↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このスキル、やばスギル。【リゼ・アルノールの来歴譚】~合流まで~   作者: 明日乃風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/8

第8話 帰る途中



 岩の間から突き出された槍を、リゼは剣で外へ払った。


 セドが踏み込み、持ち主を岩壁へ押し返す。


「今だ!」


 ミナが一台目の担架を切れ目へ入れた。


 治療師と作業員が、横にした担架を持ち上げる。布が岩へ擦れた。


 二台目は、もう一人の治療師と、片腕を使える負傷者が運ぶ。


 ミナと残る負傷者が、歩けなくなった男を両側から支えた。


 伝令が棒をついて続く。


 一人ずつ、岩の向こうへ消えていく。


 ミナは切れ目へ入る前に、一度だけ振り返った。


 リゼが頷くと、ミナも岩の向こうへ消えた。


 残ったのは、セドとリゼだけだった。


 背後から足音が迫った。


 葡萄畑の石壁を越え、敵が下りてくる。


 リゼは切れ目の入口へ戻った。


「二人では離れられない」


 セドが言う。


「私が残る」


「離脱路は」


「葡萄畑の西。乾いた沢へ下りる」


「合流場所は」


「二本松」


「合図は」


「金属板を二度」


「待つ時間は」


「最後の一人が抜けてから三十呼吸。それを過ぎたら、見えなくても離れる」


 敵が石壁から飛び下りた。


 リゼが前へ出る。


 この幅なら、一度に来られるのは二人までだ。


「数に入っているな」


 セドが切れ目へ下がる。


「十二人だ」


 リゼは答えた。


 セドの姿が岩の向こうへ消えた。


     ◇


 一人目の剣を受け、二人目の膝を蹴る。


 倒れた身体が入口を塞いだ。


 その上から槍が来る。


 穂先を岩へ当て、柄を切った。


 横から来た刃が防具を擦る。


 革が引かれたが、金属留めは外れなかった。


 リゼは相手の手首へ剣の柄を打ち込み、切れ目の外へ押し戻した。


 背後の足音が遠くなる。


 担架を運ぶ足音は遅い。


 何度か止まり、また進む。


 やがて、それも聞こえなくなった。


 リゼは呼吸を数えた。


 一つ。


 敵の剣を払う。


 二つ。


 岩壁へ肩を当て、押し込まれる身体を支える。


 三つ。


 左脇腹が痛む。


 布は濡れていない。


 まだ動ける。


 十を越えた頃には、剣を握る腕が重くなった。


 二十を越える。


 敵は減らない。


 倒し切る必要はなかった。


 ここを通さなければいい。


 岩の切れ目の向こう、尾根へ続く斜面で光が一度だけ返った。


 セドの金属板か、敵の武器かは分からない。


 岩の間へ別の敵が入り、視界を塞ぐ。


 二度目を待つ。


 光は来なかった。


 二十九。


 目の前の男が、仲間の消えた岩の先を見る。


 三十。


 リゼは踏み込んだ。


 剣を打ち上げ、空いた胸を蹴る。


 敵が後ろの者を巻き込みながら倒れた。


 二度目の光は見えない。


 待つ時間は終わった。


 リゼは敵へ背を向けた。


 葡萄畑の西端に、乾いた沢がある。


 そこを下れば、二本松へ出る。


 まだ間に合う。


 リゼは仲間のもとへ戻るために踏み出した。


 次の一歩は、地面に届かなかった。


 その瞬間、リゼ・アルノールは、この世界から消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。