「トッカータとフーガの二単調」
Fホテルの一階ホールには犯人達の築いたバリケードの山が有り、その奥には従
業員や、客達の人質が居て膠着状態であった。
主犯のドン・ケージは、疲労を隠せない様子だったが決して行動の変更を考えて
は居なかった。
「お前達気を緩めるな。」人質には全く人間的な配慮は無かった。
「俺達は一体どうなってしまうんだ。」
只、時間だけが通り過ぎて行くのであった。
と、その時彼等の脳裏に突然荘厳なメロディーが沸き上がって来たのである。
「何だ。隣はコンサート会場か。」
現場は騒然と成った。
やがて人々は各々の立場も、怒りも、悲しみも、
飢えも渇きも忘れて、
じっと
音楽に聴き入った。
暫くして
主犯のドン・ケージは、
「は、バッハじゃないか」とぽつりと云った。
自分は今何を考え、
何をしようとしているのか。
「嗚呼。自分にはかつて、音楽が有った。」
思わず彼の両の目尻から、熱いものが流れ落ちた。
何ものの音も聞こえなかった。
「主犯のドン・ケージ。お前を逮捕する。FBI捜査官だ。」
ドン・ケージは、
虚ろな目を見せながら
フレデリックの前を通り過ぎて行った。
で、結局今回の事件解決のキーワードは
「トッカータとフーガの二単調」だったそうである。選曲は月並みだったろうか。
http://www.youtube.com/watch?v=wzzNjSJCyrw&playnext=1&list=PL567A4095E8A43497




