エピローグ
「カート様、それ本当に?」
「あぁ、間違いないよ。」
ある日の昼下がり、ひさしぶりに妻と2人だけでゆっくりと過ごしていた。
ふと話題が彼女の兄──レイナードの婚約のことになり、そういえば、と何気なく話した内容がカテリーナの琴線にふれたようだった。
「お兄さまの今までの方を全部知っていらっしゃるのですか?」
「うーん…どうだろう。まあだいたい知ってるかな?」
「ちなみにそうじゃなかった方とかは…?」
「俺が知っている限りではいないかな。」
「えぇっ!?」
「そんなに驚く?」
「ええ…それはもう…。あっ、もしかしてカート様は知らないのかしら…?」
「ん?」
「お兄さまの初恋、リリーなのですって。」
「へぇ…。ああ、なるほどね。」
「納得しました?」
「うん。リリアンナ嬢が今までの女性に似ているんじゃなくて、今までの女性がリリアンナ嬢に似ていたわけか。」
明るい栗色の髪に金の瞳。
確かに少なくはないが、そう多くもない色彩だ。
それだけではなく雰囲気もどことなくリリアンナ嬢に似ている女ばかりだった。
「お兄さま、意外に一途なのかしら。」
「俺は単純に好みなのかと思っていたけど…初恋を引きずっていただけだったとはねぇ。」
「…カート様、笑顔が怖いです。」
「そう?」
「ええ。」
「別に何ってこともないよ?ただ…」
「ただ?」
「いつか報復しようと思っていたからこれは使えるかなって。」
「…お兄さまに何をされたんですか…?」
「内緒。」
「そうですか…。」
呆れたような顔も可愛いなぁと思いながら、さてどうやって攻めようかな、と頭を巡らす。
「カート様…楽しそうですね…?」
「ふふふ。」




