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航跡 ヴァナヘイム国興亡記  作者: 秋山 文里
第4章 若き総司令

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【4-14】配置換え

【第4章 登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n8102if/32/

挿絵(By みてみん)



「これより、総司令官閣下は、各部隊巡視に向かわれる」


 狼の紋章が記された戦旗が、大きく翻った。


 城門に副司令官スカルド=ローズル中将以下、留守居の幕僚たちが勢揃いし、敬礼で総司令官一行を送り出す。


 副官以下、従者を従えたアルベルト=ミーミル大将が、馬上より答礼する。


 ミーミルが総司令官に就任し、最初に着手したことは、王都ノーアトゥーンから前線のトリルハイム城塞への総司令部の移転だった。


 だが、ミーミルは、トリルハイム城塞に入ったあとも、引っ越し作業のはかどらぬ地下食糧庫もとい、総司令部には入らず、自ら前線各部隊の巡察に乗り出したのである。



 ヴァナヘイム軍の布陣は、トリルハイム城を中心に、東西60キロにもおよぶ長大なものであった。


 しかし、部隊ごとに巡視を行うと、図上よりも兵力が著しく不足している箇所と、反対にだぶついている箇所が、そこかしこに見受けられた。


 そこで、ミーミルとその幕僚たちは、各部隊に対し、防衛上さして重要でない陣営にはその場を放棄させ、他の重要地点へ配置換えをさせようとした。



 ところが、それらは簡単には進まなかった。



「我らは、多くの部下の血を犠牲にして、この陣営を守備している。それを捨てろというのか」

 このような感情論を振りかざし、新総司令官の指示に従わぬ将軍が続出したのである。


 城塞地下の総司令部に戻ると、参謀長・シャツィ=フルングニル等幕僚たちは、ジャガイモの詰まった木箱の間から愚痴をこぼしたくもなった。

「まったく、どの将軍もけしからんです。総司令官の命令を何だと思っているのやら」


「将軍たちも命がけで戦い抜いて来たのだ。仕方なかろう」

 思いのほか、若い総司令官は気に留めていないようだった。


 ヴァナヘイム軍がトリルハイム城塞周辺まで退いたのは、せいぜいこの1カ月のことである。この地で帝国軍と銃火を交えた数は、それほど多くはない。


 ミーミルの視野は、先のヴィムル河流域会戦、いや1年前のヴァンガル郊外決戦にまで及んでいるのかもしれない。


 彼は図上、飽きることなく消しゴムと鉛筆を動かしては、味方の配置を修正している。


「しかし、各隊の配置を改めているいま、帝国軍の反撃が始まったら、ひとたまりもありません」


 布陣の変更を始めたヴァナヘイム軍は、猛獣の口元にわき腹をさらけ出した草食動物も同じである。危険極まりない状況であることを副司令官・ローズルがあらためて指摘した。


「そのときは、全軍白旗を揚げて、許しを請うしかないだろうな」

 ミーミルは図面から顔を上げずに、さして面白くもない冗談を口にした。



 その後も、布陣の再編は予定どおり進むことはなかった。


 陣形は乱れきり、未警戒の状態が続くことに、幕僚たちは毎日気が気ではなかった。だが、その間、総司令官の言動は泰然としており、焦燥感が伝わってくるようなことはなかった。



 結局、ヴァナヘイム軍は配置換えを完了するまでにひと月近くを要してしまった。


 それまで帝国軍からの攻撃が始まらなかったことを、ローズルやフルングニルたちは「女神エーシルの天恵だ」と喜びあった。



【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


新任司令官ミーミルを応援してくださる方、

ミーミルの策が気になるという方、


是非、ブックマークや評価をお願い致します。


このページの下側にある「ブックマークに追加」や「いいね」ボタン、【☆☆☆☆☆】をタップいただけましたら幸いです。



【予 告】

次回、「裸踊り ①」お楽しみに。


「あれはどうした。ずいぶんと賑やかだな」

ミーミルは、伸縮式の望遠鏡を伸ばすと右目に当てる。


「それが、その……」

「帝国軍の兵士による挑発が続いておりまして……」

総司令官の問いに対し、先導の者たちからは、先ほどまでの歯切れの良い解説は聞かれなかった。彼らは一様に顔色が冴えない――。

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