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第19話 天空と疑惑のイヴァン

最後の授業が終わり、玄関を出ると茜色の夕日が俺達を包んでいた。

俺はいつも通りイヴァンと一緒に帰っていた。


帰り道、何気ない会話を交わしているとイヴァンが急に話を変えてきた。


「なぁ天空。今日これから天空の家に行ってもいい?」

「ん?ああ、いいぜ!」


俺は不思議に思いながら先に俺の家に行く事にした。

その前に小腹が空いたのでコンビニに寄り道した。


すぐに食べれる一口サイズのカップ入りのチキンとお茶を買ってそのまま食べながら帰ろうとした時にふと思い出した。


そう言えばイヴァンのやつ今日一日何も食べてないな。

コンビニに寄っても何も買おうとしない……さすがにおかしいんじゃないか?

一度試してみるか。


「イヴァンお前このチキン好きだったろ。一つあげるよ」


俺はコンビニで買った一口サイズのチキンを一つイヴァンにあげた。

イヴァンは俺のチキンを手に持って言った。


「天空、俺は今物凄く落ち込んでるんだ。こんなの食べてる場合じゃない。早く天空の家に行こうぜ!」


そういうとイヴァンは俺があげたチキンを道路に投げ捨てた。


俺があげたチキンを道路に捨てやがった……。

俺の知ってるイヴァンがこんな事をするはずがない。

だけど見た目はどう見てもいつものイヴァンだ。

こいつもしかして魔物に操られてるのか……?


俺は昨日から感じていたイヴァンの違和感が拭えず、このまま家に帰って大丈夫なのか頭の中で何度も問いかけていた。


イヴァンの様子がどうにも引っかかるな。

と言うより違和感を感じてる時点でこいつを家に連れて帰るのは危険な気がする……


俺は真っすぐに家に帰らずに家とは違う方向にイヴァンと一緒に行く事にした。


しばらく歩いてもイヴァンは俺の家と別の方角に歩いてる事に関して何も言ってこない。

こいつ俺の会話に話を合わせながらただ俺について来てるだけだ。


俺はイヴァンが持ってきた宝石の色の事をイヴァンに聞く事にした。


「お前今日は本当に暗いな。本当のミスターブルーになっちゃったんじゃないか?そう言えば朝にお前が持ってきた赤い宝石、あれちゃんと調べたら凄い値段してたぜ!」

「俺が持って行ったのは青い宝石だろ。何言ってるんだ?天空。そんな事よりもルナが待ってる!早く家に行って作戦会議をしよう」


こいつルナの事を呼び捨てにしやがった。

今までルナちゃんって言ってたのに、またおかしい事が続いた。


俺はイヴァンのその回答を聞いて今のイヴァンは本来のイヴァンじゃないと確信した。

そして俺はイヴァンの顔を思いっきり殴った。


「おらぁぁぁーーーっ!」

「ぐわっ!」


イヴァンは倒れながら俺の方をびっくりしながら見ていた。


「天空、いきなり何しやがるんだ?」

「イヴァン、お前操られてるのか何なのか分からないけど今目を覚まさせてやるからな」


イヴァンはゆっくりと立ち上がり俺に向かって言葉を発した。


「天空、お前おかしくなってるんじゃないのか?どうして俺がお前と戦わなきゃいけないんだよ」

「おかしいのはお前だろイヴァン。どうしてこっちの道に来たのに何も言わない」

「おかしいと思ってたさ。だけどお前がこっちの道に逸れたんだろ」

「それはイヴァン、お前がいつものイヴァンと違うからだ」


イヴァンは俺の話を聞いて呆れた顔をしながら戦う構えを取った。


「天空、お前本当にどうかしちゃったみたいだな。俺の技で思い出させてやる」


イヴァンは呼吸を整えて俺に向かってあの技をうってきた。


「くらえ天空!正拳一閃突き!」


俺は遠くから一閃のよう目掛けて飛んでくる正拳突きを両腕でガードしたが威力に押されて後ろに倒れこんでしまった。


「おわっ!」


まじかよイヴァン、あいつ技の記憶あるじゃねーかよ……


「天空、目が覚めたか?この技は俺しか出来ない技、俺のオリジナルだ」

「もう怒った。お前が本物のイヴァンかどうかなんて関係ない。とにかく今はケリをつけようぜ」

「ああ、そうだな……」


イヴァンは相手のオーラを読みながら空手の技と合気道の技の複合みたいな技をやってくる。

そして一番厄介なのがオーラを使ったカウンター技。

こいつが俺の急所を的確に突いてくる。


「どうした天空。かかってこいよ」

「ああ、後悔するなよ、イヴァン」


イヴァンは再び空手の構えを取り、静かに呼吸を整え始めた。

遠距離では分が悪いと思った俺はイヴァンとの間合いを詰める為に一気に踏み込んだ。


「甘いな天空!それじゃあ自殺行為だ!くらえ!瞬影呼吸投げ」


イヴァンに先制攻撃をしようとしたが俺が近距離で技を放てる間合いに踏み込んだ瞬間に俺の視界が宙を向いていた。

まるで影が生き物のように自然に動いているようで、俺の体を軽々と浮かせる。

そして空中に浮いた俺に向かってイヴァンの回転蹴りが飛んできた。


「空斬旋風脚!」


だけど俺も反撃に出た。


「させるか!」


空中に浮いた俺は反動的に頭を下げ、腰の重心を下にずらして空中で体勢を整えた。

そしてサッカーのオーバーヘッドシュートを放つような体制でイヴァンの空斬旋風脚に合わせて蹴りをいれた。


「なっ!俺の必殺の蹴りを蹴りでガードしやがった……」


そして空斬旋風脚の威力を利用して出来た遠心力にあえて身を任せ、回転して俺の必殺の一撃をイヴァンにくらわせた。


「ハリケーン スイング キック!」


だがイヴァンは俺の攻撃を先読みしたのか片腕だけで俺の必殺の蹴りをガードした。


「やるな、イヴァン。俺の新技をいとも簡単に受け止めやがった」

「天空、お前の技はこんなものか?全然大した事ないんだな」

「なにぃ……」


イヴァンは今度は俺に鋭い眼差しを向けながら空手の構えを取り深く息を吐き始めた。

そして一気に俺との距離を詰めてきた。

イヴァンの鋭い正拳突きが次々と繰り出される。

至近距離からの猛攻に俺は防戦一方だった。


「イヴァン、てめえ!」


俺はイヴァンの連続の正拳突きを見極め、的確にガードしていった。

イヴァンの回し蹴りが飛んでくる。

俺はそれも片腕でガードした。


「真空かかと落とし」


イヴァンは思いっきり右足を上げて勢いのあるかかと落としの必殺技を繰り出そうとしていた。

俺はそれを見て両手を握りしめてクロスガードを作り受け止めようと構えた。

だがイヴァンの振り上げた右足は俺の防御を避けるかのように別の方向へと流れていった。


……フェイント!!


「今度こそくらえ天空!空斬旋風脚!」


イヴァンの空を切るような勢いのある旋風脚が俺の顔面に直撃した。

そしてその勢いでおれは道路に倒れこんでしまった。


「残念だったな天空。どうやら俺の方が強いみたいだ」

「それはどうかなイヴァン。お前の攻撃は全然痛くも痒くもないぜ」

「なに?それじゃあ次で終わらせてやる!」


俺はすぐに起き上がって再びイヴァンと距離を詰める為に一気に突進した。


「天空、おまえそれしか出来ないのかよ!」


イヴァンはまた呼吸を整えて俺の攻撃に備えてカウンター体制に入っていた。

俺のパンチがイヴァンにかわされた。


「終わりだ天空!これでもくらえ!疾風一閃二段突き」


イヴァンの風を裂くように突き出された拳が一閃、そしてもう一閃、二段突きとして飛んできた。

攻撃が当たった瞬間、とてつもない衝撃が俺の体の内側から走った感じがした。

だけど……


「イヴァン……弱いよお前の攻撃。本物のイヴァンはこんなものじゃねーよ」


俺はイヴァンの顔を思いっきり殴った。


「おらぁ!」


イヴァンは俺のパンチをくらって道路に倒れた。


「な、なんだと……俺の必殺技が……」

「イヴァン、そんなパンチじゃこれから襲ってくる魔物を倒せないぞ。お前は偽物なのか?」


俺に攻撃があまり通じてない事を悟ったのかイヴァンは突如として逃げ出した。


「おい待てこら!」


あいつ全然こっちに反応しない。

逃げる事に集中しすぎて、そんなんじゃ俺が後を追っても気づかないだろ。


俺は逃げたイヴァンの後をつける事にした。


「やっぱりあいつはイヴァンじゃないな。イヴァンはどんな時でも逃げださずに立ち向かう。とりあえずこのまま後をつけてみるか。待ってろよ!イヴァン!」

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