闇に潜む城
他にも何かあるかもしれないし、ダークウォーリアの次の行動に注意する。
「……?」
ヒザをついて、床に倒れ込む。
その後ろにりょーちゃんが立っていた。
『その場復活』を選んで、バッサリいったらしい。
「全体的に強化されてる感じだね」
攻撃力、防御力、回避力、AIの反応。
どれをとっても、今までの敵より手ごわい感じ。
「火力が足りないな」
「あの一撃スキルって、当てても反撃もらっちゃうの?」
「キャンセル不能なスキル硬直あるから、即アタックAIだと反確(※1)」
「厳しい条件だね」
連携する前に、もう少し削ったほうがいい。
スキルのダメージ幅もあるし。
「でも、矢が当たらないんだよね……」
「密着すれば当たるぞ」
「近接武器だっけ?」
「ああ」
弓対策をしているようだし、そうやって当てていくしかない。
密着するまでが大変だけど。
「状態異常がもう1つあれば、ダメージ足りそうだが」
「状態異常……」
ボクが使えるスキルだと、スロウショットくらいしかない。
さっきの動きを見ると、うまく当てられる自信がない。
「……あ、そうだ!」
新しくスキル取ったんだった。
「『ダメージプラス』を取ったんだけど、スキルレベル1でも足りるかな?」
「やってみるか」
先ほどのように、ダークウォーリアを引っ張ってくる。
キィン!
今度は、いきなりスキルを放ってきた!
でも、りょーちゃんは冷静にタイミングを見計らって、ステップ回避。
近づきながらアタックを1発だけ入れて、相手のアタックを誘発。
それを避けながら裏に回り、スマッシュでこちらに飛ばしてくる。
「……」
なるほど。
距離がある場合は、ああやってスキル発動時間を稼ぐといいらしい。
自分のスキル発動時間。
相手の硬直時間。
この辺りは、しっかりと覚えておこう。
「……右!」
起き上がり前転の動きを見て、位置を修正する。
ぽっこーん!
なんとか間に合って、りょーちゃんのほうに飛んでいく。
ここまでは今まで通り。
スマッシュの硬直が終わったら、すぐにダメージプラスの詠唱に入る。
初めて使うスキルなので、どれくらいの時間がかかるかわからない。
りょーちゃんの攻撃までに、間に合うかどうか。
「!」
ロッドが光った!
「ダメージプラス!」
ザシュ!
間に合った。
さっきより高いダメージが出て、ダークウォーリアが崩れ落ちる。
「いけるな」
「そうだね」
準備時間はそこそこ。
発生時間はヒールより速いかも?
スキルキャンセルしなくてもつながるので、一撃スキルとの相性はよさそう。
「SLv1でも、それなりにダメ伸びるな」
りょーちゃんうれしそう。
最大ダメージ至上主義なので、少し増えるだけでもうれしいようだ。
「次来るぞ」
相手の弓……ダークアーチャーが動き出していた。
頭装備がフルフェイスじゃないので、他のモンスターより索敵範囲が広いのかもしれない。
こちらも弓を構えて、先手を取ろうとする。
「……?」
構えを解いて、ダークアーチャーが走り出す。
部屋の奥のほう。
盾持ちの後ろに隠れる。
「ちなみに、盾は遠反持ち(※2)」
「遠距離……反撃?」
「遠距離反射。食らったダメージの何割かを相手に返すスキル。ここの敵は30%」
「うかつに攻撃すると、危険そうだね」
「近距離なら弓でも問題ない」
「やっぱり、近接武器……」
元々ダメージがそう出ないので、ターゲットを取る分には問題なさそう。
ただ、この状況で対処する相手を増やしたくはない。
……まさか、そこまで考えての移動?
こちらの動きを見てから対応を変えるAIとなると、かなりやっかい。
でも、盾の陰に隠れていると、ダークアーチャーも攻撃できないような……?
「散開」
「!」
りょーちゃんの言葉に従って、すぐにその場から駆け出す。
肩越しにチラっと振り返ると、さっきまでいた場所の頭上にたくさんの矢が浮いていた。
その直後……。
ズガガガガ!
雨のように矢が降り注ぐ。
ダークアーチャーのスキル。
見た目からして『アローレイン』かな?
かなり広範囲のスキル。
りょーちゃんに言われなければ、確実に逃げ遅れていた。
「どうやって攻撃しよう?」
ダークアーチャーを引っ張り出そうとしても、すぐに隠れてしまって攻撃できない。
上から狙おうにも、屋根があって難しい。
屋根がなくても、当てる自信はないけど。
「盾ごとぶち抜けばよい」
「そういうスキルがあればいいけど……」
「スロットは小範囲」
「あ、そうだったっけ」
なるべく1:1を維持するように戦っているので、そういった使い方は考えていなかった。
ダークアーチャーの動きに注意しながら、スロウショットを放つ。
ぷしゅーん。
のんびりとした速度で、まっすぐ飛んでいき……。
ぶすり。
ダークガードの下半身に刺さった。
「っ!」
体が硬直して、ダメージを受ける。
さっきりょーちゃんが説明していた『遠距離反射』の効果っぽい。
元のダメージが少ないから『4』しか返ってこなかった。
でも、のけぞり硬直も一緒に発生するので、攻撃するタイミングを考えないと危険。
「……」
ダークアーチャーが動き出していた。
スロウショットには巻き込めなかったけど、盾から引っ張り出せた。
ここからでも狙えそう。
……と思ったのは、向こうも同じだったようで。
「!」
弓を引くのが見えたので、横に飛んで逃げる。
ガッ!
後ろの壁に、矢が突き刺さる。
速い!
ほとんど目で追えなかった。
難易度のせいか、種族差のせいか。
アーチャースケルトンの時より、もっと速くなっている。
できれば、先手を取りたいところ。
「……」
ほぼ同時に弓を構える。
攻撃力の差を考えると、相打ちは不利。
先に攻撃をさせて、硬直を狙ったほうがいいかもしれない。
弦は引かずに、相手の攻撃を待つ。
……。
……。
……。
「?」
攻撃してこない。
スキル準備中?
よくよく注意して見るけど、スキルチャージの発光などは見えなかった。
もしかして『何もしない』という行動かな?
そうだったら、ここで攻撃するより、りょーちゃんに加勢したほうが……。
「わっ!」
チラッとりょーちゃんのほうを見た瞬間、矢が飛んできた。
顔の横ギリギリを、かすめていく。
『何もしない』の時間切れ?
それとも、こっちの動きを見ていた……?
「!」
スキル発光!
狙いの先は……りょーちゃんの方向!
発動前に間に合うよう、すぐに矢を放つ。
「!?」
回避した。
さらに『通常攻撃』を放ってくる。
「……っ!」
攻撃硬直のせいで、回避できない。
腕に当たったその1発だけで、HPの8割ほどを持っていかれる。
やられた。
スキルキャンセルを利用したフェイント。
やっぱり、優秀なAIが入ってる。
「……」
回復したいところだけど、トドメを刺そうと狙ってきている。
持ち替えてヒールしてる余裕はない。
それどころか、ポーションを使う時間すらないかもしれない。
通常攻撃1発でこの威力なので、何に当たってもアウト。
回復もできず。
攻撃もできず。
しばらく、お見合い状態が続く。
キーボードのすきまの水分をティッシュで吸い取って、斜め45度の角度からチョップしていたら復活しました。
※1、反確:反撃確定の略。
攻撃をヒットやガードさせた場合に、相手が先に動けて反撃が確定する状態。
攻撃を当てても反撃が確定する場合は、硬直時間を仲間にフォローしてもらうか、トドメで使うしかない。
超絶技巧の○付けおじさんが妊○確実するのと同じ。
※2、遠反:遠距離反射と遠距離反撃の2種類ある。
遠距離反射、被ダメージの一部を反射する。
遠距離反撃、射程を無視した反撃。
相手の攻撃力か、自分の攻撃力かの違い。
反射はモーションなしで全員に返すが、反撃はモーションあるので同時に2人以上反撃できない。
現実世界で説明すると、小石を投げて水たまりの水が飛び散るのが遠距離反射。
小石を投げたらヤ〇ザの人に当たって大変なことになるのが遠距離反撃。




