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ジョーカー・ガン  作者: 唄海
1章 撃鉄を起こせ
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16の目

「いってぇ⋯⋯」


 頭の右側が無くなったかと思った。視界はまだグラグラするが、とにかく起きなければ。


「起きた? 大丈夫?」

「あー⋯⋯大丈夫じゃなさそう」


 立ち上がろうと腹筋に力を入れるが、頭が重くて持ち上がらない。仕方が無いから、もう一度目を瞑って考える。

 俺は、何をする為にここに来たんだ?


「あぁ、思い出した。サリア、俺の服返してくれ」


 隣で心配そうに俺の顔を除き込むサリアに、ここへ来た動機を伝える。


「服? あるけど⋯⋯本当に大丈夫?」

「気にするな」

「う、うん。じゃあ待ってて」


 トタトタと急いで消えて行くサリアの背中を追って、それから別方向にある扉に目を向ける。男の子が3人、女の子が3人。もう1人は⋯⋯どっちだ?

 扉の向こうには、こちらを警戒してじっと睨む7人の子供達がいた。


「⋯⋯悪かったな。いきなり押しかけて」


 慣れない精一杯の笑顔を貼り付ける。普段使い笑ってないせいで、顔の筋肉がピクピクと痙攣しているのが分かった。


「⋯⋯お兄ちゃん、サリアお姉ちゃんの友達?」


 おそらく一番歳上だろう。女の子が皆より一歩前に出て問い掛ける。


「友達⋯⋯だと思うぞ? 多分あっちは思ってないけど」


 ここで否定してしまっても後々面倒になりそうだ。こっちから思う分には、そう思っても問題は無いだろう。


「でも、街でも見たことないよ。本当にここの人?」


 次は男の子だ。多分この子が、男の子の中では一番歳上だろう。身長的に。


「遠くから⋯⋯本当に遠い所から来たんだ。それで帰れなくなって、最近ここに居る事になった」

「可哀想。寂しくないの?」

「平気だ、大人だからな。一人だって別に寂しくないさ」


 どの口が言うのか。誰よりも子供で、弱くて無責任だと言うのに。心の中で薄ら笑いを浮かべて、自己嫌悪する。


「強いんだなぁ、兄ちゃんは」

「⋯⋯お前達の姉ちゃんの方が、よっぽど強いよ」

「ん? 誰が強いの?」

「⋯⋯何でもない。悪いなわざわざ」


 いつの間にか戻ってきたサリアの手には、俺の着ていたパーカーがあった。

 もうそろそろ大丈夫だろう。立ち上がって、洗濯された真新しい服を受け取る。なんだろう、石鹸のいい香りを帯びている。


「あー、それお姉ちゃんが超頑張って洗ってたやつじゃん」

「もーカトル、余計な事言わないの! ほら、みんなはとにかく罠をちゃんと直しなさい!」

「はーい」


 しぶしぶと子供達が外に出ていく。今まで賑やかだった聖堂内は、水を打った様に静かになってしまった。


「そうだ、罠。怪我はないか、サリア」

「うん、君のおかけで。ごめんね、子供達がいっつも来る人相手にやってるの。やめなさいって何度も言ってるのに聞かなくて⋯⋯」

「はっ、今度は投石機も作動するといいな」

「⋯⋯ありがと。庇ってくれて」

「ん? なんか言ったか?」

「何でもないよ。それより、ここに来たのは服だけの為?」

「⋯⋯⋯⋯」

「何かあったんでしょ?」

「あぁ。お前との約束を早速守れそうに無くて、自信が無くなった」


 後ろめたい気持ちで胸を詰まらせ、サリアから目を逸らす。守るなどと言ってこのザマだ。


「⋯⋯しばらく、ここに居なよ。戻りたくなったら、いつでも戻っていいから」

「何も、俺に言わないのか?」

「⋯⋯どうして?」

「あれだけ大口叩いて、何も出来ないまま逃げてきたんだぞ?」

「何も出来なかったなんて事は無い。君は間違いなくあたしを守ってくれた。それはあたしが保証するよ」


 彼女の指が、優しく俺の髪をかき上げる。振り払う気は起きなかった。


「傷は無いみたい。よかった」

「お前はその⋯⋯優しいよな」

「んー、甘くはないようにはしてるよ?」

「違いが分からねぇ」

「うん、むつかしいんだよね」


 サリアははにかみながら、俺の頭を撫でた。子供扱いされる様な年でもないのに、どうにも彼女は俺と子供達を一緒にしている。


「悪い、もう少しここに居る」

「⋯⋯うん、わかった」


 そんな彼女の笑顔に、俺はまた逃げた。

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