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航跡 ヴァナヘイム国興亡記  作者: 秋山 文里
第6章 囮作戦

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【プレイバック④】キイルタ=トラフの小休止

【第3章 登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n8102if/24/

挿絵(By みてみん)



 レイス隊の引っ越し作業はたけなわです。

 

 不要な物の取捨選択と梱包作業だけでも骨が折れるのに、おまけに掃除まで――毎度のことではありますが、面倒なことです。


 右翼第3連隊は、果たして私たちの安住の地となるでしょうか。部隊運動が激しいような場合は、一部は荷解きせず、荷車に載せたままの方が合理的かもしれません。


 さて、前回に続き、第3章を振り返ってみたいと思います。4回にわたっての回想も今回が最後となります。お付き合いのほど、宜しくお願い致します。




◆第3章 振り返り


 帝国暦383年5月5日、東征軍は、調査団――黒狐とその子飼いの将校たち――を迎えました。


 彼らの目的は、ヴィムル河流域会戦にて爆死したイブラ=マグノマン准将について、その原因を究明するためです。


 馬車から降り立とうとしている黒狐を、少佐が子どものようににらみつけはじめた際は、どうしたものかと気を揉みました。


 黒狐としては、マグノマン家の莫大な財力をこの先も当てにしていたはず。マグノマン家は、年老いた当主――紙巻で財産を築いた元平民の実業家――しか居りません。


 この当主が亡くなれば、財産は国庫行き。黒狐は、手が出せなくなります……って、レクレナ、その箱はもう開けないで。散らかるから。

 


 査問は、総司令部全員に及ぶ大規模かつ執拗なものでした。


 参謀部の者は、1人ずつ取調室に呼び出され、聴取を受けました。


 片眼鏡の金鎖以下、全身を装飾したルーカー少将からは、露骨な提案も受けました。真実を話せば、帝国軍での立身出世を約束しよう、と。


 狐の大将以下お歴々からの圧力は凄いもので、これは提案というよりも、恫喝どうかつと称した方が適切だったかもしれません。


 何億クランもの大金を積まれようと、帝国上級大将の階級を用意されようと、レイス隊の皆はそんなものに心を動かされることはないでしょう。


 生真面目なゴウラ少尉あたりが、語るに落ちたりしないか……少しだけ心配でした。



 査問を終え、参謀部の部屋に戻る途中、少佐とすれ違いました。普段と同じモノグサを装っていましたが、張り詰めたご内心は隠しきれていませんでしたよ。


 ところで、蜂蜜頭の少尉と赤髪の少女は、どうして部屋で体術の稽古けいこをしていたのかしら。え、レクレナ、腕についたそれ……歯形?


【3-1】査問 ①

https://ncode.syosetu.com/n8102if/25/



 それにしても、あの査問官たちを少佐はすべて論破してしまうとは……なるほど、撤退命令違反・物資横領・無断打電という、向こうもかれたくない弱みがあったわけで。


 探られたくない腹は同じ。であれば、「()()()()()()()()()()()()退()()()()()()()()()()()()()()とするのが、お互い一番よい着地点ではないか――と誘導されましたか。



 黒狐としては、さぞや悔しかったことでしょう。その後の人事異動も露骨なものでした。


 レイス隊は、降格者こそ出なかったものの、全員が参謀部を罷免されました。


 「奴隷使い」に加えて「味方殺し」等の悪名てんこ盛りのレイス隊。そんな我々を引き受けてくださるところなど……ありました。


 エリウ=アトロン大佐の右翼第3連隊。


 よりによって、敵の主力を引き受けている右翼のしかも最前線とは――黒狐は自らの手で裁けなかった我々を、ヴァナヘイム軍の手で始末しようというのでしょう。


 しかも、レディ・アトロン――あの総司令の御息女です。ただし、お父君とはその性質は真逆の苛烈で武断。「猛撃の女連隊長」の異名を持つほどです。


 レイス隊の前途は洋々たるものではなさそうですが、私たちは軍人であり、命令は絶対です。


 また少佐が横になってしまった。少佐、引っ越し作業の邪魔になりますから、そこでお休みにならないでください。


 あ、寝息を立てる前にこの書類にサインをいただかないと……。



【作者からのお願い】

キイルタ=トラフの小休止にお付き合いいただき、ありがとうございました。

当初1話のみの予定でしたが、帝国東征軍の足跡をまとめてみると、とても足りませんでした。


重苦しいの査問会、緊迫の舌戦を思い出していただけた方、是非、ブックマークや評価をお願い致します。


このページの下側にある「ブックマークに追加」や「いいね」ボタン、【☆☆☆☆☆】をタップいただけましたら幸いです。



【予 告】

次回、「第6章 主な登場人物」お楽しみに。


初登場、レディ・アトロンをご紹介します。

人物紹介、地図と、いつもの流れでのスタートとなりますが、第6章も宜しくお願い致します。

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