【プレイバック④】キイルタ=トラフの小休止
【第3章 登場人物】
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レイス隊の引っ越し作業はたけなわです。
不要な物の取捨選択と梱包作業だけでも骨が折れるのに、おまけに掃除まで――毎度のことではありますが、面倒なことです。
右翼第3連隊は、果たして私たちの安住の地となるでしょうか。部隊運動が激しいような場合は、一部は荷解きせず、荷車に載せたままの方が合理的かもしれません。
さて、前回に続き、第3章を振り返ってみたいと思います。4回にわたっての回想も今回が最後となります。お付き合いのほど、宜しくお願い致します。
◆第3章 振り返り
帝国暦383年5月5日、東征軍は、調査団――黒狐とその子飼いの将校たち――を迎えました。
彼らの目的は、ヴィムル河流域会戦にて爆死したイブラ=マグノマン准将について、その原因を究明するためです。
馬車から降り立とうとしている黒狐を、少佐が子どものように睨みつけはじめた際は、どうしたものかと気を揉みました。
黒狐としては、マグノマン家の莫大な財力をこの先も当てにしていたはず。マグノマン家は、年老いた当主――紙巻で財産を築いた元平民の実業家――しか居りません。
この当主が亡くなれば、財産は国庫行き。黒狐は、手が出せなくなります……って、レクレナ、その箱はもう開けないで。散らかるから。
査問は、総司令部全員に及ぶ大規模かつ執拗なものでした。
参謀部の者は、1人ずつ取調室に呼び出され、聴取を受けました。
片眼鏡の金鎖以下、全身を装飾したルーカー少将からは、露骨な提案も受けました。真実を話せば、帝国軍での立身出世を約束しよう、と。
狐の大将以下お歴々からの圧力は凄いもので、これは提案というよりも、恫喝と称した方が適切だったかもしれません。
何億クランもの大金を積まれようと、帝国上級大将の階級を用意されようと、レイス隊の皆はそんなものに心を動かされることはないでしょう。
生真面目なゴウラ少尉あたりが、語るに落ちたりしないか……少しだけ心配でした。
査問を終え、参謀部の部屋に戻る途中、少佐とすれ違いました。普段と同じモノグサを装っていましたが、張り詰めたご内心は隠しきれていませんでしたよ。
ところで、蜂蜜頭の少尉と赤髪の少女は、どうして部屋で体術の稽古をしていたのかしら。え、レクレナ、腕についたそれ……歯形?
【3-1】査問 ①
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それにしても、あの査問官たちを少佐はすべて論破してしまうとは……なるほど、撤退命令違反・物資横領・無断打電という、向こうも衝かれたくない弱みがあったわけで。
探られたくない腹は同じ。であれば、「マグノマン隊は村落Aから退避していた」と総司令部は認識とするのが、お互い一番よい着地点ではないか――と誘導されましたか。
黒狐としては、さぞや悔しかったことでしょう。その後の人事異動も露骨なものでした。
レイス隊は、降格者こそ出なかったものの、全員が参謀部を罷免されました。
「奴隷使い」に加えて「味方殺し」等の悪名てんこ盛りのレイス隊。そんな我々を引き受けてくださるところなど……ありました。
エリウ=アトロン大佐の右翼第3連隊。
よりによって、敵の主力を引き受けている右翼のしかも最前線とは――黒狐は自らの手で裁けなかった我々を、ヴァナヘイム軍の手で始末しようというのでしょう。
しかも、レディ・アトロン――あの総司令の御息女です。ただし、お父君とはその性質は真逆の苛烈で武断。「猛撃の女連隊長」の異名を持つほどです。
レイス隊の前途は洋々たるものではなさそうですが、私たちは軍人であり、命令は絶対です。
また少佐が横になってしまった。少佐、引っ越し作業の邪魔になりますから、そこでお休みにならないでください。
あ、寝息を立てる前にこの書類にサインをいただかないと……。
【作者からのお願い】
キイルタ=トラフの小休止にお付き合いいただき、ありがとうございました。
当初1話のみの予定でしたが、帝国東征軍の足跡をまとめてみると、とても足りませんでした。
重苦しいの査問会、緊迫の舌戦を思い出していただけた方、是非、ブックマークや評価をお願い致します。
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【予 告】
次回、「第6章 主な登場人物」お楽しみに。
初登場、レディ・アトロンをご紹介します。
人物紹介、地図と、いつもの流れでのスタートとなりますが、第6章も宜しくお願い致します。




