聖母
「いなかったのか。同年代の奴ら」
「いるにはいるんだけど……話す機会がなかったというかね」
「そう、か」
この世界にどれだけ人がいるか分からないし、同年代の奴らが何をしているのかも知らない。だから俺は、何も言わずに黙って続きを聞くことにした。
「あたしね、ここに子ども達と住んでいるの。親のいない子ども達と」
「じゃあ、お前の親は……」
「いないよ、あたしも。ここには、親のいない人しかいない」
「──っ」
思わず息を呑む。まさか、この少女も俺と同じだったなんて。
「いや、俺以上かもしれないな」
親が無く、子ども達と住んでいる。それなら、自然とこの少女が面倒を見ている事になる。そんなの、俺より何倍も大変な事だろう。
「子ども達ってのは?」
「今はお昼寝だよ。ほら、さっきまで晴れてたから外で遊んで疲れちゃったみたい」
子ども達、その事を話す少女の声はとても優しい。俺の母親も、こんな声をしていたのだろうか。思い出せないのが、少しだけ虚しい。
「着替え終わったぞ」
「そう、それじゃあ出てもいいね」
椅子の陰から、少女がひょっこりと出てくる。どうやら、ちゃんと見ないでいたらしい。割としっかりしているみたいだ。なるほど、子ども達ばかり相手にしてるなら、嫌でもこんな性格になるな。
「それでも、あんな子供扱いはやめて欲しいなぁ……」
苦笑する。少しだけ、ほんの少しだけ気が楽になった気がする。この少女は、いつの間にか人を安心させる力でもあるのだろうか。
なんで俺は、死のうとしてたはずなのにこんな安心しているんだろう。
「ねぇ、せっかくだからもう少しお話しようよ」
「しょうがねぇな……」
「あ、でもその前に濡れた服乾かさないと」
「悪いな、そこまで」
少女は俺の脱いだ服を持ち上げると、なにかに気付いたような顔になる。すると、ポケットに手を入れてる。
「あ!」
ようやく思い出す。リーダーから貰った銃を、ポケットに入れていたのだ。あんな物を見られたら、俺は完全に怪しまれる。何故だろう、この少女には不審な目では見られたくない。
思わず少女に手を伸ばす。が、そんな抵抗は通じずに、少女はポケットから鉄の塊を引っ張り出す。
「───っ!」
銃を見た瞬間、少女はぴたりと固まる。そしてそのまま──
「ホーネット……?」
さっきまでさんざん聞いた単語を口にした。




