まごうことなきデートです10
「もぅ、人にぶつかっちゃうなんて高瀬君もおっちょこちょいですね。あの人ビビってましたよ?高瀬君が当たり屋みたいになってるから」
「いやそんなことはなってなかっただろ」
「そうですか?」
映画館を早足で逃げるように出たせいで余韻が吹っ飛んでしまったみたいだった。
スマホで時間を確認するとお昼手前。解散するには少し早すぎるだろう。俺と同じタイミングで恵茉もスマホを取り出していた。目に入った彼女のホーム画面には着信が何件か入っているように見えた。
恵茉はかけなおすこともせず、鞄にしまうと顔を上げる。
「高瀬君はお腹すきました?」
「わりと、どっか行く?」
言いながらも足取りは止まることはない。俺は昨日の夜に見ていたお店を思い出そうと必死だった。軽くて、洒落たところがこの先にあったはずだけど。
「恵茉、行ってみたいお店があるんで向かってもいいですか?バルコニーみたいになっててちょっと外で食べられるのが売りのお店らしいんです。この前インスタで見て、良さそうだったんですよ。軽いイタリアン的なお店ですけど、平気ですか?」
「全然、大丈夫」
「良かった」
ホッと安堵の顔を見せる恵茉は別に良いのだが、ふと気になることができた。恵茉、インスタやってるんだ。俺、フォローしてないけど。
目的のお店には迷うことなく着くことができた。流行っているなら混んでいるかもと思っていたが、店内は割と空いているみたいだった。休日にこの感じなら経営が怪しく思えるなんて、そんな無粋なことは考えてはいけない。
「いらっしゃいませ」
白い制服の端にチェック柄の入った可愛げのある制服に身を包んだバイトらしき女の人が接客してくれる。
「すみません、2人で。空いてますか?」
「大丈夫ですよ。こちらへどうぞ」
店員さんが案内してくれようとした時に恵茉が横から口をはさんだ。
「あ、すみません。あっちの席でもいいですか?」
恵茉が指さしたのはバルコニー席、ではなかった。奥のテーブル席だった。
「あ、はーい。大丈夫です、どうぞ!」
促されるまま恵茉と俺は店内の奥の席へと腰を下ろす。
恵茉はさも当然のように深く座って、メニューを開いた。
「うーん、どうしましょうか。恵茉的には今はパスタの気分なんですよね。高瀬君はどうします?あ、流石にシェアとかはしませんから。そこは守って下さいよ」
「……いや、恵茉」
「?どうしましたか?」
「どうって……。その、あっちじゃなくてよかったの?」
俺はそう言って窓の方を見る。カップルが座っているほか、まだ席は全然空いている。
「あぁ、そうですね……」
「ここ端も端だし。外で食べられるのが売りだって言ってたじゃん」
恵茉は外を眺めた後、言い訳のように話し出す。
「そうですね、えっと、まぁ、恵茉も最初はそう思っていたんですけど、案外外が暑いというか。日が強くて中の方が良いと思ったんですよね。……ダメでした?」
「いや、なんとなく気になっただけだから」
「まぁいいじゃないですか。で、どうします?何食べますか?」
これは、果たしてデートなのか?




