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&609

 宇宙は壊れつつあった。始祖の龍には誰もかなわない。勇猛果敢な軍神も、すべてを見通す龍も、理屈を飛び越える攻撃も、世界を壊すだけの力の本流だって……そのすべての源は始祖の龍へとつながってる。

 だからこそ、始祖の龍には通じない。この世界、この宇宙……それらすべてはたった一つの存在。そう始祖の龍から始まってるからだ。すべての祖、すべての始まり、0からの1……それが始祖だ。始祖はルール。始祖こそがシステム。始祖が電源だ。

 だからこそ、その枠組みの中でいくら粋がっても、いくら強くなっても、いくら強大でも、いくら見通してもそれらは意味をなさない。だってすべては始祖へと帰結するからだ。


 幾ら龍がいても、その倍の数、竜がいても、どれだけの神が徒党を組んだとしても、すべてを始祖の龍が飲み込む。大きく口を開いた始祖の龍はその口へと現宇宙を飲み込もうとしてる。あらがえ切れなかったものからその口の中に吸い込まれてきえていく。カサノヴァのせいでその頭が三つになった始祖の龍の吸引力は三倍になってる。


 そのせいで……いや、違う。そもそもが始祖の龍が「食われろ」――と本気で命令したら、この現宇宙のすべての存在は逆らえない。だってその魂さえももとは始祖の龍の一部だったものだからだ。


 それは宿主に戻ろうとする本能ともいえる行動。最初から始祖の龍へとこの宇宙が勝てる道理なんてものはなかった。これにあらがえるのはこの宇宙から脱却してる存在だけだろう。


「なに……やってるのよ」


 私はそんな風につぶやく。このすべてが終わろうとしてる宇宙の中で……そうつぶやくしかできない。今の状況で、始祖の龍の口に進まないのは私だけ……ラーゼの奴によってこの宇宙から脱却してる私だけだ。


「ぐうぬああああ!」

「諦めないでヴァラヴァレレイドさん!」


 この宇宙にこだわって、この宇宙を救いたいと思ってたヴァラヴァレレイド。彼は当然、始祖の龍の命令にあらがえない。だからこそ、私が止めてなかったら、すでに始祖の龍のもとへといってその存在を食われてただろう。

 なんとか今は私の力でその体を拘束することでどうにとめてるけど……そもそもがヴァラヴァレレイドは私よりも強いのだ。その力で私の拘束から脱却しようとしてるし、始祖の龍の宇宙を飲み込もうとする力もある。

 それのせいで私の力も限界が近い。このままじゃ私も始祖の龍へと食われてしまう。どうにかして脱出したい。


(私一人なら……)


 それができる。ラーゼの新生宇宙まで私なら一瞬で飛べる。なぜか私にはそれができた。この宇宙の神の時から。でも今はもう新生宇宙の存在だ。

 だからこそ、より楽にできる。でも今は……完全に新生宇宙とは途切れてるし私へのエネルギーの供給はない。それにここまでの戦い……それでの消耗もあって、このまま暴れられたらヴァラヴァレレイドは……判断を迫られてる。

 私だけでもここから脱出するか? それともこのままヴァラヴァレレイドとともに心中するか……でも、心うちはほぼ決まってるといっていい。だって……このまま二人して心中しても何も残らないからだ。

 ヴァラヴァレレイドには悪いけど……

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