日本崩壊後 その5
「電話……繋がらないわ……」
私は更に不安になった。
「その前に、名前とか知らないとアレなんじゃ……」
「そうだな」
「ええ」
「ああ」
スマホ片手の私の後ろで、私を呼びとめた男がみんなに自己紹介を進めていた。
「ふう、そうね。私は木ノ神 陽子よ。都内で仕事をしているわ」
私が先だった。
自己紹介をしたのは……。
それから皆、それぞれ自己紹介をしてくれた。
私を呼びとめた男は、長谷則 平一郎というのだそうだ。私よりも若い長谷則は、今日にリストラされ無職だそうだ。
後の8人の男女は……。新居田 和利。戸田 俊夫。腹野 満尾。清田 洋一郎。原田 順子。西野 敏子。山田 理恵。早川 椰子といった。
戸田 俊夫はさっきまで、ここ荒廃した新宿の風景がゲームのワンシーンだといった青年で、学生なのだそうだ。
新居田 和利が喫茶店のオーナーだ。
長谷則は、これからどうする? といった顔で、私を見る。
皆がそうだった。
いつの間にか、私がリーダーになっていた。
「え?! どうしよう……。私もわからないわ」
長谷則がずっと遠くの方を指差して。
「あのさ。木ノ神さん。千葉へ行かないか? あるいは、神奈川でもいい」
どうやら、一旦、東京から離れてみようということだろう。
「そうだよな! OUTLINEのステージは東京だけなんだし、きっと、東京から外は荒廃してないんじゃないのか?」
戸田が歓喜の声を発した。
皆の意見も同じようなものになった。