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碧き舞い花//並行譚  作者: ユフォン・ホイコントロ  訳者:御島いる
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並行譚、はじまります。

投稿開始時点(2017.12.7現在)では、スウィ・フォリクァ編だけの限定的なものにするつもりです。ご好評をいただけたら、過去のものや今後のものも検討したいと思います。

 テングと共に非戦闘員の避難誘導をあらかた終えたゼィロス。避難所となっている訓練棟の外に出て、居住区の方を確認する。今後はここを防衛するのだが、ゼィロスの黄緑色の瞳は一点を見つめる。

 未だに居住区の向こうには巨大な穴が空いているのが見える。

「あれを塞がないことには、敵は増える一方だろう」

 テングが建物から現れた。ゼィロスのあとを追って外へ出てきたらしい。

 ゼィロスは視線を穴から離さずに頷く。「ああ」

「わしはこの乱れた状況で気配を探れぬが」テングはゼィロスの横に並び立つ。「カッパは……おるのか?」

「いる。鍵を回し道を作る役目は果たした、しかし退いていない。それが腑に落ちないが」

「まだなにかしでかす気でいるのか、あやつは……」

「ともかくあいつがまだこの地にいるのなら、鍵を壊すのが穴を塞ぐのに一番の手だ」

 ついさっき訓練場に魔導賢者のヒュエリ・ティーが姿を現したときに、彼女にマカの技術によって穴を塞げるかをゼィロスは確認した。彼女はできますと、慌てふためきながらも真摯に答えてくれた。

 しかしとゼィロスは思う。彼女には準備をするよう指示をしたが、それが整ったとしても彼女一人の力では時間がかかるのはマカについて浅い知識しか持っていないゼィロスでもわかる。せめてマカの源である魔素を扱える者が他に大勢いれば話は変わるのかもしれないが。

 ヒュエリには準備が整い次第取り掛かってもらうことにして、こちらもこちらで動いておく必要がある。非戦闘員の防衛や穴を塞ごうとするヒュエリの護衛は他の戦士に任せても大丈夫だろう。頼れる戦士は評議会設立からの年付きで充分に増えている。

「あやつに関しては、わしかお主が片を付けなければならぬだろう」

 テングがゼィロスを見やる。ゼィロスは彼の三つ目をしっかりと見返す。

「本来ならばわしが手を下したいが、わしは武器を持たぬ……戦を知らぬ……。お主の手によってあやつが討たれるのであれば、わしのこの煮えたぎる想いも鳴りを潜めるだろう」

 テングの似合わぬしかめっ面に、彼のやりきれない想いを感じるゼィロス。当然だが、未だに裏切りを消化しきれていないのだ。

「頼むぞ、『異空の賢者』よ」

「任せてくれ、『変態仙人』」


 気配を探った先へゼィロスは跳んだ。

 そこはスウィ・フォリクァにあるカッパの家の前だった。居住区の外れにあり、戦火は迫っていない。むしろ閑散として静かだった。世界が襲撃を受けているとは思えない。

 ゼィロスはそっと扉を開け、中に入った。

 扉に背を向けて床に膝をつき、まるで祈っているようなカッパの後ろ姿があった。彼の前には棚があり、雪の結晶を模したガラスが連なってできた首飾りが二つ並べられていた。

「妻と娘に報告か?」

 カッパは立ち上がり、振り返る。その顔は恍惚。悦に入った笑みを浮かべていた。

「……ゼィロス。わしを殺しに来たか?」

「お前が大人しく捕まって、情報を口にするとは思えない。それほどに陶酔して見える」

「当然。あの方は、ユキメとサユキをこの手に戻してくださるのだからのぉ!」

「テングもお前の死を望んでいる。古き友よ、妻と娘に会わせてやる」

 ゼィロスは背にした大剣を引く抜く。ワシ(ヴェファー)。その名の通りワシの意匠が施された大剣。評議会結成の後に『鋼鉄の森』の刀鍛冶クラフォフに打ち鍛えてもらったものだ。大剣に分類されてはいるが、その大きさはオーウィンやスヴァニより一回り大きいくらいなもの。大剣としては小ぶりだ。

「おいおい、ゼィロス。わしが易々とこの首を差し出すと思っているのか? 見くびられたものだ……いいや、見くびらせていたのだがな、わしが戦えぬと」

「ご託はいい。お前だけに時間をかけてはいられない」

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