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航跡 ヴァナヘイム国興亡記  作者: 秋山 文里
第2章 ヴィムル河流域会戦

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【2-12】機関砲


「航跡」続編――ブレギア国編 の執筆を始めました。


https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533


宜しくお願い致します。


物語の流れや話数配分が整えたのち、こちらにも投稿して参ります。



2023年12月15日追記





【第2章 登場人物】

https://ncode.syosetu.com/n8102if/7/

挿絵(By みてみん)



 村落Aには、砲弾という砲弾が降りそそいでいた。さらに、それらが村内に置かれていたおびただしい数の木箱――火薬――に着火すると、爆発は地を割き、天を震わせた。


 ドーマル隊3,800名の将兵のうち、村落に突入していた総司令官以下1,000名は、瞬時に地上から消滅した。


 いまや、彼らが存在したことを示すのは、家屋と思われる建物の残骸にこびりついた、わずかな肉片程度であった。

 

 村落の周囲に展開していたヴァナヘイム軍は、総司令官たちが爆死するのを、手をこまねいて見つめるしかなかった。落雷と噴火が同時に起こったような衝撃を前に、彼らは無力だった。


 そればかりか、帝国軍が、常識や経験では測れないほどの火力を運用したことに、彼らは驚きを禁じ得なかった。


 驚きはたちまち恐怖へと変化した。


 ムール=オリアン少将は、ドーマル総司令官への忠誠心は低く、ただ勝ち馬に乗ろうとしてついてきたにすぎない。怖気づいた彼とその幕僚たちは、真っ先にきびすを返した。

 

 彼らがきっかけを作ってくれたことを幸い、他のヴァナヘイム各隊も、雪崩を打つようにして、来た道を戻り始めた。それは、4月25日の夕刻のことであった。



 しかし、退却したヴァナヘイム軍将兵に待ち構える運命は、村落で四散した者たちよりも悲惨であったかもしれない。


 夜通し東へ向けて逃げ続け、ヴィムル河までたどり着いた彼らが目にしたのは、河向こうにて、日の出前の薄明かりに浮かび上がる鷲の紋章旗であった。


 いつの間にか帝国軍は背後に回り、逃げてくるヴァ軍を待ち受けていたのである。


「将軍、いかが致しますか。このまま河を渡って敵と一戦交えましょうか」


「愚か者ッ!対岸に上がるまでに甚大な被害をこうむるわッ」

 オリアンは鉤鼻かぎばなを震わせて、部下からの質問に分かりきった回答をぶつけた。


 先日の渡河の折、この辺りの流域における水深は、とても徒歩で渡れるものではないと、確認済みだ。


 また、豊富に流れるは、雪解けの水なのだろう。水泳が達者な者でもひとたび河中に飛び込めば、たちまち冷水に体温を奪われ、溺死は避けられない。


 往路の際の小舟や筏は、対岸の帝国軍が利用したのであろう。こちら側にはほとんど残されていないが、それらに乗ってのろのろと河を渡っていては、岸辺に待ち構える帝国軍の小銃に狙い撃ちにされるだけだろう。


 彼らはやむなく、河に沿って上流と下流に分かれることにした。徒歩で渡河できる浅瀬を探すためである。



 上流組はオリアン少将が、下流組はディック=フューリス准将がそれぞれ率いることになった。


 盟友であるヘルゲ=ウプサラ准将の姿が見えないことから、フューリス以下の下流組は、ヴィムル河畔をゆっくりと下り、落ち延びてくる友軍をしばらく待つことにした。


 しかし、河辺に道はなく、彼らは群生する葦や低木を避けるように進むことを余儀なくされていった。こうして、先行して上流組が、しばらく遅れて下流組も、いつの間にか天然の袋小路に陥ってしまったのである。



 しばらく進むと、視野は開けたものの、そこはぐるりと密度濃い林に囲まれていた。それは、城壁に囲まれた()()に迷い込んだものと同義であった。


 そこへ、1発の銃声が響いた。それを合図とするかのように、()()からの抜け道を探していたヴァナヘイム軍に向けて、銃弾の雨が降り注いだのである。


 帝国軍は、この狭隘な地の外縁――木々の合間――に多数の歩兵に機関砲兵も交えて配置していた。狭い()()において、それは野砲よりもはるかに有効であった。


 横殴りに飛来する銃弾に、ヴァ軍将兵はばたばたとなぎ倒されていく。


 特に機関砲は、たくさんのヴァ兵をミンチにかけた。


 人力でクランクを回すことで、発射、排莢はいきょう、給弾、装填、発射……を繰り返すこの兵器は、その性能をいかんなく発揮した。連射される銃弾に、ヴァ国兵は、足をもがれ、腕をちぎられ、首を跳ね飛ばされた。


 上流の袋小路では、下流のそれよりも先行して、殺人シャワーの斉射が始まっていた。


「もはや、これまでか……」

 銃弾の嵐を避けるため、腹這になっていたヴァ軍「上流組」のオリアン少将とその幕僚たちが、小銃に着剣もしくはサーベルを抜き、最後の突撃を決意した時だった。


「……?」

 頭上を数多飛来していた帝国軍の凶弾が突如として緩慢になったのである。思わず少将たちはうつ伏せのまま顔を見合わせた。


「ミ、ミーミル隊です!ミーミル隊が、敵の囲みを破っています」

 助かったと言わんばかりの歓声が、ヴァナヘイム軍のどこからか沸く。



 上体を起こしたオリアンが背後を振り返ると、木々の合間に複数の戦旗が視認できた。そこに記された「咆哮する狼」は、ミーミル家の紋章である。


 機関砲は、その重量から即座に方向変換させることが難しい。アルベルト=ミーミルは、林の外側――帝国歩兵・機関砲陣地の背後――から、騎兵部隊を突入させ、帝国軍の包囲を突き崩すと、味方の血路を開いたのであった。


 木々のなかに騎兵を入れるのは狂気の沙汰である。しかし、訓練が行きわたっているのだろう、ミーミル隊は、樹木の薄いところには馬ごと乗り入れ、そうでないところには、馬を乗り捨て、歩兵とともに徒歩で林を切り分けて進んだのであった。


 この黒鳶色くろとびいろの髪を持つ大佐は、先の軍議にて慎重論を口したことで、総司令官の不興を買い、彼の指揮下の各隊は、全軍の最も後方に置かれていた。


 ヴァ軍にとってそれが幸いした。


 ミーミル連隊は最後尾にいたため、村落における前線の異変を知るや、即座に味方の退路を確保するために動き出せたのである。



 ミーミル指揮なす各隊の動きは、目覚ましかった。


 一兵でも多く友軍がこの()()から逃げ出すまで、彼らは木々を利用して踏みとどまる。そののち、ひとつところに集結し、帝国軍の追撃を封じたのである。


 それは、まったく見事な動きであった。各隊計2,000人ほどが、生き物のように離散から集合し、ひと塊となって帝国軍を押しのけ、その追撃を緩めると、彼らも悠々と撤退していったのである。



【作者からのお願い】

この先も「航跡」は続いていきます。


ミーミル……レイスの好敵手が現れたな、と思われた方、是非、ブックマークや評価をお願い致します。


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【予 告】

次回、「ソーセージ」お楽しみに。


帝国四将軍が1人、イース少将のお茶目な一面をご覧いただけます。

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