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お母様はイケメンで失敗しましたが(笑)、最後に笑うのは誰?  作者: ねこまんまときみどりのことり


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4 colorless flame(色のない炎)

 ?:「なあ、リーダーさん。あいつ捕まったんだろ。計画もろバレじゃん。どうすんの?」


 軽い口調で、リーダーに指示を仰ぐこの男はシュパル。


 グレーの銀髪が肩にかかり細身なシルエットなため、中性的な顔と相まって女性とみまごう。


 ややつり目の大きな目、鼻筋はスラッと通り、薄い唇からは男性にしてはやや高い鈴のような声が紡がれる。


 背丈も164cmと、男性にしてはやや低めだろう。


 実際に女性として、王宮舞踏会や貴族家のパーティーなどに度々参加し、諜報活動を行っていた。


シュパル:「ポリプレンのおっさんがいれば、身分の保証はなんとでもなるけど、さすがに今回はヤバイよね」


 リーダーは溜め息をつきながらやれやれと首を振ると、

「あの男が捕まるのは想定内よ。捕まっても対したことは話してないしね。逆に相手が混乱するんじゃないかしら」と慌てる様子もない。


 驚いた顔をして彼女を見て「捕まるのも作戦なの?」と呟くシュパル。


 リーダー:「大局を見ればね。捕まった奴等は爆破計画をすることしか知らない。爆破方法を知らなければ、こちらからの攻撃を防ぐのは不可能だわ」


 シュパル:「あぁ、そう言うこと。ははっ、そうだね」


 リーダー:「あと、作戦中以外はステナと呼んで、リーダーとかむず痒いんだから」 


 戦争・派閥争いが盛んなこの時代、剣・弓・体術は戦勝を挙げるのに必要な能力だ。


 しかしこの能力以上のポテンシャルを持つのが、魔法である。


 理由は明白。

 何故ゆえか王家の血を持つ者しかにしか、魔力が発現しないからである。


 魔力がなければ魔法は使えない。


 魔法も、発現するまではどんな能力か不明なのだ。


 そんな理由でテロを計画しても、単純な爆破作戦と思われるだろう。


 ステナ:「だたの設置爆弾だと思わせておけば、私の力を警戒されないと思わない?」


 シュパル:「あの能力を使えば、犯罪に君が関わっているとばれてしまうよ」


 ステナ:「良いのよ。もともとこんな力があったせいで、お母様はあの女に殺されてしまったんだもの。この血筋をくれたお父様もろとも、私からプレゼントをさせてもらうわ。全てをかけて決着をつける、あなたはもう逃げた方が良いわ」


 想いを吐露すると、大粒の涙を流しながら今までで一番素敵な笑顔が向けられた。


 シュパル:「そんなこと言うなよ。俺はお前の側を離れない。死んでも一緒だ」

 そう言ってシュパルも泣き出した。


 どこにでも光と影が付いて廻るが、2人がいるのはいつも影だった。




 ステナの母モーリンは、刀鍛冶を営む父を手伝って暮らしていた。


 モーリンの母は産後の肥だちが悪く、もともと病弱だったのも加わりその後半年で亡くなる。


 父は幼くして母を亡くしたモーリンを不憫に思い、目に入れても痛くないほどの溺愛ぶりだった。


 成長するにつれ、彼女は美しく成長する。


 母に似た大きな瞳、ピンクプラチナの長い髪、それ程高くないが整った鼻、活気溢れる言葉が紡がれる大きな口。


 彼女がいるだけで周囲を笑顔にした。


 その隣には、父の弟子の恋人ヤコブがいて、常に彼女を支えた。


 転機は王太子が刀を購入しに来たことだ。


 父の打つ刀は切れ味が鋭く、柄の装飾も弟子たちが懸命に仕上げるため、大きな評価を得ていたのだ。


 モーリンは、お茶を出したり商品の説明を行い接客を担当した。


 王太子や側近も笑顔で、無事に商品購入を終了した。


 それで終わりのはずだった。


 しかし突然王宮から呼び出しがかかる。


 なぜか、刀鍛冶の親方の父と娘のモーリンの2人だ。


 登城し伝えられたのは、王太子の側室になる打診だった。


 2人は[教育もなく婚約者がいる]と、やんわり断りを入れるも[ここで教育を受ければ問題ない]と、王太子はとんでもないことを言い出した。 


 また、父の刀を王家で定期的に卸すことも追加し出した。


 これ以上は逆らうこともできず、承諾するしかなかったのだ。


 供に側で聞いていた王ダグラスも、反対しなかった。


 跡取り息子の王子の機嫌を損ないたくなかったからだ。


 そんな中、王妃ダイアナだけは反対していた。


 ギリギリまで説得を試みたが王も王子も聞く耳を持たず、側室くらいと問題視しない有り様だ。


 どう見ても王子のわがままでしかなく、誰も得をしない。


 娘やその父に野心がある訳でなく、生活に困ってもいない。


 婚約者もいて幸せを掴もうとしている。


 そんな娘を王子の一存で、頼るものもない環境の異なる冷たい王宮に囲うのはひどいことだ。


 そして今は最大に時期が悪い。

 1ヶ月前に王太子正室として嫁いだ、公爵令嬢ソフィア・イノディオンの存在だ。


 彼女がこの事を知れば、本人のみならず家族でモーリンの除外に走るであろう。

 もし生まれた子が男児であったならば次期王太子候補となる。


 イノディオン家にとって、いや他ならぬ名門侯爵家にとっても平民に負けるなど許されないであろう。


 比べられるだけで怒りが込み上げるほどだ。


 貴族にとって誇りに勝るものはないのだから。



 結果、モーリンは婚約者のヤコブと別れ王太子側室となる。


 モーリンの父も最初の内は王家に刀を卸していたが、イノディオン侯爵家が王に、もっと良い鍛冶屋がいるからと横やりを入れ、約束は破棄された。


 その帰り道、モーリンの父は何者かに刺殺される。


 犯人は今だ見つからずじまいだ。


 腕の良い鍛冶師を失った鍛冶屋は廃業し、元婚約者も遠方にある鍛冶屋への就業を余儀なくされた。


 何もかも失くしたモーリンだったが、王妃ダイアナは同情的であり王太子側妃教育を熱心に行ってくれた。


 教鞭を取る際は厳しかったが、その後にセッティングされるお茶会では穏やかに会話を持つことができたのだ。


 勿論最初は、緊張で力が抜けなかった。


 だが次第に打ち解け、何気ないことまで打ち明けることも出来るようになっていた。


 ダイアナも政略結婚で、[密かに好きだった相手に打ち明けることもできなかった]だの、[王が甘やかすから周囲の空気を読めない子になった]だのと言うものだから、笑い出してしまった。


 ダイアナ:「王太子を止められなくて、本当にごめんなさいね。あなたが不幸になるのはわかっていたから、全力で意見したんだけど止められなかった」 

 俯きながら呟いた。


 モーリン:「あぁ、お顔をあげてくださいダイアナ様。ダイアナ様にはたくさん助けてもらっています。私は母を幼いときに亡くしました。こんな方だと良いなぁといつも思い描いていました。失礼ながら、想像していた母親像がダイアナ様そのものなのです」

 

 満面の笑みを浮かべ、ちょっと涙ぐんだモーリン。


 2人は無言のまま、涙が乾くまで穏やかに時間を過ごした。




 1年余りが経過し、モーリンは懐妊した。


 正室・側室の確執はあったが、薄氷の上で取られていたバランスが崩れ始めた。


 もともと政略結婚で結ばれたソフィアと王太子は折り合いが悪く、モーリンの父に対する仕打ちも快く思っていなかった。


 そのため王妃にも好かれているモーリンへ、好意が傾いていた。


 懐妊も自然の流れであるが、正室としてははらわたが煮えくりかえる程の憎悪だった。


 可視化できる出来事だからだ。


 殺してやりたい衝動に駆られるも、今は動く時ではないと思い留まった。


 プライドをズタズタにされて、狂うかと思ったほどだったが。


 ここでソフィアは初めて怒りを身の内に秘め、忍耐を身に付け始めた。




 モーリンが無事女児出産を終えた頃には、ソフィアも王太子に歩みよりを見せ、態度も軟化しているように思えた。


 その後にソフィアも懐妊。


 何事もなく、穏やかな時間が過ぎていた。


 ダイアナはステナにも優しく、3人でいると本当の親子のようだった。


 ダイアナはステナに、教養を学ばせ始めた。

「プライドは全然なくては困るけど、何かを守りたいなら捨てちゃえるわ。逆に教養は、身に付くだけ素敵になれるのよ~」


 そのおどけた言い方と笑顔は胸に染み込み、毎日楽しく学ぶことができた。



 その後ソフィアが男児を出産。




 5歳でステナの能力が発現。


 自分の想像した鉱物を生成できるようになったのだ。


 ある日ソフィアのメイドがステナの部屋を見ると、王妃の持つ首飾りの中央に光るビジョンブラッドの宝石と同じような物が、ベットで発見された。


 間が悪いことに、外交で王・王妃は不在であった。


 ソフィアはこれ幸いと、ステナが盗んだのではと王太子に報告した。


 王妃の首飾りは、代々の王妃が受け継ぐ大切なものである。


 平民が手を出せば、即処刑のの国宝物だ。


 貴族が手を出しても、重刑は免れない。


 王太子はステナに尋ねるも、自分が作ったと言ってラチがあかない。


 王太子権限では、王妃の部屋には入れず確認はできない。


 そのため王妃が帰るまで、入牢措置となる。


 王太子の精一杯の温情で、モーリンもステナと同室できることになった。


 モーリンも、ステラが自ら生成したと訴えたが、その現象を見ないと信じられなかった。


 残念ながら幼かったせいで、魔力不足で新たな生成が行えなかったのだ。


 普通魔力の発現は10歳前後であり、このような能力は初見でもあるため、王妃が戻るのを待つしかなかったのである。


 だが、悲劇は夜間に起きた。


 兵士:「やはり、平民上がりは手癖が悪い。このような悪い種は、王妃様がでるまでもなく、俺が粛清してやる!!!」


 牢鍵を開け、剣をステラに振りかざす。


モーリン:「やめて~~~」

 とっさにステラを庇い、モーリンの腹部に剣が貫かれる。


「ズチャ、グチャ、ギュニュ、グチャ」と、肉を抉る音が牢内に響く。


 モーリン:「ひっ、ぐっ、はふぁ、誰か来て」


 娘を庇い、残る力で助けを呼ぶ。


 見張りの牢番が駆けつけ、止める。


 牢番::「なにしてるんだ。おい止めろ!!!」


 幸いなことにステナに怪我はなかった。


 モーリンはすぐに医師に手当てを受けたが、助からなかった。


 モーリン:「ステナ、無事ね。良かった。愛してるわ」

 それが最後の言葉になった。


 その後ダイアナが公務から戻り、惨状を知って涙した。


 密やかな葬儀を終えてもステナは泣かなかった。

 いや、いろんなことが追い付かず泣けなかったのだ。


 ステナの部屋に在ったものは、ダイアナの首飾りではなかった。


 魔法により生成された鉱物と判明。


 実際の鉱物と遜色ない素晴らしいものだ。


 だが、この力のせいで母が死んだという事実だけが心に刻まれ、ステナは心を閉ざした。


 食事もせず動かなくなったステナを、ダイアナの遠縁に預けることになった。


 表向きは療養だが、本当の目的は暗殺を阻止するためだ。


 娘のように可愛がったモーリンを亡くした今、せめてその娘だけは守ろうとしたのだ。


 ステナをダイアナの生家に遣える騎士家に、誰にも知られぬようにひっそりと隠した。


 そのことを知るのは、親友の正教会の牧師ゼフィスだけだ。


 もし、自分に何かあれば、あの子を安全な所で育てて欲しいと伝えて。


 ダイアナは自分の裁量でできる限りの財産をゼフィスに預けた。


 まるでこの後に、暗殺されるのを理解していたような行動だった。


 

 ソフィアの生家イノディオン侯爵家が、腹を探られ断罪されるのを防ぐためのダイアナ暗殺であった。


 ダイアナ逝去後王ダグラスは王太子に家督を譲り、ソフィアは王妃となる。


 これでモーリンのことを詮索するものはいなくなった。




 ステナは騎士家を離れ、さらに隣国の教会で匿うことになる。


 牧師達は、ステナを教会で体調を回復させながら、身分を隠し平民に混ざり生活をさせることで、生き延びる道を模索したのだ。




 時間はステラの傷を薄皮を剥ぐように少しづつ癒した。


 教会を出て17歳になり、平民の生活をすることにも慣れた。


 すっかり元気になったステナは、お世話になったダイアナ様はご健在かと、教会のシスターに尋ねた。


 すると渋りながらも、ダイアナ様が亡くなってすぐにステナがここに移動していたことを教えてくれた。     


 この時初めて、ダイアナ様が命がけでステナを助けたことを理解したのだった。


 ステナが困らないようにダイアナ様の財産を複数の人に預け、安全を維持してくれた友人の牧師様。


 起き上がれない位体調が悪い時も、付きっきりでお世話してくれたシスター達。


 奇跡なように良い人との巡り合わせで、今を生きているのだ。


 そしてこの縁を繋いでくれたのは、間違いなくダイアナ様の人柄だ。


 だが、ダイアナ様はもういないのだ。


 なぜ、あの方が。


 なぜ、お母様が。


 何のために殺す?


 考えてみれば、交代制の牢番が不在なのもおかしい。


 王宮に不審者が、簡単に入れる訳がないのだ。


 そして席を不在にしていた牢番の刑が、免職だけなのも。


 それを知ってもなお、言及しない王や父、上級貴族達も。


 後ろだてのない平民側妃に味方してくれたのは、ダイアナ様だけなのに…………。


 大切な人を亡くしてしまった。


 父は婚約者がいたお母様を無理矢理娶り、その八つ当たりで祖父も殺された。


 父のせいでお母様は不幸になったのに、庇わず放置し殺された。


 お母様に、ダイアナ様が父のことで謝っていたことを聞いた。


 お母様は昔は辛かったけど、今は私に会えたから良かったと。


 優しくしてくれた人のためにも、幸せになる必要がある。


 でも私の幸せは、家族と生きることだった。


 これからも、死なないために生きる。


 王妃に見つからないように、影に隠れて?


 みんな殺されたのに?


 

 胸に手を当てると、理不尽に目眩がした。


 お母様、ダイアナ様、お祖父様大事な人を全員殺した。


 今王宮で暮らすのは、全員私の敵だ。


 あんなやつらが生きているのは不快でしかない。


 私はきっと、あいつらが苦しむのを望んでいる。


 刺し違えても潰してやる!!!



 あぁスッキリした。


 私がしたいことはこれだった。


 翌日から使える資金を活用し、困窮した子爵家を金であっさり買収、さらに王家に恨みを持つ者を次々に仲間に引き入れた。



 前王の政治力も良くなかったが、現在の政治手腕はさらに悪化。


 王妃が贅の限りを尽くし高い税金を課すため、あらゆる地域でスラム化や死者の増加が止まらなかった。


 王の末娘の誕生会前々日(私の義姉妹になるのか)に、噴水に爆弾をた~んとセット(プレゼント)してあげる。


 除去して安心している所を、私の魔法でジルコニウム合金を生成し、シュパルの高温加熱の炎で水蒸気爆発を起こしてあたり一面ぶっ壊してやる。


 最悪王妃と前王だけは、ぶっ殺す!!!


 シュパルのお母様は王家のメイドだったが、王に無理矢理孕まされたのに「1回だけなのに、俺の子じゃないだろ?」と、認知もせず切り捨てられた。


 ダイアナ様が知っていれば認知可能だったかもしれないが、責められるのを嫌った王が側近に追い出させたのだ。


 生家の男爵家に理由を話して戻るが、未婚の妊娠を批難され絶縁される。


 僅かな金銭を渡され、教会を頼りシュパルを出産。


 1人で酒場で働きながら懸命に2人で暮らしていたが、酔っぱらいに襲われ死亡。


 再び教会を頼り生活を始めた。


 9歳時魔法の力に目覚め、王が父と判明する。


 性的にだらしない王家のため、まだまだ被害者はいるかもしれない。


 そう思い数年間に渡り、密かに仲間を集めた。


 信じられそうな者12人、利権に絡みたい者5人。


 捕まったの1人は後者の利権組だ。


 ちなみに利権組は、詳細を知らない。


 なぜか私が活動資金を持つことを知っていて、接近してきたのだ。


 大体は手数料を渡して物品購入を頼む程度だったが、金が欲しいと実行班へ加わって、案の定捕まったのだ。


 全員強弱はあるが、魔法持ちだ。


 5日後、派手な花火をうちあげてやるわ。


 私とシュパルはビールと焼き鳥をつまみ、満面の笑みで高らかに笑い声をあげたのだった。






 

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