まごうことなきデートです5
「でも、恵茉っぽくないというのは今日の予定にぴったりです。良かった。では行きましょうか」
恵茉はそう言うと、俺の手は引かなかったけれど、再び駅の中へと歩き出す。結局、西口方面へ行くみたいで慌てて恵茉の横を陣取った。タイミング悪くまた電車が入ったみたいで、コンコースに人が溢れていた。わざわざこっちを待ち合わせに指定した意味を考えてしまうけれど、恵茉の可愛さの前では何も言う気になれない。
「その点、高瀬君はイメージ通りですね。ちゃんとしている感じがあります。ファッションとか気にするタイプですか?」
「いや別に、普通だから」
「そっか、そうなんですね」
「でも割と気合入ってる方かも」
「……それなら嬉しいです」
休日だけあって、繁華街の方は先ほどと比べ物にならないぐらい混んでいた。カップルや家族連れなど楽しそうにしている人の中を恵茉は縫うように歩く。
どさくさに紛れて手でも繋げないかと思うが物理的な距離と精神的な距離が遠くて難しい。恵茉の動きは不自然で、ゆっくりになったり早くなったり周りを見渡したり、なんというか落ち着いていない。きっと、それは俺も同じなのかもしれない。
「とりあえず、こっちに」
この方向に進んでいくと商業施設のほか、メインとなるのは映画館くらいしかないだろう。そもそも今日の予定を恵茉に聞いていないし、俺のプランを押し付けるわけにもいかない。なんで最初に聞いていなかったのだろうかと後悔したが、もう役には立たない。
「この方向だと映画館に着きますね」
恵茉がポツリと呟いた。
「向かってたんじゃないの?」
恵茉はこっちを見て困ったような顔をした。
「恵茉の……恵茉の気の向くままに歩いているだけです。高瀬君は映画お好きですか?」
「割と見る方だと思うけど。今やってるのだとアレかな、アニメの劇場版。まだ見てないし。恵茉は?」
何故か恵茉が立ち止まる。スマホを取り出してすぐ小さな鞄にしまった。肩から掛けられた白い小物が今日の服装に映える。
「あ、それいいですね。恵茉は割と何でも見る方です。でも洋画が多いですかね、大きいアクションが好きなんですよ」
「そうなんだ、じゃぁ映画にでも行く?」
「多分……そうしましょうか」
恵茉が再び歩き出した。
「今から行って空いてると良いけど」
「大丈夫ですよ、ちょうど良いのがあるはずですから」




