【3-6】懲罰人事 中
【第3章 登場人物】
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査問会では、セラ=レイスにやり込められたとはいえ、キンピカ少将……リア=ルーカーは、ブリクリウ傘下において頭脳派の部類に入る。
彼は、ざっと本件の顛末を振り返った。
「俺は2度どころか、1度たりとも無電は打っていない!」
件の斥候兵は、徹頭徹尾そう主張していた。
誤認云々以前に、そもそも彼は打電すらしていないという。
では、どうしてマグノマンは、うらぶれた村落で爆死したのか。
我々調査団としては、総司令部もとい、参謀部が黒だと思っている。
ところが、参謀部は――不遜な先任参謀は、なかなか尻尾を掴ませないのだ。マグノマン隊の未退避を知りながら、彼らが砲撃開始したことを立証する存在は、見つかっていない。
参謀部内での小僧や小娘たちへの離反工作も不発に終わった。部下たちをどう飼い慣らしているのか知らないが、参謀連中の結束力は侮れないものがある。
黒髪の女上司の模範解答を必死に頭に叩き込んだのだろう。やたらと図体の大きい小僧や、蜂蜜色の髪の小娘は、その上司の回答と一字一句間違えぬよう言葉を吐き出していた。
そのような者たちにまで取り入ろうとし、実りを結ばなかったことは、慚愧に堪えぬ。
我々には、あの斥候兵を糸口に調査を進めるしか手はなくなった。
しかし、そうした無理攻めは、マグノマン准将による作戦命令違反、軍需物資着服といった軍紀違反の詮議が避けられぬ。
たとえ誤認などしていなかったとしても、斥候兵は准将による軍紀違反の生き証人であることに変わりはないのだ。
まして、「『退避完了』の無電が、准将の手の者による」などという彼の言い分が容れられでもしたら、子飼いとはいえ、マグノマンによる山積みの軍紀違反は、いよいよかばい切れなくなる。
撤退命令の不履行だけならともかく、兵糧弾薬の横領に加えて、無電の恣意的乱用――マグノマン本人は戦死しているのだから、その責は、派閥の長たるブリクリウへ帰属することになりかねない。
参謀部への疑いを追跡するには、マグノマンの違反は避けられず、マグノマンの違反を不問にするには、参謀部への疑いも見過ごすほかない。
何という堂々巡りだろうか。
狐面の上官――ブリクリウ大将が我慢ならないのは、あの紅髪の小僧によって、私ども不肖の部下たちが、ことごとく論破されたことだけではないだろう。
小生意気な紅毛の若造が描いたシナリオに、利害の面から調子を合わせねばならない状況へと、追い込まれたことにあったのだ。
それは、査問会が敗北に終わったことと同義であった。
敗北を、認めざるを得ないがゆえの、腹立たしさと疎ましさ――その一部が、私のうかつな一言をきっかけに、狐の口から漏れ出たのだ。
【3-5】懲罰人事 上
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それにしても、あの斥候兵は、札として扱いづらい。
参謀部への容疑の裏付けに用いようにも、本件のつじつま合わせ・証拠隠蔽の阻害になる者など、ブリクリウ大将としては一刻も早く処分したかったのだろう。
罪科は、現地誤認でも何でもよい。
マグノマン隊による命令違反および火事場泥棒の現場に立ち会ったのが、あの斥候兵の運の尽きだったのだ。
ルーカーは片眼鏡を外し、金刺繍入りのハンカチで額の脂汗を拭った。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
ゴウラ、レクレナに対する、副長トラフによる模範解答レクチャーの様子が気になる方、
やはり、斥候兵は気の毒だな……と思われた方、
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【予 告】
次回、「懲罰人事 下」お楽しみに。
斥候兵の処刑を皮切りに、懲罰人事は次々と断行されていった。
そこでは、査問会での負けを取り戻すかのように、黒狐もといターン=ブリクリウが躍動した――。
第3章 最終話にて、懲罰人事はどのように落ち着くのか、お見逃しなく!




