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そんなことないよ
「君……ホーネットなの……?」
少女は銃を見つめながら聞いてくる。
「俺、は」
どう答えたらいいのか分からない。もし、ホーネットが危険視されているなら、俺は少女から距離を置かれるだろう。
別にそれならそれでいいはずだ。さっさと出て行けばいい。それなのに、俺はそれが怖かった。
「………」
そのまま黙り込む。このままじゃもっと怪しまれるだけだって言うのに、いい返事が思い浮かばない。
「君?」
黙っている俺を、少女は訝しげに覗き込んで来る。思わず目を逸らしてしまう。
「やっぱり、言えない事なの?」
「……ごめん」
俯く。その視界に、銃と、銃とは不釣り合いな細い手が差し出された。
「はい、これ」
ぽん、と俺の手の平に銃を置く。
「大切な物なんでしょ?」
「……人殺しにしか使えない物なんていらねぇよ。クソが」
思わず少女に当たるような口調で言ってしまった。少女は俺の物を返しただけなのに、俺はそれがどうしようもなく辛い。
まるで、これで殺せと言わんばかりに。お前はこれしか生きる道が無いと。
「そんなことないよ」
「……」
「ぜったいに、そんなことないよ」
だと言うのに、少女は静かに微笑みながら俺の頭を撫でてきた。




