終章(エピローグ) 禁忌の親子
あの日から数週間の月日が流れ。
現在禁忌の森で俺と母さん、そしてクレハと暮らしていた。
『しばらくは、旅するより、のんびりするとするかねぇ』
とのことだ。
「さ、いくぞクロエ」
「よしこい」
日課となった決闘形式の訓練。
今度こそは一撃を叩き込むと望むが――。
「まだまだあまいねぇ」
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ」
結局一撃も与えられないまま終わってしまった。
「二人ともご飯よぉ」
「お、飯だ。いくぞクロエ」
「・・・・・・」
「へばっちまってなぁ、しゃーない」
そういって抱きかかえられてしまう。
下ろせという気力もわいてこない。
その体勢のまま母さんの待つリビングへと向かっていく――。
「お疲れ様二人とも」
「それはクロエだけにいってやりなリーシャ」
「あらあら」
そうして始まる昼食。
兄貴がいなくなり、けれどクレハが加わったことで、嘗てと同じような団らんの一時。
その中にいながら思う。
嘗ての願いや誓い。
それは時に守れなかった時もあるが。
それでも。
もう、夢なんて曖昧にせず、これが俺の生きる意味だと、そう言い続けるために、俺はこれからも誓いを守り続けていくのだと。
「何をそんなカッコつけた表情してんだよー、うりうり」
「やめろってクレハ」
「そうよ、ご飯を食べる時は遊ばないの二人とも」
「いや、遊んでないぞ母さん」
「ははは、なんかいいなこういうのもさ」
ワイワイガヤガヤと騒がしい食卓。
その中にいて、改めて思う。
家族っていいものだ、と――――。
「よ、兄貴」
その日の夜、俺はとある場所へ。
森の一角。兄貴が好んでいた場所に、墓標をたてたのだ。
「母さん、取り戻したぜ、クレハもいてさ、まるで兄貴がいるみたいに騒がしい日々をすごしてる」
こつんと墓標の木に拳をあてる。
「色々失って、守れなくて、嫌になったときもあったけどさ、今はこうして生きてる。それはさ俺が一人じゃなかったからだと思うんだ」
多分、誰もいなければ、今生きているかどうかも怪しい。
それをクレハが、奮い立たせたくれた。
そして、振るい立つきっかけは、今まで失ってきた人達のお陰だだと思っている。
「……」
静かに膝をついて墓標をまっすぐ見つめる。
「助けてもらってばかりでごめん。あの時も何もできなくてごめん。そんな自分が嫌になるときもあるけど、約束する。今度こそは守り切るから。俺達の家族が笑顔でいられる場所を、守り続ける・・・・・・だからさ、もしよかったら見守ってくれよ兄貴」
墓標はもちろん何も返してこない。
けれど、それでも自分の気持ちを伝えたかったから、こうして兄貴のところにやってきた。
「――じゃ、いくよ。またくる」
立ち上がった瞬間に。
――お前ならできる、なんたってお前は俺の自慢の弟だからな。
「――――っ」
幻聴かもしれない、それでも、そう聞こえたんだ。
だから。
俺はその声に返した
ありがとう、と――。
こうしてしばらくの間三人で暮らしていたが
時は流れ、様々な出来事があり。
ぽつり、ぽつりと人が集まっていく。
魔の森には世界から見放され、孤独を抱える多くのモノが。
そんな彼、彼女らと手を取り合い、共に生きることとなり。
その集まりは時が経つにつれ、やがて集落へと変貌し、街へと発展し、最後は王国に至る。
その国の名は、外からは畏怖と敬意を、住む人々からは誇りをもって。
――禁忌の国と呼ばれるようになったのだった。(終わり)
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