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タロットとライオン  作者: 凪子
【THE EMPRESS.】

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朱理と雪乃が通う大学は、留学しても留学先での単位取得が認められる。


だから学部や学科を問わず、留学する者が多い。


とはいえ費用の負担が大きいこともあり、半年や、長くても一年程度が普通だ。


雪乃のように大学三回生、四回生の二年をまるまる留学に費やす学生はまれだった。


しかも雪乃はこの二年間、全く日本に帰国していない。


新型感染症があったというのが主な理由だが、それだけではなく、実家に電話やメールもしていない。


朱理にはたまにラインが来たが、敏男とはほぼ連絡を取っていないようだった。


『好きとか嫌いっていう問題じゃない。ただ分かり合えないだけだよ』


あっさりとした言葉で雪乃は切って捨てた。


「そんな……そんなん伯父さんがかわいそうやん」


『言うと思った』


苦笑含みの声が言った。


朱理には理解できなかった。


この世でたった一人の血を分けた肉親が死の淵に立たされているのに、何事もなく笑い、冷たく突き放すことのできる神経が。


大好きで尊敬している従姉なのに、全く別の側面を見せられ、どう捉えていいか分からない。


『会ってもいいよ』


「え?」


『一度きりなら、千石貴文に会ってやってもいい』


「センゴクタカフミ?」


『見合い相手の名前だよ』


点と点がつながって、視界にさっと光が差した。


「ほんまに?!」


朱理は上ずった声で言った。胸がどきどきする。


『ああ。ただし、朱理も同席するんだぞ』


「うん、分かった!私も行く」


(雪ちゃん一人やったら心配やもん)


敏男が土下座してまで頼み込んでくれたわけだし、ここは役目を果たさなければ。


朱理は勢い込んで言った。


『じゃあ小日向に言って、日時設定してもらうから。また連絡する』


「分かった。雪ちゃん、ありがとう!」


通話を切ると、朱理ははしゃいでベッドに倒れ込んだ。


「よかった~!!」


一時はどうなることかと思ったけれど、これで一安心だ。


確かに雪乃は頑固なところがあるけれど、お相手に会ってみれば心が動くかもしれない。


それに、何といっても雪乃はとびきりの美人だ。男性のほうが放っておかないだろう。


(雪ちゃん、ハワイに好きな人いるんかな……)


朱理も年頃の女の子のご多分に漏れず、恋バナは大好物なのだが、雪乃には何となく聞きづらくて、突っ込んだ話ができずにいる。


高貴な雰囲気、何者も寄せつけないような独特のオーラがあるからだ。


直接尋ねる代わりに、タロットカードをデッキから取り出し、何度か切ってめくってみる。


出たカードは、【THE EMPRESS.】、『女帝』の逆位置だった。


ふくよかで美しい女性が贅沢な衣装を身にまとい、ゆったりとした椅子に座り、手には錫杖を持っている。


一般的には、豊かさや愛情を表すカードだ。


(ハートマークと、女性の記号が逆さになってる……)


なぜか、その部分が気になった。


ハートは愛、♀の記号が女性性を表すとするならば、雪乃は女性らしさや愛情表現がうまくできない状態なのかもしれない。


(もっと恋愛の話を聞いてあげたほうがいいのかも)


お見合い相手に会った後、感想を聞いて、雪乃が嫌だと言うのなら無理には勧めない。


その代わり、彼女の想い人や恋愛の話をじっくり聞いてみよう。


そう決意すると安心して、朱理はすぐ眠りに落ちていった。


































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