表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/21

プロローグ

 ようやく青信号になった。


 ほっと一息吐いて、私はパンプスに力を入れ前に進んだ。それだけ、人が多かった。行き交う人々は、皆勤勉を絵に描いたような足取りだ。


 ここは、新宿駅前の信号機。


 秋の日差しを浴びたビルディングも、車も全て静かで、クラクションの音すらしない。歩行者用の交差点を歩いていると、聞きなれたメロディーがした。


 私はその時、自分のスマホからだと思った。

 スーツの後ろポケットから、スマホを取出し耳に当てると。


「もしもし?」


 ゴオー、ゴオー、ゴオー。


「やあ……そっちはどうだね……?」


 ゴオー、ゴオー、ゴオー。


 耳に入ってくるのは、そんな崩壊の音。

 さすがに、知らない声なので不審に思い。

 立ちの悪いだけの何かの間違いではと思った。

 電話を切ろうとしたが、思い止まった。凄まじい破壊の音は本物のように思えたからだ。


「もしもし! もしもし! ……?!」


「ところで、君。今の時間は?」

「え?! あ、はい! 今の時間は12時27分です。あ、ほんとだ! ここからも何か見えてきました! なんでしょうかね? あれ? ……え?! ここ東京、いや、……は……もう終わりです!! これでは、2028年には世界中に降り出してしまう!! これは……もはや地球だって破壊してしまうぞ!!」


 知らない男の緊迫した声が二人。

 どうやら、喋り方からすると、一人は座っている男で、もう一人はニュース番組のリポーターのようだった。


 それから、ビルディングの崩壊する激しい倒壊の音がスマホから耳をつんざく。


 車が下敷きになって、それからアスファルトが陥没する派手な騒音までスマホから聞こえてきた。


 不思議と人々の悲鳴はしない。

 

 私はスマホを持つ腕にある時計を見た。


 12時20分だ。


 私はあり得ないほどの恐怖という衝撃で打ちのめされた。足腰は震え、スマホを持っていられない。立ってるのもやっとだった。私の口が勝手に動いて何かの冗談だと終始呟いている。


 ぼやけた頭だが、思考が何かを引き摺ってきた。私が間違えていなければ、そのもう一人のリポーターのような男の声は、昨日観ていたニュースに出ていた男の声とそっくりだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ