エピローグ:沈黙のあとの、穏やかな朝
数ヶ月後。
王都から離れた、海が見える静かな別荘のテラス。
そこには、かつて「不気味な沈黙の令嬢」と「氷の騎士」と呼ばれた二人の姿があった。
「アルフレート、お茶が入りましたわ」
エルシアが、鈴の鳴るような澄んだ声で名を呼び、微笑んだ。
彼女の声は、アルフレートの「感情共鳴」の中で、世界で最も穏やかで美しい旋律として響いている。
「ああ、ありがとう。……今日のエルシアの声は、一段と優しい音がするな」
アルフレートは、もはや副団長の重圧に苦しむ男ではなかった。彼は公爵家を継ぐことを放棄し(代わりに分家の有能な親族が継ぐことになった)、エルシアと共に静かな人生を歩むことを選んだのだ。
傍らでは、サーラが満足げに二人の様子を見守っている。彼女もまた、一周目の悪夢から解き放たれ、今は二人の幸せな未来を守るための、最強の味方としてここにいた。
アルフレートは、エルシアの指先の傷跡――あの夜、剣を掴んだ時にできた消えない跡に、愛おしそうに口付けた。
「……お前に、二度も恋をさせた。……この命、一生をかけてお前に捧げるよ」
「……ええ。私も、二度目の人生で、ようやく貴方を捕まえることができたわ」
二人は、太陽の光を浴びながら、穏やかに笑い合った。
かつて絶望の象徴だった沈黙は、今や、言葉を超えて響き合う、深い信頼の静寂へと変わっていた。
二人の物語は、ここから。
書き直された運命の頁は、まだ真っ白なまま、幸福な未来へと続いていく。
(完)
無事に完結を迎えました!最後まで読んでくださり感謝の気持ちでいっぱいです。
ヤンデレ騎士様の愛、いかがでしたでしょうか?
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