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航跡 ヴァナヘイム国興亡記  作者: 秋山 文里
第4章 若き総司令

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【4-2】皮算用 下

【第4章 登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n8102if/32/

挿絵(By みてみん)


 帝国暦383年5月下旬、敵国首都という未踏の臓腑への渇望に、獣心をき出しにさせた帝国貴族たちの話し合いが続いている。


 議論は、王都における略奪の順番にとどまらなかった。これまで占領した諸都市とその領土のうち、東都のネムグラン=オーラム上級大将より「切り取り自由」とされた分の割り当てにまで及んだ。


「ヨータの街は、ビレー将軍の差配に任せるということで」


 参謀長・コナン=モアナ新准将が禿頭とくとうを光らせて提案するも、副司令・リア=ルーカー新中将が片眼鏡の金チェーンを光らせて反対する。


「いやいや、グラシルもビレー将軍が治めると言っていたではないか。ヨータはブレゴン将軍に譲るべきだろう」


 前者の提案に先任参謀・アラン=ニームド新中佐が包帯の巻かれた首をゆっくり縦に振ると、後者の意見に参謀・フォウォレ=バロル大尉が片手を眼鏡に添えながら力強くうなずく。

 

 あろうことか、ブリクリウ大将が送り込んだ子飼いの将校たちまで、ブレゴン・ビレー両派に別れて仲間割れを助長している始末である。



 この3日間、軍議の場において両派は対立し、結論を出しえないでいる。


 四将軍の手柄は、先任参謀であったセラ=レイス少佐の作戦によるところが大きかった。だが、右翼の一部隊へ追いやられた小賢しい若造の功績など、念頭にある者はこの場にいない。


 くどいようだが、一番乗りの栄光は、手つかずの敵城の略奪が思いのままであることを意味する。それはすなわち、莫大な富の独占と同義であった。


 帝国軍は国法で略奪を戒めていたが、有名無実となって久しい。現・帝国宰相ネムグラン=オーラム――東征軍オーナー・アルイル=オーラムの父――も、若かりし頃、占領地の略奪によって得た富を次々と中央の有力者に贈り、立身出世の足がかりを築いたとされる。


 もっとも、この度の遠征では、どの貴族も重い軍役を担って参加している。莫大な戦費を負担して従軍した彼らが、戦後の報酬を期待するのも無理からぬことであった。


「……」

 東征軍総司令官に留任したズフタフ=アトロン大将は、両派の対立を戒めず、かつ片方へ積極的に加担する姿勢を示さなかった。


 それは、ブリクリウ派閥の内輪もめに手をこまねいていたのではなく、将軍たちの抱える切実な事情を斟酌しんしゃくしたからであった。


 ここに至って帝国軍有利の戦局は覆りようもない。


 戦後、無用な争いを起こすよりも、今のうちにある程度議論を尽くした方が良い――膿を出し切っておいた方が良い――とも、老将アトロンは考えたのである。

 

 こうして、「懲罰人事」に続いて、「戦後の皮算用」により、完全勝利の一歩手前まで来て、帝国東征軍の前進は停止したのであった。



【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


ビレー将軍一派に加担される方、

ブレゴン将軍一派に加担される方、

どちらの一派にも加担されない方、


是非、ブックマークや評価をお願い致します。


このページの下側にある「ブックマークに追加」や「いいね」ボタン、【☆☆☆☆☆】をタップいただけましたら幸いです。



【予 告】

次回、「任命式 上」お楽しみに。


「今日より貴様が我が国の将兵10万の総指揮を執れ」


 5月10日、ヴァナヘイム国王都ノーアトゥーンの宮殿内・謁見えっけんの大広間では、アルベルト=ミーミルが思わず、主君の血色の悪い顔を見返していた――。


本編では、いよいよヴァナヘイム国のフェイズに移ります。

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