おまけ
今までこんなにも穏やかな時を過ごしたことがあっただろうか。
ルミナは横にいるシャロンを見上げて、緩んだ頬に手を当てた。
太陽の光の暖かさを感じながら、二人は街へと降りると買い物を楽しんでいた。
「シャロン様。あちらは何のお店かしら?見てみてもいいかしら?」
のんびりと過ごす時間がとても楽しくて、ルミナは終始にこにこと笑みを浮かべて店を見て回っている。
「もちろん。ルミナ。焦らなくても、ちゃんと時間はあるから。」
シャロンははしゃぐルミナに笑みを向けると、その手を優しく握り、一緒に店へと入っていく。
簡素な服を纏ってはいても、目立つ外見の二人があるけば、誰もが振り替える。
店の店主も、ルミナ達が貴族だと気づいているのだろう。
自分の店には貴族に売れるような高価なものはないと焦ったような表情を浮かべていたのだが、ルミナのあまりに無邪気で、楽しげな様子を見ていると、店主も顔が綻ぶ。
「シャロン様。見て?このオルゴールとても可愛らしいわ。」
丁寧に手作りされたそのオルゴールを、ルミナはきらきらとした瞳で見つめた。
シャロンは頷く。
「可愛いな。ルミナ、それも買おう。」
「まぁ!シャロン様ったら。さっきからすぐに私に物を買い与えようとするのは止めてくださいな。私だって自分で買い物できますのよ?」
クスクスと可笑しそうに笑うルミナに、シャロンは真面目な顔で言った。
「可愛いルミナを甘やかしたいんだ。それを許してはくれないのか?」
「まぁ。」
顔を赤らめながら、嬉しそうに笑うルミナに、店主は内心天使がここにいると心の中で見悶えた。
シャロンはオルゴールを買って従者に渡すと、ルミナの手を取り店を出てゆっくりと歩き出す。
楽しそうに笑うルミナを見て、シャロンは言った。
「ルミナ。・・楽しいか?」
その言葉に、ルミナはもちろんと頷いた。
「こんなに、こんなにも素晴らしい休日は初めてです。」
当たり前の日常。
当たり前の休日。
今までルミナにはそんな当たり前さえなかった。
けれど、今はそれが手の中にある。
「シャロン様。ふふ。ありがとうございます。大好きです。」
ぎゅっと手を握られ、そして可愛らしく上目使いで見上げられたシャロンは、うっと顔を赤らめると小さく息を吐いた。
「こちらこそ・・ありがとう。ルミナが、可愛すぎて・・・いつまで持ちこたえられるか自信が時々なくなる。」
ルミナはそんなシャロンの言葉に嬉しそうに笑みを深め、ぎゅっと腕に抱きついた。
「幸せですね?」
「あぁ。幸せだな。」
ルミナを今すぐにでも抱き締めてしまいたい衝動をどうにか必死に押さえるシャロンであった。
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