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第38話 王の覚悟

ここに来て、展開がワケわからなくなっていますが……何卒、ご容赦を

ラセツは、やらかした。

が、そんなことは認めない。


認めてなるものかよっ


と、意固地になっていた。


紛糾していた貴族達の話し合いをザイナスがやっとこさ収めたのを見ても


「ふんっ」


ザイナスが抑えられる程度の驚きしか湧かないのかよ、と拗ねる。


面倒くさい奴である。


「それで、どう言うことだ?」


「てんてんてん」


沈黙を自分で表現する馬鹿。


「そうか、お主はそういう態度に出るか?」


禿頭(とくとう)に青筋を浮かべた怒れるザイナスは言う。


「ならば、お主が言うであろうと思って用意していた祝勝会用の食材は捨てておこう」


「なっ、卑怯だぞ! 食べ物を粗末にするな!」


「ならば、理由を言えばよかろう?」


(言えば怒らないか?)


「それは理由次第だろう」


「……」


「……」


「わかった、語ろうではないか」


そう言い、ラセツは語りだした。


「開戦までの時間はまだある。


……そうだな、事の発端は俺が建国とはいかなる物かと考えた事から始まる」


建国条件は


一.国家元首がいること


一.国民が居ること


一.他国から国として認識されていること


「大まかに言えば、そんなもんだろうと俺は考えた。そして、」


国家元首はラセツ・アツキ


国民は僅かに居る


だが、他国からの認識に難があった。


「だから、俺は友好を結ぶ為に、我が国でのみ作れる特色ある唯一の産地となれる物品……特産品を輸出することを考えた。しかし、誤算があったのだ」


それは、自分が今まで“俺の国だぁああ”と占有を主張していた土地が『存在するだけで資金が集う土地』だったと言う点だ。


「待て、お主……どこから来た?」


「ああ、そうだな。俺がどこから来たか?だな。これは少し昔の事から話させてくれ。」


ラセツと言う男がどこから来たか。それは詳しくは言えない。故に、


「かつて、少年だった俺は天災……そう、天災に巻き込まれた。そして、天涯孤独の身となり、いつしかこのような体になった」


石を手のひらに乗せ、ラセツが拳を握ると砂が隙間からこぼれる。


「な、なんと」


「何の手品でもねぇ、腕力だけでこれだ」


そして、考えた。


「天涯孤独っていうのも、寂しいものさ。しかしな? 俺はこんなんだ」


そして、考え出されたのが、


「既存の集団に入る事は難しい。如何に、周りが受け入れてくれていても孤独を感じるときは辛いもんさ」


ラセツはならば新しい集団、自分が集め、作った集団ならば孤独を感じることはあろうか?


と言う案。


「そう、そこで建国を決意した俺は数百いや、千の人が集まろうとも耐えられるだけの町を作った」


一人で暮らすには無駄が多い施設は、全て誰が来ても良い様にと考えた結果である。

迷い込むようなモノが居るならば、どんなモノでも受け入れよう。そう考え、作り出された町。


「しかしだ、待てど暮らせど来るのは獣ばかりよ。人が居ない地に根を下ろしてしまったか? と不安に思い、山を下ることにした」


ラセツはそこで“旅商人”ジェフ・セイル、テレッシアの王女であるエレンが襲われている現場に出くわした。


「そして、俺は国の定義を考え、エレンが国主になれる様に発破をかけ、味方をした。エレンがテレッシアを率いている限りは、この俺の力を両国の友好のために使い、エレンの次代にも友好を繋げんとと努力することを誓い、」


「そういう事だったの? でも、最初から言ってくれれば……」


「信用されぬかも、と?」


「そう言うことだ。エレン、ザイナスの様に疑うのも大事だぜ?素直さは美徳だがな」


さて、そんな決意をしたラセツは既知の組織に似ていると考えた組織に所属を考えた。

身分を証明する物にも成りそうであったし、少なくともそこからどのような場所に来たのか知れると考えたからである。


しかし、その組織……傭兵組合はガラの悪い連中の溜まり場で、自身が嗤われて居ることに気付き、必要事項を尋ね帰った。


「しかし、その時点である程度、予想はついていたのだ。だが、俺は予想が当たることを恐ろしく思い、目をそらした」


「……ゴクリ」


緊迫した語り口に生唾を飲む音が聞こえる。


「そう、俺の居た場所は、この地域ではこう呼ばれる場所だった」



禁域。


「ばkなっしm」


「あんどれじゃまあるっ」


話の微妙な間と、禁域の言葉にショウシン男爵とオーソレ子爵は奇声をあげる。


「そう言うことか」


「そう言うことだ」


ザイナスはラセツが意図的に渡していた情報の欠けていた部分を埋めた為に、理解をした。


「二人で通じあって無いで説明を頼むわ」


「はい。禁域によって、ガル・ダーサ、テレッシア両国は大国として君臨しています」


「ええ、テレッシアがここまで大きくなったのは、禁域を監視することで資金を受け取り、禁域によって国の旨味が減っている上にうっかり監視が解けたときに強大なのが出た時どうしようもないから、攻められることもなかった」


「ええ、その通りです。では、ラセツによって禁域が無力化を行われている場合どうなりますか?」


「監視のために提供されている資金、物資、人員が削減……この期に無くすこともあり得るかしら?」


「そうなることもあり得るでしょうな」


「ちゃんと裏も読めるならば良しだな」


「黙っとれい! では、テレッシアは害がありますかな?」


「資金と人員、物資が減ることで……飢饉が悪化するっ!?」


「いえ、物資のほとんどは武器などであったことや、兵士の食料、軍馬の飼い葉などが食料事情を圧迫していた原因でもあったので飢饉は軽くなることもあります」


「それならば良いことでは?」


「なることもあるだけで、確実ではありません。それに、あくまでもそれは我が国の場合です」


「どう言うこ……ガル・ダーサね」


「ええ。ですが」


「そう、俺によってこの国の飢饉は軽くなることは間違いない」


ザイナスの後を継いでラセツが言う。


~✳️


「エレン。私の孤独を嫌う心と野望が巻き込んでしまった哀れなるエレン。お前が、どの様な王になりたいか、それだけで全ての意味は変わる」


「ラセツッ! お主ッ!!」


「済まない、ザイナス。全ては我が選択が招いたことだ。だが、この子にも選択の自由は与えられるべきだ」


「それがいかに残酷なことかッ! お主には分からんのか!?」


「知っているとも、選択の自由が無く、勝手に決まってしまったことならば言い分けが出来る。関与できなかったとな。だが、私が、俺が背を預けたいと思える友はそんな弱くてはいけない。

何より、この子の目標も、夢も成すことはできない」


「お主の勝手ではないか! エレン王女は、父王から頼むと言われている。傀儡ではないのだ!」


「キンユウ公爵、良いのよ」


「エレン王女」


「ラセツ、どう言うことか説明して」


「無論だ」


ラセツも切り替える。


「まず、俺の来歴は説明した通りだ。そして、これは俺の傲慢そして、強欲さ。他者をかえりみない自己中心的な行為で出来ている状況だ」


「ええ、分かったわ」


「そう、そのまま理解されると、なぁ。もう少し、違うわ! とか言って欲しいものだが」


「うぉっほん」


「分かっている。エレン、お前は王となったとき何を望む?」


「弱い人を救うわ!」


「…… (眩しいねぇ。)そうか、ならばお前はある国の王だ。自国の民を自分の国で助けることが出来なかったらどうする?」


「ヒントは?」


「ヒントは無し。間違えた場合は俺がこの地から去ろう」


「周りに国はあるの?」


「あると仮定しよう」


「その国は良い国?」


「お前の言う良い国とはどんな国なのかが分からないな。」


「……私は、その国の事はわからないわ。でも、テレッシアだと言うのであれば、私は、貴方に預けるわ」


「ほう」


「おお」


ラセツ、ザイナスの二人は声を出す


「それは何故だ?」


「貴方は、国を造ると言ったわ。そして、千人規模の民が暮らせるように作ったとも。」


「言ったな」


「なら、あなたの国に行っても良い人を送るか、浮いた経費であなたの国から食料を買えば良いわ」


「俺がその条件を呑むかは、わからないぜ?」


「呑むわ。呑めば私は国として認める。」


「よし。見ろよ、ザイナス。こいつは為政者に成れる。しっかり支える奴が居れば幾らでも化ける。守られるだけの奴じゃぁねぇ。前情報も、知識もない中で己の価値観と想像だけでここまで出したんだ」


「……そうだな。本来ならば喜ばしい」


「そうか、お前も白の呪縛に囚われているのか?」


「白の呪縛?」


「お前はずっと、白はいけないと教わり、考え続けた。俺の故郷にはこういう言葉がある。『三つ子の魂百まで』と。意味は、齢3つの時つまり幼い頃の性格はいつまでも変わらないという事だ。性格は3つだが、考えはいつ固まるんだろうな」


「つまり、私が避けてると……お主はそういうのか?」


「そうでなくて何というのだこいつは前王なぞ比較にならない王になる筈だ。偉大すぎる先々代が全てをお膳立てしてしまったが故に成長の機会が得られなかった先代とは違い、苦難にも会ってる。俺は、背中を預けられる奴を王にしたい」


「……決めるのは、エレン王女だ。何も言わない」


間違いを認めるのは難しい。しかし、その間違いを認めたザイナスは優秀で尊敬されるべきだろう。


「ザイナス、お前は間違ってはいない。ただ、環境が悪かった。まだ変えられるだろう?」


「そう、だろうか」


「キンユウ公爵、私が王になったならば、そんなこと考えられないほど忙しいわよ?」


「それは、まさか?」


「この国で荒れているのは何かしら? そしてその専門家は?」


「経済、重用して頂けると?」


「赦せるのも、足りないものを理解できるのも王の器だな」


「ラセツ、私は王になるわ。あなたに流されるだけではなく、あなたに張り合えるだけの力を持って」


「おいおい、俺はまだ国を持っていないんだぜ? 張り合うまでもなく、お前が上からスタートさ。まぁ、俺の方が成長できるがね」


「私はこの髪に劣等感がある。親を恨んだ事もあるわ。でも、そんな価値観を気にしない。たとえ一人になったとしても胸を張れるだけの自信を、持つ。その覚悟を持って成るわ」


「エレン、お前がそれを為せた暁には弱き者でも救えるだろうよ。自分の正しさが信じられるからこそ、人は踏み出せるんだからな。」


「ええ、きっと。でもその前に私が王にならなければ意味がないわ。あなたが死んでも、私は王になる。あなたは死なないように、何より私を王にしてみなさい?」


「お前も頑張れよ?」


「勿論よ」


「皆さま、開戦の時間が迫っております」


兵士が駆け寄る


「ああ、ありがとう。この俺、ラセツがいなければ、主役の居ない劇の様な物だ。そういう意味では君は主役を呼ぶ重要な役だな。うむ」


エレンは、そんなラセツを呆れた目で見て、


「ここまで成れるかしら?」


呟いた。


ザイナスは、なって欲しくなさそうである。


~~✳️


アテウマ軍と相対するエレン・キンユウ公爵軍。


アテウマ軍は、無能王子アテウマを頭とした軍であり、母方の実家であるウゾウ家から多数の取り巻き……いわゆる派閥の貴族を派遣されている。

それによって、兵士の数を増やすことに成功。当初は有象無象が集まったに過ぎない烏合の衆であったが、羊を率いたるは狼。


サック・ボウによる編成、指揮系統の整理、アテウマ名義で潤沢な資金と多くの食糧を入手。

この地域時代においては革命的といえるほどの軍備が整えられ、精兵とは言わないものの寄せ集めではなくなった。


中核を為すのは、英雄と精兵を集めた如何様にでも変化させられるオールマイティー。

穴を空けたくば突撃させ、穴を埋めたければ並べ、後退させたくば盾となる集団。


指揮官以外が倒されても影響を抑えられる様に編成されているが、弱点はその指揮官に代えが利かないと言うことであろう。指揮官が討たれた場合、その周辺は無力化を余儀無くされるどころか周囲の足枷となるだろう。



相対する、エレン・キンユウ公爵軍はザイナス肝煎りの私兵であり連携は勿論、指揮官が討たれたとしても指揮権の交代もスムーズに行えるだろう。

ザイナスの機転および先見の明によって兵士を集めることに成功したとは言え、兵数は少なく兵科ごとの人数もバラバラで、これは中途参加の貴族がそれぞれ持ち得る兵を集めた事と、エレンの髪の影響で思ったよりも集まらなかった事で生じた。


ラセツによる障害の設営、敵を挑発することで戦場を自軍に有利に出来たことが数的劣性を何処まで覆せるか……


平均的な質においては圧倒的有利を持つとは言え、アテウマ軍の中核部隊よりは下であり尖った部分が少ない。


中核部隊以外を磨り潰すことは容易いだろうが、中核部隊を如何に封じるかが肝となりそうである。



~✴️


アテウマ軍は、やはり英雄ザモンを先頭に配置、先陣を切る様である。


対するエレン・キンユウ公爵軍はラセツを先頭に配置、先陣を切るのは歩兵のようである。


川を挟んでの戦いであり、チャリオットを如何に向こう岸に渡せるかと言うアテウマ軍。

川を渡らせずに、如何に精兵を減らせるかと言うエレン・キンユウ公爵軍。


英雄たるザモンは、川を渡るために(かち)で突撃した後に敵兵をある程度排除し、しかるべき時に戦車を川向かいに運び、戦車に乗り追撃、掃討にかかる作戦をサック・ボウと協議、採決。


対するラセツは弓でもって遠距離からの攻撃を独断する。

敵兵の一部を乱し少数と本隊に別ける事で少数を確実に減らし、ザモン、サック・ボウの二大英雄……サック・ボウは英雄の末裔だが……を、相手取る作戦を展開することに。


お互いが策をぶつけ、相手を如何に不利な状況に押し込めるかが焦点となっていた。


はっきり言ってしまえば、自分が有利になったとしても犠牲は出る。

犠牲を出さないためにも、自分が有利になるために動く必要はなく、相手が不利になり相対的に自分が有利になることが損耗を防げる。


お互いがそう考えていたが故に、ラセツはまず挑発をした。

自分が有利になるだけであれば、高台に陣取れば良いのだがそれでは敵軍は相対的に不利なだけである。

平時と同じ力が出せる敵軍と違って自軍が平時よりも力が出せる状況にいると言うことであるから。


今回川に誘導したことによって、自軍は平時と変わらない実力を出せるだろう。しかし、敵軍は本来の力を出すことは出来ない。

つまり、敵軍が不利であり相対的に自分が有利になったわけである。


無論、高台を陣取れるのであれば陣取れるに越したことはないだろうが、地形によって味方が追加で出せる力が20だとして、川を挟むことで出せない敵の力は50。


本来の衝撃力(決め手)が封じられていることは、飛角香全て取っ払った状況での勝負。


相手の主力を潰した後には投入可能といえども、それはつまり相手の飛角香を全て落とした後にのみ使って良いと言う鬼ルール。


戦開始前から、不利は決まっていた。

ラセツは己がビスマルクになった気分であったが、決してそんな大層なことはしていない。

良いところ詐欺師、あるいはアテウマの受け取りかたであれば結果的に、太鼓持ちと言ったところである。


まぁ、ラセツとしてみれば敵をここに集められるのであれば、煽てようが怒らせようがどちらでも構わなかったが……


~~✴️


「準備はどうした?」


ザイナスはラセツに尋ねる。


「してあるだろう? この格好を見ろ」


いつもと違う点で言えば


足は足袋に草履(ぞうり)が基本スタイルだが、草鞋(わらじ)だ。

脚には脛当てを、腕に籠手を肩には袖を垂らし、中央には胸の部分までを保護した藤の鎧を纏っていた。


総じて木で作られており、火に弱そうである。


「なんだその格好は」


「今回は軽装であるべきと判断したからな。この装備であれば、川が増水しようとも推し通る事が可能だぞ? 何せ浮くからな! はっはっはっは!」


何がおかしかったか、腹から声を出して笑う。


「腹はどう守るつもりだ?」


「ふむ。本来ならあまり見せる物ではないが、教えてやろう」


いそいそと脱ぐと、中からは全身が鎖帷子に覆われた変質、ラセツが現れた。


「これでいて、案外着心地が良いんだぞ?作るときは、一つ一つの目を細かくするために鉄の輪を大量に使うが、輪を小さくすることだ。張り付くように動くぞ」


「なかなかインパクトのある絵だな」


時は満ちた。

ラセツ→すまないとは思っている。だが、やらねばならないのだ


エレン→正解したわ!


ザイナス→私は逃げていただけだったのか


プロ目手薄→……ひどすぎる

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