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27.彼女の告白

 父の机を挟む様に、僕の隣にシルクリース様が座り、向い側には、兄様とゴードンさんがソファーに座った。


 王女であるシルクリース様に父を紹介しなければならないのだが---さて、どうしようか。


 父は侯爵だ、ならば王女であるシルクリース様に父が先に挨拶をしなければならないのだが・・・身分を明かすのはいささか早々では無いか---と魔族だった頃の僕が懸念を抱く。・・・父を信頼しているだが---。

 チラリと、ゴードンを見るが眉をしかめ、僕の出方を待っているようだった。


 はぁ・・・。


 深く息を吐き、僕は先にシルクリース様を紹介する事にした。王女である事は明かさない事にする---。身分と関係なく僕が一緒に居たい相手だと紹介しようと思ったのもあるが、ゴードンからすれば明かして欲しくない情報だと思ったからだ。


「---父上、こちらがシルクリースです。・・・前々からお話をさせていただいてた方です」


 ゴードンは軽く目を見張ったが、直ぐに眉を寄せ僕がシルクリース様の身分を明かすつもりが無いと、一応納得をしてくれているようだった。


 ---シルクリース様は、目をウルウルさせて頬を赤く染めていた。・・・僕もなれない呼び方をして、少し気恥ずかしかった。スッと視線を少しずらし、シルクリース様が立ち上がり易いようソッと手を差し伸べた。

 シルクリース様少し懐かしむように目を細めたのか、口元が上にあがり微笑んだ。・・・これは二人が共に過ごすようになった時からの習慣だ。かならず、隣あって椅子に座り、僕が手を差し伸べるのだ。


 ---ここにも僕が置いてきたものがあった・・・、誰にも譲りたくない場所なのだ。


 差し出した僕の手に、ソッと手を乗せる立ち上がる。


「---違うわ、ルー分かっているでしょう?」

 ニッコリと口元と吊り上げ微笑んで見せるが---瞳はしっかりと、僕の考えている事を咎めるように真直ぐに見つめていた。


「---駄目です!!」

 ガタッと勢いよく立ち上がり目の前の男・・・ゴードンが口を挟む。


「静かにして、ゴードン。---分かっているから、大丈夫」

 僕からそらされない瞳・・・シルクリース様の心は決まっている---僕の覚悟だけなのだ。一度目を伏せ・・・ゆっくりと、僕は父に視線を向けた。



「---シルクリース様ご紹介させて下さい。私の父、フリスト・ヘルヴォルトです。侯爵の爵位を賜り、この地の領主をしております」


 僕達の遣り取りを静かに見つめて居た父が、静かに立ち上がり僕達の傍に近づく。そしてシルクリース様と向き合うと静かに腰をかがめ、貴族の礼をする。

「フリスト・ヘルヴォルトと申します、こちらにおりますフォルトスとルークスの父です」


「---そう、宜しくお願いしますね、フリスト・ヘルヴォルト侯爵。わたくしは、ブリュンヒルデ国、王女シルクリース・ブリュンヒルデと申します。なにぶんこの国の習慣には不慣れなの。助けてくださいね」


 ゆっくり微笑み、大きな衝撃を与えた。ビキリと動きを止めた父・・・、はっ??と口をあけてしまった兄様と、あ~余計な事をと呆れ顔のゴードン。


「---皆、ヘルヴォルトなのよね?では『お父上様』と、『兄上様』と呼ばせていただきますね」


 ---とても嬉しそうに手を合わせ、皆の顔を見ていたが・・・、父と兄様は「は??何を言ってるんだ!?」という顔になっていた。

 そんな二人の顔をみて、とても楽しそうに再び大きな衝撃を与えたのだ。


「---だって、私とルーは結婚するんだから、今からそう呼んでいた方がいいでしょ?おかしい事じゃないわ」


 言われた言葉をブツブツと繰り返し理解しようとしている兄様と苦笑い浮かべ始めた父を他所にシルクリース様は僕に抱きついてくる。


「きゃぁ~言っちゃったわ!」


 ははっ・・・色々暴露しすぎでは---?!---・・・恥ずかしすぎる。



 ・・・相変わらずの変わらない性格にホッとしたのだが、僕は父と兄様、ゴードンの視線を受けとても居たたまれない気持ちになった。



 確かに、僕は初恋の・・・と、はっきりと言ったわけではないが、会いたい人が居ると父と兄様には言っていた。---それが、現実に現れ10歳程度の容姿の女の子に宣言されるとは・・・父はびっくりしたことだろう。兄様は本来の姿を知っているが上での葛藤があると思うが・・・。どちらも頭を悩ませているのが分かる。



「---忘れていたわ、こっちはゴードンよ。この街で魔石商をしているのよ、ご存知でしょう?」


 サラリとゴードンの紹介をして、混乱した場を治めた。一通りの挨拶を終え、あらかじめ用意して置かれたお茶を飲み一息つくことにした。







「いくつかお聞きしても宜しいですか---シルクリース様。まずはこの街に滞在されている目的をお教えいただきたい」


 コクリと頷き、シルクリース様が口を開いた。


「---理由なんてそんな大層なものはないのよ、・・・ルーが、ルーフェストが亡くなってからシンが居なくなって・・・。それから居なくなったシンをずっと探してた。そしたらゴードンが街でシルバーウルフでシンと名づけられたのが居るって。・・・後、魔石かな。ルーフェストと同じ魔力だったから・・・確かめずに居られなかった」


 誰にも視線が合わないように、斜め下に目線を反らせ・・・胸の中に詰まっているものを少しずつ昇華させているようだった。



 静かに語られた言葉の終わりとともに、僕の手の上にソッと手をかぶせる。



 父は、一つ一つに頷きながらも、必要な事だと淡々と話を進める事にしたようだ。



「ブリュンヒルデ国と、いうのは、この『深緑の森』の奥に住むといわれている、魔族の国の名前だと言う事で宜しいでしょうか?」


「---そうよ。・・・折角だから教えてあげたの」

 ニッコリと笑みを浮かべるその顔は、いたずらが成功した時のようだったが・・・父と兄様が心底驚いたので成功なのだろう。


 ---シルクリース様が王女だという事もかなりの衝撃事実だと思う。


「ゴードンは街に住んでいると言う事ですが、何かをしているのかお伺いしても?」


「あなた達が森を監視し、私達を警戒している様に、私達もあなた達方を警戒ししているのよ。---特にあの男の様な者をね・・・最近来たでしょ~あの男が」



 にっこりと、人差し指を立て自分の唇い当てて、満面の笑みを浮かべるが室内が一気に冷やされていった。



「・・・街がなく無くならなくて良かったわね」

 と---。


 兄様が、ヒュッと息を呑んだ・・・魔力が一揆に放出され濃度がこくなる。父も顔の表情は変わらないのだが、体がこわばっているのが分かった・・・。


 僕は、シルクリース様と触れている手をギュッと握り締め、瞳を見つめる。

「---今は、ここに居ますから」


 ---大丈夫、もう傍を離れる事はない。と誓いを込めて瞳を合わせる


「そうね・・・大丈夫ね」


 はあぁ~っと深呼吸をすると魔力の放出がとまり、父と兄様がハッと息を吐いた。



「---・・・でも、次はないわ。ゲンドゥル侯爵が、仇をとりに来ると思う」


「ゲンドゥル侯爵とは?」


 あら?以外だわ・・・って、顔をして僕と父の顔を交互に見る。・・・きっと僕は何と言っていいのか分からない顔をしていたと思う。


 ・・・父に、魔族の父の話をしにくかっただけなのだが。


「---聞いていないの?魔族だった頃のルーのお父様の事よ。ルーは『ルーフェスト・ゲンドゥル』、魔王側近の一人・ゲンドゥル侯爵家の息子だったのよ。歴代・・・勇者と呼ばれるあなた達人間が倒してきたのは、平民なのよ・・・魔力が少なくもなく、それなりの実力を持っているけど、王族や貴族のものには到底及ばないくらいの実力ね。そもそも国を自由に出て行った者達がどうなろうと、国ではなんとも思っていないもの。こうして隠れて暮らしているゴードンのような者もいるけど。魔族として姿を現したのは、その者の浅さかな行動だったのか、力試しだったのか、それは個人の自由よ。人間に討伐されても仕方がないわ。・・・国を出たんですもの」


 シルクリース様は、淡々と魔族が人間族の事をどう捉えているのか、語った・・・。そうなのだ、特に魔族は人間達の脅威になるつもりも無いのだが、ごく一部の者が興味本位で行っている行動に過ぎないのだ。


 ---だが、それは人間も一緒だと思うのだ。力ある者は試したいと、力を振るう。だから、わざわざ『深緑の森』奥へと入ってくる者がいるのだろう。


「---でもね、『ルーフェスト・ゲンドゥル』は違うのよ。ただ、私と『光の泉』で遊んでいただけ・・・それだけなのに---絶対に許さないわ・・・。10歳の・・・今のルーと同じくらいの姿の子供を手にかけるなんて。・・・そんな輩を『勇者』と呼ぶあなた達人間達とても滑稽だわ」


 クスリと、蔑んだ微笑を浮かべ、父と兄様を見ていた・・・。兄様は馬車の中でゴードンさんに教えられていたようだが、父は・・・厳しい表情を浮かべながら、色をなくしていた。



「---・・・父様たちは関係ないし、そんな事実は、誰にも知られていないんだよ」


 僕は少し困った顔をして、シルクリース様に告げた。


「そう---でも、次は無いわ。次にこの街にその男が近づく事があったら・・・その時はどうなるか分からないわ。---しっかり対処してね」


 父を見据えながら、シルクリース様はしっかりと告げたのだ。




 ---次に魔族の父に連絡が入ったら・・・きっと、仇を討ちに来るだろう、とシルクリース様から父への忠告なのだ。

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