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023最終章新展開! 飛び散る汁! 響く悲鳴! とうとう堕とされてしまうのか!

023最終章新展開! 飛び散る汁! 響く悲鳴! とうとう堕とされてしまうのか!



 モンスター群、とうとう王都北に到着。

 ぽろぽろとワイバーンが落ちているミステリーサークル地帯にモンスターの群れが入ってきた。

 最新観測情報2万5千の群勢の先頭である。

 俺は引きつけて、引きつけて、とにかく引きつけて黄金化を行う予定なのだが、バチャバチャと堀を渡ってくる大量のゴブリンで堀の水は既に濁っているように見える。

 遠いから俺にはよく見えないのだが、

「大丈夫ですかね?」

 という俺の問いに、

「まだヘドロという程ではないな」

 隣の女騎士が答えた。

 スパイの人だし、視力系のスキルでも持っているのかな。

 

 □

 

 地響きがしてきた。

 そういえば昔野球場の近くを散歩していたら丁度ハードな音楽のライブをしてて、飛び跳ねる客のせいで小さな振動を感じた。

 どうでもいい事を考えてしまうのは、ビビりまくって今すぐにでも黄金化してしまいたいからだ。

 

 前の方はゴブリンだらけだったのだが、見える距離になるとグレイウルフや獣型のモンスターが飛び出してきた。

 連携はしていないみたいだ。

 俺と女騎士、そして兵士達がこうして並んで待ち構えているのだ。

 主食が並んでいれば飛び込んでくるのが獣の本能。

 人間好き過ぎるだろ。

 

 先頭のグレイウルフに矢が突き立ち、力を失った体がゴロゴロと転がって止まった。

 数を相手にする場合、弓は面攻撃の武器なのだが、魔法が面攻撃をしてしまうし、ステータス補正があるこの世界では、弓は一撃必中を求められる武器になっていた。

 下手に魔法をぶちかまして堀を埋めるわけにもいかないので、矢が飛び交い、獣型を仕留めていく。

 

 どんどんグレイウルフの死体が転がっていき、

「っ? おわあああっ!」

 頭に矢を生やしたグレイウルフが転がりながらこっちに突っ込んできた。

 びびって頭を抱えた俺。

「むん」

 と、女性らしからぬ掛け声で女騎士がグレイウルフの死体を蹴り返した。

「あ、ありがとうございます」

「ふん」


 □

 

 だんだん押されてきていた。

 獣型の死体がすぐ近くにある。

 モンスターが多過ぎるのだ。

 俺の左右に並んでいる兵士達が応戦するだけではなく、城壁の上からも矢を降らせている。既に200体程の獣型の死体が転がっているが、走ってくる数の方が増えてきた。

 

 ゴブリンの足は遅くないはずなのだが、早く来てくれと焦れた。

 

 突出していたゴブリンが目の前に来て、女騎士に蹴り殺された。

 バラバラと壁の近くに辿り着くゴブリンが出始め、兵士が応戦している。

「今だ」

「はい!」

 ここの指揮官でもある女騎士の声で、俺は黄金化を発動した。

 ミステリーサークル堀の泥水を伝って能力が伝達される。

 

 ごごごごご、と地響きが起こった。

 兵士達からざわめきが上がる。

 というか一番びびっていたのは俺だが。

 土煙がまき上り、ボコボコと小さな土塊が飛んでくる。

 

 あっという間に縮んで俺の手から泥水が離れたが、手応えはあった。

 叩き込んだ力で、全泥水の7割8割は黄金化できたはずだ。

 

 パラパラと小さな土塊が落ちて来る音以外は、モンスターの耳障りな鳴き声。そして遠くから聞こえるのはモンスター達が進む地響き。

 俺たち城壁前の人間は、土煙で視界が悪かったのだが、城壁上の兵士達から歓声が上がった。

 続いて、やたらと鉄臭い匂いが漂ってくる。

 

「ぅぉおぉ……」

 煙が晴れて来て、俺は呻いた。

 大惨事である。

 ゴブリンが地を這いながら、泥まみれでギャギャッと鳴いている。

 空中を旋回していたワイバーンの群れはポツポツと地上に降りて、ゴブリンの死体、または足が千切れたばかりのまだ新鮮なゴブリンを咥えて空中に上がる。

 

「よし、城壁に退く!」

 女騎士の掛け声で兵士たちは後退した。

 かなりの数のモンスターを殺したか行動不能にしたみたいだが、それでも全部というわけではない。

 中にはただ転んだだけのゴブリンもいた。ワイバーンに食われてたけど。

 これだけの事になっても人間を追ってくるモンスターを倒しながら、ジリジリと下がる。

「御子様達はお先に!」

 と髭面のおっさんが叫んだ。

 女騎士は俺を抱えて、だん、と飛び上がった。

 20mはあろうかという城壁の上に着地する。

 俺はレベル10で垂直1m50ぐらい飛べる。それで喜んでいた自分がちょっと恥ずかしい。

「御苦労!」

 と王様が張りのある声で言った。

 戦が始まると雰囲気が違う。

 

 他の兵士達も、ある者は飛んで城壁に戻り、あるものは城門から退いた。

 

 この城壁ってモンスター用なんだな。こんなの飛び越えられる人間が居たら対人戦争じゃ意味ないわ。マス◯ーアジアかよ。

 

 モンスターは城壁にたどり着き、壁の前でウゾウゾと蠢いている。

 後ろからの圧力で、壁に押し付けられて死んでいるモンスターもいた。

 吐きそう。

 

 俺がやったモンスターの屍の上に、後ろから来たモンスターが既に重なってしまっているため、いったいどれだけやれたかわからない。

「戦果はあったんですか?」

「1000程は殺したか行動不能にしたみたいです」

 俺に答える秘書子ちゃん。

 この女性も一応近衛騎士らしい。うちの女騎士とは違って愛想が良い。

「1000か……」

 正直少ないと思った。

 

「次! 『ぴっちんぐましん黄金の右!』斉射!」

「ぶふぉっっ!!?」

 盛大に吹き出し、俺は泣きそうになった。

 黄金の右! はギャグで言っただけだから! それ名前じゃないから!

 ああああああああああ

 

 □

 

 

俺の恥じらいをよそに、『黄金の右!』は絶大な威力を発揮した。

城壁20mの位置エネルギーが加算された質量弾球はモンスター複数体を貫通し、体に風穴が開いた死体を量産していく。


 最初のミステリーサークル攻撃いらなかったんじゃないかとも思ったが、あれで死体を積み上げたおかげで堀とプラスしてモンスターの足場が悪くなり、勢いを削げたらしい。

 女騎士がそう言ってた。

 

 俺はといえば、女騎士に抱えられて、城壁上をいったり来たりしていた。

 恥ずかしいけどさ、しょうがないよね。

 黄金化には一応集中力が要るので、

 

 黄金の球は大量に用意してあったが、切れてから補充したのでは弾幕が薄くなってしまう。

 火魔法使い1名、水魔法使い2名体制で『黄金の右!』は操作されている。

 水魔法使い2名が弾薬補充と装填担当だ。

 水魔法使いが空中にふわふわと幾つも浮かべている水球に触れて全部黄金にしていく。

 皆んな手練れの様で、一気に10個や20個、ハンドボールぐらいの水球を空中に浮かべている。

 俺も練習してできる様になりたい。絵面がカッコイイし。

 横に並んだ水球をぺぺぺぺぺと触れながら黄金化していく。

 ゴトゴトと黄金に変わって落ちる金球に、魔法士達は最初のびっくりしていたし、こんなの砲弾に使っていいのかという迷いもあった。

 しかし、4周目ぐらいに見たら、何か目が死んでた。

 

 蒸気の逃げ口をあさっての方向に開けてあるのだが、それでも城壁上はかなり蒸している。

 俺は汗だくで女騎士に抱えられている。申し訳ないです。

 どんよりとした雲で今にも雨が降り出しそうだ。

 暑いので降って欲しいが、そうすると『黄金の右!』の効率が落ちるので、もう少し待って欲しい。

 

 □

 

『黄金の右!』で面攻撃、弓矢で大型やちょっと手こずりそうなモンスターを狙い撃ち。

 たまに『黄金の右!』が大型モンスターに当たって風穴を開けていた。

 そらゴブリンが10匹ぐらいまとめて砕け散るはずですわ。

 

 城壁直下は魔法攻撃で狩場になっている。

 

 あんなにびびっていたのが嘘の様だ。

 

 もはや完全に作業である。

 

 □

 

「あれ、やっぱりこっちを伺っているんですかね」

「さあな」

 

『黄金の右!』は既に70機程が壊れた。

 ギアが壊れたり、本体にヒビが入ったり、ベルトが千切れたり、様々だが、そうやって壊れた『黄金の右!』は火魔法でたっぷり炙ったあと、城壁下に落とされる。

 高熱の鉄の塊が落ちて来ただけで大惨事だが、その後水魔法使いがウォーターボールを落とすと、高温蒸気が爆発的に発生し、周りのモンスターが皮膚や肺に大火傷を食らう。

 最後まで良い仕事をしてくれる。

 でも、作動中も破損後処理でも蒸気まみれでキツイ。

 

 モンスターがかなり減って来て、とうとう弱ったモンスターが食われたり、ワイバーンの死体漁りが始まった。

 後は放置していてもたいした脅威にならないだろう。

 

 最初はビビった、成果が出始めて興奮してきた、でもただの作業となって飽きた。

 今はもう早くおわんねーかなと舐めている。


 油断してはいけないと思ってはいる。しかし実際そう感じてしまっているのでなんとも。

 

 だが、それでも最低限に緊張感を保てる理由が1つ。

 モンスターの群れと離れ、じっとこっちを伺っている3体のドラゴンだ。

 

 

 ◯

 



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