脳筋部屋
ダークアーマーを振り切ったので、りょーちゃんに復活薬を使う。
「火力が足りない」
起き上がっての一言。
「りょーちゃん、魔法は一つも取ってないの?」
「取ってない」
完全に特化型スキル構成らしい。
近接物理耐性があるので、ごり押しするにはかなり鍛えないとダメっぽい。
さっき一撃だって、半分も削れていなかった。
「ブレス!」
支援スキルをかけ直して、近づいてきたアーマーを2人で迎撃する。
弓を放って、投げ飛ばし。
弓を放って、投げ飛ばし。
「?」
続けて弓を放とうとしたら、斧を下段に構えた。
初めて見るパターン。
腰を落とし……こっちにへ突進してきた!
真横に走って、範囲から逃れる。
「!」
追撃するように、斧を振ってきた。
ステップの無敵を使って、ギリギリ回避する。
危なかった。
もっと近かったら、当たっていたと思う。
移動系のスキルもあるし、自分が遠距離だからって油断しないように心がけないと。
ぽーん。
後ろから追ってきたりょーちゃんが、こっちに投げ飛ばしてくる。
近接物理扱いではないようなので、スマッシュの代わりになりそうだ。
「……」
りょーちゃんを見ると、短剣に持ち替えて『何か』をやりたそうにしている。
HPもだいぶ削れているし、トドメの一撃ならのけぞり無効も問題ない。
いったん弓を外して、素手になる。
ブゥン!
予想通り、起き上がりに飛び道具を重ねてくる。
ガードモーションを確認してから、接近して密着する。
ひんやりとした鉄の感触。
すごく重そうだけど……。
「えいっ!」
ぽーん。
ダークアーマーがー飛んでいく。
スキル効果なので、実際に腕力はなくても大丈夫。
キィン!
狙っていた一撃が入る。
物理耐性ごとHPを削り切り、ようやく1フロアクリアする。
「上級なだけあって、なかなかハードだね」
「状態異常ばらまいてこない分、難易度はやさしいほう」
「やさしいほうなんだ……」
攻撃力は高いし、相手のHPも高い。
アーチャーのAIパターンだって多いし、1体相手にするだけで精一杯だった。
「ちなみに、ここって何フロアあるの?」
「10」
「長丁場になりそうだね」
最初の部屋をクリアするだけでも、かなりの時間がかかってる。
今より強い敵が出てきたりしたら、どれだけかかることか。
むしろ、クリア自体が危ういかも?
「ランダム配置があるから、楽なパターン引けば早い。ボーナスフロアもあるし」
「引けない場合は?」
「ゾンビアタック」
「そうなるんだ……」
『その場復活』があるとはいえ、何度も使っていると復活までの時間が増える仕様。
支援スキルのかけ直しなども考えると、効率的とは言えない。
夕食の時間までに、クリアできるかな……?
「一度休憩するか?」
「ううん、大丈夫」
もうダンジョンに入っちゃったんだし、やれるだけやってみよう。
支援スキルとMPの回復をしっかりやってから、次の部屋へと進む。
「……」
先制されないように、ゆっくり部屋の中に入る。
最初の部屋と比べて、少し狭くなった小部屋。
相手の数は……6人。
「脳筋部屋だな」
表示を見ると、ダークウォーリアが3体、ダークブレードが3体。
先ほどと同じく、両手剣を持ったダークウォーリア。
ダークブレードは、少し短めの片手剣を持った2刀流。
どちらも近接タイプ。
「さっきより戦いやすそう、かな?」
「そうだな」
部屋の中央に大きなテーブルがあるので、うまく使えばターゲット管理が楽になるかも。
ダークアーチャーがいないので、射程外から攻撃されることもなさそうだし。
「2刀はタイマンAIだから、先に両手で」
「うん、わかった」
テーブルのこちら側にいるダークウォーリアに、りょーちゃんが突っ込んでいく。
初撃に合わせてダメージプラス。
弓に持ち替える。
近くにダークブレードがいるけど、反応はしてこない。
……いや、反応自体はしている。
りょーちゃんを見ている。
すっごい見ている。
1対1のAIのせいか、手は出してこない。
ぶすり。
遠くからダークウォーリアに攻撃して、有利な状況を作り出す。
ドゴォ!
スマッシュでこっちに飛ばしてきたので、火力連携。
まずは、1体倒す。
『!!』
倒すと同時に、ずっと見ていたダークブレードが動き出した。
両手を広げて、スキルを使う。
キュピーン!
頭の上に『剣↑』と『盾↓』のアイコンが表示される。
りょーちゃんが使っていることでおなじみ、バーサーク。
さらに、剣を掲げてスキルを使う。
ニュポーン!
体から赤いオーラが立ち込める。
『リミットブレイク』というスキル。
どちらも防御力を犠牲にして、火力に特化させるスキル。
すごーく、なじみのある光景。
ドゴォ!
裏に回っていたりょーちゃんが、こちらに飛ばしてくる。
当然、自己支援スキルにも硬直時間があるので、目の間で使ったらすきだらけ。
ズシャ!
起き上がりの飛び道具重ねも、普通に当たる。
何か特殊なスキルでもあるのかも……?
と思ったけど、その後のスマッシュも普通に入る。
ダメージプラスを入れて……。
ザシュ!
一閃が決まる。
300オーバーの大ダメージが出て、前面から倒れる。
防御を捨てているだけあって、かなりやわらかい。
あと、たくさんダメージが出るので、りょーちゃんがうれしそう。
むくり。
「!」
倒したはずのダークブレードが起き上がる。
根性スキル持ちだった!
すぐ横に、スキル硬直中のりょーちゃんが……。
追撃をしようにも、弓に持ち替えていたら間に合わない。
「ヒール!」
とっさに『ダークブレード』に向かってヒールを使う。
しゅぅぅぅぅ……。
白煙を上げて、再び地面に倒れる。
よかった。
見た目通り、闇属性だった。
キュピーン!
テーブルの向こう側にいるダークブレードが、自己支援スキルを使い出す。
障害物があるので、さっきのようにはいかない。
弓に持ち替えて、硬直を狙いにいく。
スパッ。
切り払われる。
ちょっと反応が遅かった。
そのままこっちに向かってきたので、再び矢を構える。
ガション、ガション!
軽快な動き。
イスを足場にして、テーブルの上に乗っかり……。
ガシャーン!
足を滑らせて、後頭部から落下した。
どちらかといえば軽装タイプだけど、それでも全身を覆う鎧がある。
やっぱり、動きづらいらしい。
コロコロコロ……。
倒れた衝撃で、ヘルムが転がっていく。
頭を隠すようにして、その場で動かなくなる。
サクッ、サクッ。
りょーちゃんが上に飛び乗って、容赦なく短剣を突き刺していく。
たいした抵抗もないまま、HPが0になる。
「えーと……?」
「素顔が出ると恥ずかしがって動けなくなる」
見た目よりずっとシャイだった!
もしかして、顔が隠れるヘルムをかぶっているのは、そういった理由からなんだろうか?
ドゴォ!
りょーちゃんが、次の相手を飛ばしてくる。
妨害もこないので、スムーズに連携して対処する。
残り2体。
ここまできたら、あとはミスをしないように注意するだけでいい。
ダークウォーリアを先に攻撃して、2対1の状況を確保。
さくさく倒していく。
しゅぅぅぅぅ……。
最後に残ったダークブレードに、トドメのヒールを入れる。
「ここは早く終わったね」
「脳筋部屋だしな」
相手に遠距離がいないと、ターゲット管理(※1)が楽でいい。
前衛がボクだったら、こんな風にはいかないんだろうけど。
先日、風呂場で足を滑らせて、尾てい骨と右ひじを猛打しました。
ヤ〇チャみたいなポーズでしばらくピクピクしてました。
※1、ターゲット管理:戦いやすくなるよう、どの敵に誰を狙わせるか調整すること。
いくら盾職でもすべての攻撃は受け止めきれないので、ボス以外のターゲットを他のメンバーが受け持ったりする。
現実世界で説明すると、寝起きのしょ〇べんが二手に分かれた場合に、片方を便器に向かわせ、片方を足で受け止めて被害を抑えること。




