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お母様はイケメンで失敗しましたが(笑)、最後に笑うのは誰?  作者: ねこまんまときみどりのことり


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36 義理の姉妹は、静かに微笑む その2

 マリアンヌは市政の学校には通っていたが、伯爵邸に移り住むことになり、貴族と優秀な平民が通う学園へ転入することになった。


 10才から15才までの、社交界や財界へ進む予定の子息息女が学ぶ場所。


 ポリフェノール邸に来る前より、家庭教師の元に通い学んだ知識と行儀作法。

 貧乏子爵で、ほぼ冒険者として暮らしていたジンジャーでは、録な教育は授けられなかった。

 そして、伯爵家の婿(フェイン)に与えられる資金では、マリアンヌに貴族的な教育は受けさせることは出来なかった。

 家庭教師を雇うには、高額の雇用資金が必要だ。

 当主権限のない貴族には、届かない額。

 冒険者で得た資金でも及びはしない。


 いくら常識に欠けるフェインでも、愛人の子に伯爵家の資産を与えられはしなかった。


 それ(家庭教師を雇うこと)を可能にしたのは、皮肉にもレーヨン男爵だった。



 まあ、レーヨン男爵がマリアンヌの前に現れなければ、そもそもマリアンヌの心を歪ませてはいないのだが。



 そしてジンジャーは、マリアンヌから再び行儀作法を学び直す。

 一度は社交界に出たことのある彼女だったが、伯爵家に見合う礼儀作法は、以前学んだものとは違っていた。

 下級貴族と上級貴族の違いは、教育にも差がつくのだ。

 教育に金銭をかけづらい下級(子爵・男爵以下の)貴族は、最低限に近いものを学ぶか、資金力に応じて学びを広げる。

 上級貴族(伯爵・侯爵・公爵以上)は、役職等で王族とも付き合う機会がある為、それに応じた教育が必要だ。 

 王族との結婚の可能性もある。


 勿論没落・貧乏と呼ばれる貴族には、充分な教育は難しいかもしれない。

 しかし、親の知識を教えられると言う有利(アドバンテージ)がある。 

 振る舞いに於いても手本になるからだ。


 何も素地のない平民とは違うのだ。


 その為、いくら没落したとしても爵位は重要視されている。




 そしてフェインの娘として、伯爵邸で暮らすことになったマリアンヌとジンジャー。

 粗野だった2人は、行儀作法を身に付けてアマンダの前に現れた。


 もし、作法も何もない2人だったなら、眉をしかめられただろう。 

 ところが突然に現れた部外者達(マリアンヌたち)は、子爵の者とは思えない洗練された所作で使用人を圧倒した。


 伯爵家の資金を流用していないことは明確だ。

 アマンダが、ましてリプトンが見逃すわけがないからだ。


 伯爵家の(本業)の仕事が隠密なのは、影の者しか知りはしない。

 アマンダ達は、マリアンヌ達のことはほぼ把握しているが、口外は出来ないし、しない。

 完全に善良な者ではないと、理解しているだけだ。


 しかし、それを知らない多くの使用人は、ジンジャーが慎み深くマリアンヌを教育したと思っている。

 ジンジャーの本来の申し訳ないと思っている態度と、天真爛漫な仮面を被るマリアンヌは、徐々に使用人の警戒を解いていった。



 悪意のない2人と関わる毎に、恋愛小説好きな若いメイド達は『真実の愛で結ばれた親子』等と、影で囁くことも。


 勿論、そんなことに目くじらを立てるアマンダではない。

 とっくの昔に父のことは見限っている。

 ※一部、事情を知る者は暴れ出しそうですが(リプトンやダージリン達その他)。



 最初は使用人全員が、親の敵のように嫌っていたのだが、今や半数位は心を許し始めている。

 恐るべしマリアンヌ親子。


 そしていつも凛としたアマンダには、貴族令嬢として尊敬の念を示す使用人達も、マリアンヌには親しみを覚えていた。


 今は亡き、前夫人に似ているややつり目のアマンダと、垂れ目気味の大きな瞳のマリアンヌ。


 同じ年齢の腹違いの義姉妹。

 微笑みだけは貴族らしくなく、屈託のないマリアンヌ。

 穏やかで元気なジンジャー。



 フェインが、ジンジャーとマリアンヌを選んだのも解ると思った男の使用人も少なくなかった。

 決して大きな声には出せないが…………。



 悪意ではないので、明確な気持ちを読むことや流れてくることはないが、使用人の反応を理解出来てしまうアマンダ。

 アマンダとて、関係のない立場ならば幾分好意的になれただろう。


 事もあらうに離籍もせずに、母の思い出のあるこの家へ乗り込んで来なければ………………。



 真実の愛であるならば、伯爵(厳密には伯爵代理)の地位を投げ捨てて、去って欲しかった。

 (アマンダ)が産まれた時に離縁してくれれば……。

 せめて母が亡くなった時点で、離籍してくれていれば、こんなに憎むことなんてなかった。



 客観的に見れば、美しく産まれ素敵な男性と結ばれた母は、愛の勝ち組みだったのだろう。

 だけど実際は、振り向かれない不毛の愛に嘆く、満たされない女だった。



 僅かでも幸せの時間があっただけ、良かったのだろうか?

 それは母にしか解らない。






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