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32 3月11日の空を見上げて

平成27年3月11日執筆。

4年前を思いながら書きました。

 その日の埼玉県は晴れだった。

 午後2時46分。

 職場で大きな揺れに遭遇し、当時、窓口で接客を担当していた私は、落ちてきそうなほど大きく揺れる天井の照明に驚き、客を慌てて照明やガラスから離れた場所に誘導したのを覚えている。

 その後は妻の携帯に連絡したがつながらず、不安なまま勤務時間を過ごした。

 後になって地震に名前が付けられた。

 東日本大震災。

 私の職場がある地域の震度は5強、震源に近い宮城県の一部地域では震度7を記録した大災害。

 幸い、私の家族には大きな被害も無く、家に帰り着いてホッとしたのだが、東北地方では多くの方が亡くなられ、現在も二千人を超える方が行方不明のままだ。

 今日は平成27年3月11日。

 あれから4年が経った。

 新聞を開くと追悼の記事が紙面一杯に掲載され、朝のニュースでも被災された方を悼むニュースが流れている。

 4年か…‥。

 私の周りでは、4年の間に、息子が幼稚園にあがり、娘が小学生になり、私自身は病気を経験し、バイクに乗るようになり、来週には息子が幼稚園の卒園式を迎える。

 病気など多少の起伏もあったが、(おおむ)ね平穏な日常の連続だった。

 しかし、被災された方の4年という時間は、同じ感覚ではなかっただろう。

 大切な人を失った方の4年はきっと長く、つらい。

 自分がそうなった時のことを考えるだけで胸の奥がギューと痛くなる。怖くなる。

 何気ない日常に埋没し、いつもと同じようにバイクに乗って職場に向かう自分が、被災された方の気持ちを言葉にすることは出来ない。

 どんな言葉を選んでも、私は被災者ではなく、つらい思いもしていない。

 言葉は無力で、残酷で、カタチにするのがとても難しい。

 訳知(わけし)り顔で、同情や追悼や励ましの言葉を並べても上辺(うわべ)だけのように聞こえるし、被災された方に申し訳ない。

 本当に、気持ちを言葉にするのは難しいものだ。

 普段バイクに乗り、その時に感じた気持ちを言葉にすることすらままならないというのに、つらい思いをされた方に対して抱く自分の思いを言葉にするのには、私の表現力は拙過(つたなす)ぎる。

 今日も私は、いつもと同じようにバイクに乗って仕事に向かう。

 通勤路の途中で、ふとあの日と同じよく晴れた空を見上げた。

 あの時、私は何をしただろう。

 何が出来たのだろう。

 そして今、私に出来ることは何なのだろう。

 多くの方が突然その人生を終えることになってしまったあの日、今もつらい思いをされているたくさんの方が、その出来事にみまわれた日。

 私はテレビの画面や新聞の記事を通して見るその出来事をただ悲しみ、同じ境遇になることに恐怖した。

 現地に赴いた訳でもない。

 私の職場でも東北に応援派遣をするという話しがあったが、単身者の若い世代を送ることになり、私が行くことはなかった。

 岩手には妻の叔母一家も暮らしている。

 私の娘と同じ歳の女の子もいた。娘からみたら『はとこ』だ。

 震災前には義母と家族を連れて、私が運転する車で岩手まで遊びに行ったこともある。

 小岩井農場で一緒にソフトクリームを食べ、羊を眺めた。我が娘とは対照的におとなしい女の子だったと記憶している。

 それでも震災の後、ようやくつながった電話で被害が無かったことを確認しただけで、会いにも行っていない。

 そして今、日常に埋没し、あの時に感じた悲しみや恐怖すら薄れかけてきている自分に気がつく。

 このままで良いはずが無い。

 あれだけ多くの被害が出て、悲しみが生まれた日だ。

 何が出来ただろう。

 何が出来るだろう。

 今、私が出来るのは自分に問い続けることくらいだ。

 その程度しか思いつかない。

 問い続け、その問いの先に少しでも誰かのためになる解答へ辿り着けることを信じるしかない。

 私は3月11日の空を見上げながらバイクに跨り、問い続ける。

 何が出来ただろう。

 何が出来るだろう。

私にできたことは何か、できることは何か、いまだに納得のできる答えはでません。

無力で行動力の足りない自分を悔やむのみ。

考えることだけは続けます。

そういう性分なので。

答えがでることを信じて。

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