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第44話 訓練終了 【改】

 名もなき迷宮付近での最後の朝食を食べ終わるとテントを片付け王都に向けて出発するために全員が整列していた。

 集まっている人の中で誰一人として昨夜のフェスのことを話すようなことはしなかった。フェスはその気持ちが嬉しかったが表に出すことはしなかった。


 出発準備が終わり後は、フェスの合図を待つばかりだった。


「疲れも溜まっていると思います。今日は王都まで走りその場で解散とします」

 フェスの言葉を聞いた全員が内心で、珍しい! と思った。フェスも皆が思っていることに気づいていたが気がついていない振りをして話を進めた。

「約束の二月ふたつきまで、明日から残り七日間で最後の仕上げをします。全員、全身鎧プレートアーマーを着て特別練兵場に朝九時に集まって下さい」

 全員がフェスの特別練兵場の言葉を聞き意図がわかり顔色を悪くさせていた。


 特別練兵場、城の地下にある百メートル四方の部屋のことだ。

 全員が顔色を悪くさせているのには理由がある。この特別練兵場では絶対に人が死ぬことがないために訓練では真剣の利用が義務付けられているからだ。

 人が死なないカラクリは勿論ある。それは、部屋の四隅にいつの時代に作られたが分からない古代魔道具の柱の能力だった。武器、魔術による攻撃であっても死ぬ寸前に特別練兵場の隣の部屋に自動で転移させられ怪我も自動で回復され即死の攻撃には当たる寸前に転移されるようになっていた。

 死なないとわかっていても特別練兵場を使用する騎士は少ない。

 特別練兵場を使用して訓練を行う隊は騎士のエリートが集う第一騎士団でも王室騎士団ロイヤルガードと親衛隊の二隊だけだった。二隊は城内と王族を命を懸けて守らねばならなく誰よりも強くなければならなかった。

 その話を聞いたフェスが内心思ったことがある。


 ……ならどうして、命を掛けて守らなければならないソフィア王女が誘拐され女王の命が危険に晒されたんだ? と……フェスはその事を内心で考えていたと思っていたが実は声に出して呟いていた。その呟きを聞いたアーシャとマインが騎士を目指すきっかけとなっていたのだがフェスは知らなかった。


「では、王都に向かいましょう……出発!」

 

 フェスの合図で全員が走り出し……何こともなく王都へと到着し解散となった。


「フェスはどうするの? 家に帰るの?」

 街門を抜けたところでアーシャがフェスに声をかけた。

「いいえ、一度城に行きます。迷宮の地下で死んでいた人たちの身寄りの捜索と遺髪と遺骨を渡す手配をして、女王陛下と王女様に挨拶をしていきます」

 フェスは首を振ってから城に寄ることを伝えた。

「嫌そうに見えるけど城に行くの?」

「はい、行かないと家にきますから……大勢でこられるくらいなら此方から行きます。まあ、頼みこともありますから」

「頼みこと?」

「訓練に関係のあることです。訓練最終日を楽しみにしていてください」

「……嫌な予感しかしないけど?」

 アーシャとマインはフェスの言葉に嫌な予感を感じていた。

「僕は城に行きますけど二人はどうしますか?」

「私達は帰るわ」

 フェスは、アーシャとマインと途中で別れて城へと向かった。

 

 城に入ると名もなき迷宮の地下で死んでいた人達の遺髪と遺骨を担当の役人に手渡し、状況を詳しく説明してから女王に挨拶をし一つ頼みことをしてからエレノア王女とアリゼ王女の執務室に入った。

 執務室に入ると書類の山ができていた。


 あれ? 前回以上の書類? 帰るかな?


 フェスは執務室の中に入らないで帰ろうとしたのだが後ろからきたメイドに捕まり部屋の中へ連れ込まれてしまった。


「フェス様お待ちしておりました」

 メイドがフェスの手を握ったままで口を開き挨拶を始めた。

「……待っていたとは?」

「王女様方をお願い致します」

「王女様方? そう言えばいないようですが何方へ?」

「執務をそこそこに城の周りを走ったり素振りをしておられます」


 ……走ったり素振り? 確かに走ったら良い様なことを言ったけど……。


「どうしてですか?」

「王女様方の話しでは、フェス様が痩せている女の子が好きって言っていたと」

 

 ……そんなこと言った覚えが無い、けど?


「僕は、痩せている女の子が好きって一度も言ったことないですよ?」

 フェスがそう言い終わると執務室の外から「えー!」と三人の王女の声が聞こえてきた。

「お姉さま方どういうことですか? フェス様は太っている人は嫌いだと仰って居られましたよね?」

 ソフィアは姉二人に詰め寄りエレノアとアリゼ二人の王女は困惑していた。

「言いましたよね? ケーキばかり食べていると太ると」

 困惑していたエレノアだったが、何とか口を開いて聞いた。

「言いましたけど……痩せている人が好きとは一言も言っていません。太ると病気になりやすいと注意をしただけです。走ることは健康に良いので続けてください……今日は、失礼します」

 書類整理をしたくなかったフェスは、誤魔化して退室しようとした。が三人の王女に捕まってしまった。

「何か御用ですか?」

「書類整理のお手伝いをお願いします」

「……わかりました」

 逃げられないと悟ったフェスは諦めて手伝うことにした。


 書類整理の仕方をもう一度最初から教えながら整理を始めソフィアは部屋の隅のテーブルでお茶を飲んでいた。

 書類整理が終わった頃には昼食の時間が過ぎていた。

 フェスと三人の王女がフェスが用意した昼食を食べようとすると女王と大公が部屋に入ってきて一緒に食べることとなった。


 食事終了後にフェスと女王が話を始めた。 

「フェス、さっきの話だけど本当に大丈夫なの?」

「勿論です。全員が勝てるとは思っていませんが半数は勝てると思います。二ヶ月間の訓練の成果を見てください」

「わかりました。楽しみにしています」


「何の話?」

 フェスと女王の話しが気になったエレノアが話が終わったのを見計らって聞いた。

「訓練最終日を楽しみにしていてください」

  

 話もお茶も終わったので城を出ることにした。歩いて戻ったが何も起こらずに家にたとり着いた。


 家に着いたフェスを屋敷にいる人全員が出迎えていた。フィーニス先生はフェスの顔を見るなり抱き付いた。

「……フィーニス先生、どうしたんですか?」

「アーシャさんとマインさんに聞きました。大丈夫でしたか?」

 フィーニス先生はアーシャとマインに昨夜のことを聞き心配で帰ってくるのを外で待っていた。

「……はい、二人が居てくれたので大丈夫でした。フィーニス先生……母みたいですね?」

「はい、私はみんなのお母さん代わりのつもりです」

「……」

「申し訳ありません。嫌でしたか?」

 フィーニス先生の言葉に黙ってしまったフェスが怒っているのだと思い謝ったが、フェスは首を左右に振っていた。

「あれ! フェス、フィーニス先生に甘えてるの?」

「最近甘えん坊になったんじゃない?」

 フィーニスに声をかけようとしたフェスより先に屋敷から出てきたアーシャとマインにからかわれてしまった。

「別にお母さんに甘えるの可笑しくないですよね? それに僕はまだ十二才ですし……」

 フェスの言葉に嬉しくなったフィーニスが抱き付く力を強めた。

「フィーニス先生! 苦しいです」

「も、申し訳ありません」

 フィーニスが必死にフェスに謝っている姿を見て全員で笑っていた。


「ところでどうされたんですか?」

「迷宮の地下にいた女の人の様子を見にきたの」

「どうでした?」

「うん、少しは元気になったみたい。まだ救いだったのは……フェスに助けられた時に襲われる前だったようなの」

「そうですか……名前は聞きましたか?」

「レナさん十八才よ」


 フェスは屋敷へと入り、名もなき迷宮の最下層で助けたレナと話をした。

 レナの話を聞き纏めてみると……商人ギルト登録ランクCの行商人の一人娘で父親の弟子と婚約も決まっていた。父親は行商人を辞め夢であった王都に店を持つために移動をしている最中にゴブリンの一団に襲われレナ以外の人が殺され食べられてしまった。とレナは泣きながら語っていた。


 レナが泣き止むのを待ちフェスが言葉をかけた。

「これからどうされますか? 身寄りの方はいらっしゃいますか?」

 フェスの言葉に首を力なく左右に振った。

「では、どうするか決まるまで家にいてください」

 追い出されると思っていたレナはフェスの言葉に驚いていた。

「……宜しいのですか? 何処の誰かもわからないのに……」

「悪い人なんですか?」

「いいえ!」

「冗談です。一応人を見る目を持っているつもりですから……ゆっくりしていって下さい」

「ありがとう、ございます」


 話が終わりフェスは、後のことをフィーニスに任せて部屋を出た。


 翌朝……朝食を食べ終わったフェスは城の地下にある特別練兵場に立っていた。フェスの正面には顔色を悪くさせている騎士と見習い騎士たちの姿があった。


「皆さん顔色悪いようですね? どうされたんですか?」

「いや……別にどうもしない」

 フェスの言葉にグラードが左右に首を振った。

「今日初日ですから真剣は使いません……木刀を使います」

 その言葉に全員が安堵の表情を浮かべていた。

「今日は木刀で手加減なしの本気で撃ち合って貰います」

「フェスは?」

「僕はやりません……今日は」

 フェスの最後の呟きは誰にも聞こえていなかった。

「今日は木刀で、明日は訓練用の剣です。その次の日から真剣を使って訓練をします」


 フェスの言葉に全員が頷き真面目に訓練に取り組んだ。

 一日目の木刀、二日目の訓練用の剣は問題なくこなしていき三日目の真剣も最初は抵抗があったが四日目五日目には慣れて本気で相手に斬りかかっていた。

 六日目、フェス一人対全員で真剣による戦いをした。フェスが威圧を放ちながら戦い全員の動きが鈍かったその中でも戦い離脱しながらも何度も何度もフェスに襲い掛かっていた。昼食も摂らずに戦い続け六日目の訓練も終了した。


「とうとう明日が訓練最終日となります。今日は早めに休み明日の最終日に備えてください」

「明日も今日と同じ事するんじゃないのか?」

「明日は趣向を変えてます。楽しみにしていてください」


 フェスの言葉を聞いた全員に悪寒が走りフェスを見たが、既にその場にはいなかった。


 

 翌日、二ヶ月に及んだ訓練最終日……フェスの正面には訓練を受けてきた総勢百五十人が立っていた。

 フェスが一言も喋らずに立っていると特別練兵場に入ってくる人達がいた。入ってきた人たちを見て先に練兵場にいた百五十人は呆気にとられていた。


 特別練兵場に入って来た人たちとは、コーデリア女王、ヴァージニア大公爵、リチャード公爵、パトリック侯爵、アルフォンス王太子殿下、エレノア、アリゼ、ソフィア三王女に続いて親衛隊五十人、王室騎士団ロイヤルガード百人だった。


「フェスどういうこと?」

 アーシャが当然疑問に思ったことを全員を代表してフェスに質問した。

「今日は、親衛隊と王室騎士団ロイヤルガードの協力の元……百五十人対百五十人の模擬戦を行なって貰います」

「なっ!」

 

 全員が驚くのも無理なかった。親衛隊も王室騎士団ロイヤルガードも本来なら他の騎士団との模擬戦を禁止されていた。何故なら武の能力に差があり過ぎるので自信をなくす者が現れ騎士を辞めていく人が続出したからだ。

 今回はフェスによる訓練の成果を見るのに女王が許可を出したのだ。


「ここでは人は死にませんので、ルールは一つです。先に相手を全滅させた方の勝ちとします」


 フェスがルール説明をしている最中にも親衛隊が女王に本当にいいのかと聞いていた。女王は、勿論と答えるだけだった。


「ルール説明は以上です。準備をお願いします。十分後に模擬戦開始します」


「フェスどういうつもりなの? 勝てる訳ないでしょ!」

 アーシャがフェスに詰め寄ったが、フェスは首を左右に振ってから笑顔で答えた。

「そうでしょうか? 確かに二月ふたつき前なら完膚なきまでにやられていたと思います。皆さんは二ヶ月間僕の訓練を受け同等の力を身につけました。相手は皆さんを格下と侮っていますので、此方さえ油断しなければ勝てます」

「……本当に勝てるのか?」

 フェスの言葉を聞いた数人がやる気になってきてグラードが確認した。

「勝てます。例え両隊長がいたとしても勝てます」

「わかった。やってみよう」

 遂に全員がやる気になった。


 両軍が陣形をとり開始の合図を待つばかりとなった。フェスの言ったとおりに親衛隊と王室騎士団ロイヤルガードの連合軍はグラードたちを格下と嘲笑っていた。


 フェスが女王を見ると一歩前に出て右手を真上に上げ振り下ろすのと同時に言葉を発した。

「始め!」

 女王の合図と同時に両軍が剣を構えて走り出した。

 両軍は最初こそ一進一退でどちらも攻めあぐねていたが徐々に親衛隊、王室騎士団ロイヤルガード連合軍が押し始めグラードたちの中軍が後退を始めた。

 格下と嘲笑いながら攻めていた連合軍は気づいていなかったがグラードたち近衛騎士団の左軍、右軍は下がっておらずそれところが攻め勝ってさえいた。

 

 連合軍の中軍が攻め勝っていたために味方の左軍右軍の崩れに気づかず攻めていたが、グラードのいる中軍が盛り返し攻め始めた頃にやっと異変に気がついた。後ろからも攻められて挟み撃ち……いや、四方から攻められていることに気づくのが遅かった。一人まだ一人と倒されていきとうとう全員が倒されてしまった。

 模擬戦はグラードたちの勝利で幕を閉じた。が、格下と侮っていた者達に負けた親衛隊、王室騎士団ロイヤルガードの面々は納得ができずに揉めていた。

  

 見かねた女王が止めようとした時に二人の男が入ってきた。

 

 王室騎士団ロイヤルガード団長カロン・オークランドとエクレーシア王国の兵士騎士全ての頂点に立つ親衛隊隊長クロード・オークランドの二人の兄弟だった。オークランド公爵家の嫡子のクロード、次男のカロン……貴族の間では二人の内の何方かが将来女王となるエレノアと婚約しもう一人がアリゼかソフィアと婚約するだろうと噂されていた。しかし、エレノアは勿論アリゼ、ソフィアもその気はなかった。女王も婚約させるつもりはなかった。

 クロードとカロンの二人はわからないが現オークランド公爵家は、王族派、貴族派の両派に良い顔をしようとしていた。

 良く言えば中立派で、悪く言えば蝙蝠こうもりだ。王族派が有利なときは王族派につき、貴族派が有利なときは貴族派につく。あっちにふらふら、こっちにふらふら、と有利な方の陣営に付くためにそう言われている。

 オークランド家は、四百年前まで王族でありエクレーシア王国に吸収されてからも大貴族の一員である公爵家となった。

 エクレーシア王国に吸収されてから文武において実力者が輩出されていなかった。代々能力のない領主は、領地系ではなく城内で力をつけるために金を使い足りなくなると領民が吸い上げていた。領民が領地が逃げ出しオークランドの領地からひとがいなくなってしまった。

 領民がいなくなったのに城内で力をつけるために借金に借金を重ねて返せなくなってしまった。

 当時のオークランド当主は、賄賂に靡かなかった貴族は勿論のこと賄賂を受け取っていた貴族からも援助を受けることができないほど嫌われていた。

 膨れ上がった借金を返すために当時の当主は、国王に泣きついた。当時の国王は、オークランド領を買い上げて直轄地とした。 

 借金を全て返し終わったオークランド家は、領地を失ったが国王の情けで下級文官に取り立てられ仕事の際にある人物と出会った。

 その人物の悪知恵を借りて商売をすることとなった。その商売こそが現オークランド公爵家の礎となった。

 その商売とは、高利貸しの金貸しだった。何処からも借りることの出来ない者にも貸す金貸しであり返せない者は、男は奴隷送り、女は娼館送りにしていた。黒い噂があるオークランド家の金貸しから借りた者は、絶対に返せなくなる、と。

 金貸しの利益を使い役職を周りにわからないように買いのし上がった。

 現当主は、既に引退し屋敷に籠っているが、最後の役職が親衛隊隊長、弟が王室騎士団団長ロイヤルガードだった。二人共剣術は一般兵よりはマシという腕前だった。

 引退する際にまだまだ半人前だった当主の息子、兄が親衛隊隊長に弟が王室騎士団ロイヤルガード団長に就任した。もちろん反発する者はいたのだがことごとく身に覚えのない罪により投獄された。詳しい調査の手が入る前に処刑されていた。

 反発した者が投獄され処刑される。馬鹿でもわかることだ。それにより反発する者はいなくなった。


 特別練兵場に入ってきたクロードとカロンの二人はフェスを睨んでから女王に挨拶をし自分の部下を先に部屋から出しフェスに言葉を掛けてから練兵場を後にした。


「フェス……今何を言われたの?」

「いえ、別に」


 ……あまり調子に乗るなよ! どういう意味だ? 


 すれ違いざまにクロードに言われたことを考えていた。

 考えてもわかるはずもないので、考えることを止め整列をしている皆に声をかけた。


「皆さん、今日は見事でした。が、勝てたのは相手がこちらを見下していたことと作戦によるものであり実力で勝利した訳ではありません」

 全員がフェスの言葉を神妙に聞き入っていた。

「二ヶ月間に及んだ訓練も今を持って終了としますが、これからも訓練を怠らず精進してくれればと思います。……二ヶ月間ご苦労様でした」

 フェスの言葉が終わると同時に拍手が起きた。


「フェス君も二ヶ月間ご苦労様でした。思っていた以上の成果でした」

 拍手が鳴り止むのと同時に女王がフェスに言葉をかけた。


 少し話をしてから解散となった。


その後も兵士や騎士の訓練を任されることとなったが、グラードたち最初のグループ以降成果は出なかった。

 成果が出なかったと言うより成果が出る前に辞めてしまっていた。最初の威圧で脱落する者が多数現れたり威圧の訓練を乗り越えたかと思えばそこで辞めてしまい最後まで残る者は一人もいなかった。

 結果があまりにもおかしいのでグラードたちが調査した。調査結果は親衛隊と王室騎士団ロイヤルガードが手をまわしての嫌がらせだった。平民のフェスが女王や王女達との仲を妬んでの行為だった。


 兵士達を強く出来なかったフェスの信用がなくなり訓練を受ける者が一人もいなくなってしまった。が嫌がらせはそれだけに留まらなかった。

 エレノア王女とアリゼ王女の執務の手伝いにも嫌がらせが入った。完璧だった書類を何者かが書き直したり手を加えたりし行政各所を混乱させてしまった。


 行政を混乱させた罪により投獄された。もっとも犯罪行為ではなく子供のしたこととして一日で牢を出されることとなった。

 フェスが捕まり牢に入れられるまで誰一人として味方する者がいなかった。いや、正確には、フェスの味方をしそうな人たちがいない日を見計らって実行したのだから仕方なかった。翌日に女王が聞き牢から出すように指示をするがその前に牢から出されていた。

 牢に入れられたフェスに誰一人として味方がいなかったと錯覚させるためだった。

 それに気づいたフェスは、牢に入れられた以降から王侯貴族と係わろうとはしなくなった。女王、王女は勿論、アーシャ、マインとも係わりを絶った。フェスの屋敷にきた際に一言二言話をして席を立っていた。


 建前だったソフィア王女の従者も辞めようとしたが、辞めさせてもらえずソフィア王女との関係を完全に絶つことができなかった。


 この状況のまま五ヶ月が流れて八月……フェス十二才の夏となった。


 過去編終了となります。何処が過去編だったのか書いている自分が一番分かりませんでした。

 過去編などとせずに素直に年数を重ねて行けばよかったと思っています。

 次回から二章の最初の部分から二ヶ月後の話となります。

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