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自宅に帰ると、朱理は早速LINE通話で雪乃を呼び出した。
大学の授業はもう終わって、春休みに入っており、四年生の雪乃は卒業式を待つばかりだ。
『もしもし?』
「あ、雪ちゃん?今大丈夫?」
『大丈夫だよ』
いつもどおりの凜とした声を聞くと、安心感に包まれる。
雪乃は大阪生まれだが、幼い頃から海外と日本を行き来して暮らしているので、綺麗な標準語のイントネーションで話した。
「あ、あんな、さっき伯父さんと会って、ご飯ご馳走になってん。それでな……」
何から話せばいいか分からず、言葉が喉の奥でつっかえる。
『ああ。もしかして、病気のこと聞いた?』
朱理は打ちのめされた気分になった。
(やっぱり、伯父さんの話ほんまやったんや……)
「うん……」
『ちょ、泣くなよ』
「泣いてへん。泣いてへんけど、ちょっと、びっくりして」
『あの野郎、朱理には言うなってあんなに口止めしたのに』
強い怒りを感じて、朱理は慌てて首を振った。
「ちゃうねん、それはええねん。ショックやけど、知らんままよりはええから。
でも、そうじゃなくてな。……私、雪ちゃんのお見合い相手に会ってくれって言われてんねん」
一瞬、スマホの向こうから音が消えた。
「……雪ちゃん? 雪ちゃん、聞こえてる?」
『え?あ、ごめん。電波悪いわ』
「あんな。私、雪ちゃんのお見合い相手に会って、その人が雪ちゃんに相応しいかどうか見極めてくれって言われてるねんけど」
『へえ……』
平坦な声で雪乃は相づちを打った。
『親父がそこまでするとは思わなかったな』
「正直、雪ちゃんまだ若いし、結婚とか考えてないと思うねん。それは分かるんやけど、せめて相手の方に一回だけでも会ってみぃへん?それから決めても遅ないと思うし」
『そうだねぇ……』
これまた気のない返事である。
朱理は、かすかな苛立ちと不審を同時に覚えた。
(お父さんが亡くなるかもしれへんのに、何でなん?)
『別にいいけど、無駄だと思うよ』
雪乃は冷やかな口調で言った。
「無駄って?雪ちゃん彼氏おるん?」
『いない』
「じゃあ、好きな人は?」
『……』
返事が返ってこないので、朱理は重ねて問うた。
「それやったら、伯父さんにそのこと話したら?もし好きな人おるんやったら、伯父さんも納得してくれはるやろうし」
『はははっ。お前分かってないね、親父のこと』
屈託のない笑い声に、朱理は眉を寄せた。
『あいつは目標をこうと決めたら、どんな手段を使ってでもそれを達成する。そうやって、人生で何もかもを掴んできたんだからな』
突き放したような言い方だった。
「雪ちゃん……伯父さんのこと、嫌いなん?」
言葉にしてしまうと、疑念ははっきりと形を取って現れた。




