も俺らも共倒れだ。
「白兵戦用意」
<ここでバレちゃ仕方ないか>
「誘爆させないように片付けろ」
頭部の下、人間で例えると鎖骨あたりに弾薬室がある。そこを傷つければ、巨大な爆発を引き起こす。ましてや白兵戦では巻き添え確定だ。
腰に装着していたクローラーソードを持ち起動。クローラーソードとは、多数の刃がチェーンソーのように回転する戦者白兵戦用の近接武器。かつての戦車の足であるキャタピラ(クローラー)に酷似していることからこの名がついたという。
<切り刻んでやる!>
「全機突撃!」
砂丘から這い上がりⅢ号の群れに一斉突撃。ギュィィィィとクローラーソードの回転音が鳴り響く。
「こっちに気づいた!撃たれる前に仕留めろ!」
砂を蹴りⅢ号に飛び掛かる。クローラーソードがコクピットを突き破り背中まで貫通する。そのまま抜きガシィンと地に倒れた。
他のⅢ号も撃破。真っ二つになったⅢ号が転がっていた。
「よし。前進再開」
再び俺らは進み始める。
<目標地点まで後3マイル。そろそろ包囲網が見えて来るはずです>
味方の言う通りだった。1つの遺跡の周りに、大量に並ぶドイツ軍、イタリア軍歩兵と数量の装甲車を捉えた。頭だけ出し観察する中、囲まれている場所には数名のイギリス兵士が見えていた。そしてイギリス軍の戦者、M3グラントがたった1機。
「スーダン兵らしき人物もいるな」
<あのグラント、もう動けねぇんだ。脚の関節部がやられてる。トーチカ代わりに鎮座してる>
M3中戦者は俺らが乗るM4中戦者の先代だ。イギリス軍に供与され未だに運用され続いている。今には珍しい2人乗りで、1人は操縦、37ミリの射撃を行い、もう1人は右腹部にある75ミリを放つ。
「歩兵は蹴散らせるが、装甲車には注意だな。頭を潰されては敵わん。最初は主砲で対処する。HE弾装填。目標、敵の軍勢。撃て!」
5機のシャーマンの主砲が敵に浴びせられる。気づいていなかった枢軸軍は慌てふためき散り始める。イタリア軍は特に混乱状態が酷く見えた。
<あらかた片付いた。M2の出番だぜ隊長>
「撃ちまくれ」
メインカメラの動きと同じ動作をする副武装であるブローニングM2重機関銃を発射。ドドドドドと重い1発が連続して放たれる中、包囲されていたイギリス軍も中から現れ反撃を開始した。
「このまま撃ちまくれ!」
ついに枢軸軍は全滅。装甲車は燃え、砂漠には血が流れている。
俺はコクピットから降り、イギリス軍部隊の隊長と出会った。
「ようこそ我が要塞へ。トーマス少尉だ」
「アレックス先任曹長。ずいぶんとボロい要塞だな」
握手をし話し合う。同じ連合国の仲間としての礼儀だ。
「これでもサハラじゃ立派なお家だ」
「君らを救出しに来た。あのM3を直して離脱地点まで移動する」
「修理できるのか?」
「うちのレコン軍曹がやる。完璧でなくとも歩くところまでならできるはずだ」
「ありがたい」
レコンが乗るシャーマンに合図を送り、修理キットを持ち降りて来る。すぐさまM3の修理に向かい、レンチをリボルバーのように扱いながら直し始めた。あの捌きは見習いたいぐらいだ。
「直りそうか?」
「なんとかね」
1発の砲弾がシャーマンに命中。突然のことだった。
「ウィリアムが!」
コクピットに命中していた。倒れたシャーマンを動かすことはできない。
「イタリアの機械化部隊だ!」
双眼鏡から見えるのは歩兵と駆逐戦者。四つ脚で頭部は動かないが、代わりに強力な主砲を持つ。
「セモヴェンテM41とかいうやつだ。シャーマンでも正面から撃ち抜けるぞ」
「レコンは修理を急げ。俺らが後はやる」
「死ぬなよ」
「分かってる」
離脱地点に向かうにはあいつらと戦う以外ない。
ここでやってやる。シャーマンの恐ろしさをわからせてやる。




