10話「VS『灼熱の冒険者』②」
もうすぐPVが1000超えそうでワクワクしてます。
Aランク冒険者、チナツ。『灼熱の冒険者』という又の名を持つ彼女は可愛らしい顔つきでありながらも、言葉数が少なく無愛想な対応が多いことで有名な人物だ。しかし、実力は本物で、数多くの高難易度のクエストを数多く達成してきている。
そんな彼女にはある秘密があった。それは、誰もが恐れることで、本来ならできるだけあっては欲しくないもの。
それは………
「ねぇ……….君。もっと……もっと本気で来てよ。」
チナツがとても………戦闘狂であるということ。
冒険者であれば、強い相手と闘う時に気持ちが昂る、ということはよくあることだろう。別にこれは悪いことではない。高みを目指す者ならば当然、起きることだと思われる。
しかし、チナツは違う。周りと比べたら、天と地の差だ。
彼女はAランク冒険者に就くほどの実力がありながらも、クエストを行う時は本当の力はあまり出さない。出さなくても、大体は相手を蹴散らすことが出来るからだ。
しかし、チナツの中に眠っている"本能"が目を覚ましてしまった場合、彼女は本来の力を発揮させる。もし、そうなったら、彼女は周りを気にすることなく気が済むまで暴れまわる。
加えて、彼女の加護は強力が故に、周りの被害は大きくなってしまう。
過去に、とあるモンスターを討伐しようとした際も、"本能"を目覚めさせてしまった彼女は一方的に暴れ回り、近くにあった村を崩壊直前まで陥らせてしまった経験もある。
「チナツ様!!流石にそれはいけません!!落ち着いてください!!」
それを知っているからこそ、ブルノームは声を上げる。相手が、高ランクの冒険者、あるいは高ランクモンスターなら話はまだ分かる。
しかし、今、戦っている相手はまだ冒険者にすらなっていない子供なのだ。
それを相手に、チナツが加護を発動し本気を出せば、確実にウルフを含め、ここにいる者達、全員に被害がいってしまう可能性がある。
「あは………はは♪」
しかし、そんなブルノームの言葉も今のチナツは耳に入っていないことだろう。普段は無表情な彼女が興奮しているからか、顔を赤らめ、嬉しそうに笑っている。スイッチが入ってしまった証拠でもある。
「リーフ様!!今すぐにその場から離れて下さい!!危険です!!」
チナツがダメならば、と判断したブルノームは今度はウルフに声をかける。
だが、しかし…………
「Aランク冒険者の本気…………上等です!!」
ウルフもブルノームの言葉が耳に入っていないのか、チナツに対抗するかのように改めて木刀を構えだす。
「なんなんだ、この子は!?」
目の前にいるチナツを見て、逃げ出すのが普通だ。それなのに、ウルフは彼女から逃げようとしない。むしろ、迎え撃とうとしていた。
「皆さん!!今すぐに私の傍へ!!」
これ以上、彼らに何を言っても無駄だ、と判断したブルノームはせめて周りの被害を抑えようと決めた。そのため、まずは周りにいた元・受験生達を自分の方へと集まらせる。
命に危険を感じた受験生たちは、ブルノームの傍へと集まる。全員が集まったと確認したブルノームは地面に手をつけ、叫ぶ。
「『土壁』!!」
すると、受験生含めたブルノームの周りを囲むように、地面から土でできた分厚い壁が出現した。
ギルド関係者、ブルノームの授かしり加護は"土"。地面に手を触れている間は、彼の半径500メートル内にある土を自在に操ることができる能力である。
ブルノームは自分たちの周りの以外にも、東の広場の至る所に分厚い『土壁』を出現させ、これから出る可能性のある被害を最大限に抑えようとした。
これだけ、加護を操れるということはブルノームという男は冒険者ではないものの、相当優れた人物だということがわかる。
そんな、ブルノームの必死な努力も広場の中心で睨み合う2人は見ていない。2人の視界に移るのは、目の前にいる人物のみ。
「…………行くよ。」
先に動いたのはチナツ。一気に間合いを詰めて、ウルフに目掛けて木刀を振るう。
その攻撃を、ウルフは難なく受け止めるがーーー
(ーーーー熱っ!!!)
受け止めた木刀から、物凄い熱さの煙が発生し、ウルフの肌を微かに焦がした。よく見てみると、木刀が焦げ、溶けていた。
「ふふ………♪」
そして、チナツ自身からも煙が発生し、彼女の肌からはドロドロとした溶岩が少しずつ溢れていた。
Aランク冒険者チナツの授かりし加護は"マグマ"。体内から1000〜1200°の溶岩を噴射することができる能力である。
チナツのこの"マグマ"という強力な加護がある故に、彼女が暴れるとそのマグマによって被害が出てしまう。これが、彼女が問題視されている理由であった。
ウルフは木刀が完全に折れる前に、彼女の木刀をなんとか弾いてチナツから距離をとる。
心配して木刀に目を映すが、弾いたのが早かったのが不幸中の幸いで、そこまで損害は大きくなく、まだ扱えるようだった。
しかし、チナツが加護を発動している間は下手な攻撃は自滅しているのと同様なこと。 傍から見れば、もうウルフは詰み状態になっていると等しい状況であった。
ブルノーム含め、周りの観客はここでウルフは自ら降伏するだろうと思っていた。もう、対応のしょうがないのだ。
しかし、悔やむことはない。なぜなら、冒険者にすらなっていない者がAランク冒険者であるチナツと少しではあるが、互角に渡り合えたのだから。今のウルフを見て馬鹿にする者はいない。
しかし、それはウルフが普通の人間だったら、の場合だ。
ウルフは違う。少なくとも、彼はここにいる者たちよりはこの数年間、異常な道のりを辿ってきた。
だからこそ、ウルフはーーー
「どうして………笑ってるの?」
「え?」
ウルフは笑っていた。こんな状況でありながらも、まるで楽しんでいるかのように笑っていた。
チナツに指摘されて、初めて自分の口元が緩んでいると気づくウルフ。しかし、本人は笑っている理由は分かっているようだった。
「まさか…………、こんな僕がAランク冒険者のチナツさんと渡り合えていることに驚きを感じているんです。」
彼は過去に散々と周りから"無能"と呼ばれてきた。
魔法を使うための魔力もなく、剣術も人並以下。そんなウルフがこうしてAランク冒険者と互角に渡り合える日がくるなんて思ってもいなかっただろう。
「けど、驚き以上に、今、こうしてチナツさんと戦えていることが楽しい!!楽しくて楽しくてとても、ワクワクする!!」
ウルフは1人の師と出会い、自分の本当の力と剣術を教えて貰った。その方法はかなり異常であったが、それが今のウルフの実力に繋がっていることは確かだ。
だからこそ、Aランク冒険者、チナツと戦えていることで楽しさが湧いてくる。それが理由でウルフは笑っていたのだ。
「君………本当に面白いね。なら、私は……」
ウルフの言葉を聞いて、チナツは木刀を構える。その後、彼女の全身からぶわっと溶岩が流れていく。溢れた溶岩が地についた瞬間、地は焼け溶けていた。
「全力で君を………潰しに行こう。」
ーーーダッ!!
チナツは全身から溶岩を溢れ出したまま、ウルフの方へと駆け寄る。彼女の足元からも溶岩が出て、それによって地面が溶けていることによって、チナツは滑りだすような形で近づいていく。
(あの技はーーー!?)
「いけません!!その技を使っては!!」
ブルノームは彼女の攻撃のモーションを見て、繰り出すであろう技を予想し、危険を察して大声をあげる。
しかし、チナツは彼の言葉を耳に傾けることなく、自身の技の中で最強級の1つである技を発動させた。
「『ラスト・バーニング』!!!」
チナツは溢れ出した溶岩をまるで、波のようにさせながら、ウルフに向かっていく。波のように襲いかかる溶岩は辺り一帯を焦がしていく。
この技は広範囲のため、回避することはほぼ不可能。それに、この技を喰らってしまったらウルフはただではおかないだろう。
誰もが逃げ出してもおかしくはない中、ウルフは逃げる様子も見せず、目をつぶり、木刀を抜刀するかのように構えて、ゆっくりと口を開いた。
「必殺・ケモノミチーーー」
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