まごうことなきデートです11
「そうですね、えっと、まぁ、恵茉も最初はそう思っていたんですけど、案外外が暑いというか。日が強くて中の方が良いと思ったんですよね。……ダメでした?」
「いや、なんとなく気になっただけだから」
「まぁいいじゃないですか。で、どうします?何食べますか?」
「結構いろいろあるな。何がおすすめなんだろ」
メニューをみるとどの料理も割とリーズナブルだった。お洒落な店内とこの価格設定なら高校生の定番になっていてもおかしくはないだろう。
「恵茉はこれにしますけど、高瀬君は決まりました?なんなら恵茉が決めてもいいですか?」
「なんで恵茉が決めるんだよ」
「恵茉の特技なんですけど、人が食べたい奴を分かるってゆうのがあるんですよ。だから当ててあげられる自信があるんです」
胸を張って力説する彼女を疑いの眼差しで眺めてしまう。
「あ、疑ってますね?恵茉のことを疑うなんてあまり褒められた行為じゃないですよ?そもそも恵茉は隠し事のしないタイプなんだから――」
つらつらと御託を並べていた恵茉が何かに気づいて、ハッと喋るのを辞めた。
「高瀬君、ちょっと熟考モードに入るので話しかけないでくださいね」
「は?」
「いいから」
不自然にメニューを立てて声をひそめた。
違和感のある行動に店内を見渡す。何か、変なことを探してみるが何もない。混み始めるタイミングなのか忙しそうに働く店員の姿と普通に食事をしているお客さん。
目を引くとすれば、きょろきょろとレストルームを探す客だ。こちらに近づいてきたと思ったが、なるほど、トイレはこの席の近くにあった。おしゃれな空間に近づけるために分かりづらく作られている。
「……店員呼んでいい?」
メニューで顔が良く見えないが、こっくりと首を動かすのは見えた。思ったより派手な音のブザー音が響いた。
簡単に注文をしていると、トイレを終えた客が席へと戻って行った。おや、と思う。目が合うことは無かったが、映画館でも彼を見た気がする。
「……恵茉は、以上です。高瀬君も大丈夫ですか?」
「あ、うん」
「かしこまりました」
注文を聞き終えた後に手早くメニューを片付ける。それに対して恵茉は何も反応はしない。もう用は済んだのだろう。
「楽しみですね。穴場なんですよ、ココ。じゃ、私はお手洗いに行くので、きても先に食べちゃダメですよ?」
そう言い残して彼女は迷いのない足取りで歩いて行った。
手持ち無沙汰になった俺はバルコニーの方を眺める。パラソルは付いてはいるが、確かに日の当たりは強そうだった。とはいえ、家族連れもいて、それほどまでに避ける必要も無いだろうとは思う。




