魔王現る
僕は現在、村の広場にて磔にされていた。素っ裸で。
そんな僕を冷めた目で見つめる、若い女たち。俺は分かってるぞと、なぜか親指を立てる男たち。
中には興味津々で息子を見つめる幼い子どもたちもいるのだが、必ずといっていいほどに『こら、そんな汚物を目に入れてはいけませんよ!』と、母親に怒られて去っていく。
しかしどうやら僕にはMの気質があったのか、肉に食い込む縄が程よく気持ちいい。
おかげで興奮したのか、息子がギンギンのビンビンだ。
「気が溢れる、高まる……だからせめて息子にだけでも慈悲を!」
こんな羞恥プレイ、僕には耐えられない。ただその想いからそう叫ぶが、誰一人として聞き入れない。
そしてその想いとは裏腹に、気持ちはドンドンと昂ぶっていく。
「ハハハ!よもやこのような場所で会おうとはな。探したぞ、異世界の勇者よ!」
どこからかそんな声が聞こえた。野太く、逞しい声だった。
「いい尻だ。それでこそ勇者。開発のしがいがあるものよ!」
その言葉に、尻の穴がキュッと締まるのを感じた。
「だ、誰でもいいから、助けてくれ!このままじゃ、童貞を捨てる前に掘られちまう!」
僕はそう叫ぶが、誰もがその場から逃げ出した。
「ゲ、ゲイノ魔王だ!男は皆、全力で逃げろ!絶対に捕まるなよ!」
そう叫びながら、森の中に逃げる男がいた。
「アーーーー♂♂♂!?」
しかし彼は、そんな叫び声を遺して二度と帰ることはなかった。
それに僕は恐怖を感じるが、いつの間にか周囲には誰もいなくなっていた。
冷たい風が、僕の息子を撫でる。
「フハ。香る、香るぞ。香ばしい、男の体臭。フェロモン。さあ、私に尻を差し出せ。そうすれば命までは取らん。痔にはなるやもしれんがな!」
ついに現れた、黒装束を纏った男。スキンヘッドがよく映える、いかつい顔。その体は筋肉の鎧に包まれていて、並の武器では通らないことが一目で分かる。
剥き出しにされた息子はすでにギンギンで、なぜかオーラのようなものが発せられていた。
「異世界人の尻は、締まりが良くて気持ちが良い。だから私は、貴様を掘る!」
僕は恐怖で体が震えるのを感じていた。
助けてほしい。そう願うが、誰も助けには来てくれない。
「私の眷属に手を出すつもりかの?たかだかその程度の実力で、よくそんなことが言えたものだな」
しかしそこに現れた、一筋の光。
「ムッ。貴様は、吸血姫リリナか!?」
「だからどうした?男色家の変態めが」
リリナはそう言って、ゲイノ魔王と村人たちから呼ばれた男の顔を鷲掴みにした。
その細腕のどこからそんな力が?と思わずにはいられない、ミシミシ音が辺りに響く。このままではきっと、トマトのように彼の頭は潰れるだろう。
「ハハハ!貴様のことは知っているぞ?かつて栄えた吸血鬼の国の王女。誰よりも民を愛し、誰よりも戦を愛した。血の沸く戦いを求め、炎獅子に手を出した愚かな吸血姫リリナ・リュラド!貴様のことは、殺してもその怨みは晴れんぞ!」
その叫びは、先ほどまでの彼とは違って悲痛なものだった。
「よもや、私のことを忘れたとは言わせんぞ!なあ、リリナよ!」
リリナはなにかを思い出そうとその手を放すが、数秒の時を経て、なにかを結論付けた。
「知らぬな。忘れた」
その呟きとともに、男の頭を蹴るのだった。
「あ、中が見えた」
長身な男の頭を蹴るために上げられた足は、スカートのようななにかを捲し上げた。
ちなみに色は白。きちんと脳内シャッターのボタンは押して、永久保存されましたとさ。




