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きのこたけのこ

「?」


 なんだろう?

 キノコがあると言われた方向へ歩いていると、草木が大きく揺れていた。

 何かいる。


 ずぽっ!


 草むらの中から、顔だけが飛び出してきた。

 大きく曲がったくちばしと、くりくりとした丸い目。

 鳥っぽい。

 顔の大きさと高さからすると、ダチョウより大きいかもしれない。


「あれが探していた鳥?」

「ああ。あとをついていけばキノコが見つかる」


 キョロキョロと、辺りを見回す鳥。

 名前は『オオノコ鳥』。

 こちらの姿が視界に入るけど、襲ってくる気配はない。

 アクティブなモンスターではないようだ。


 ばっさぁ。


 草むらから出てきて、全身が現れる。

 首ががっしりと太くて、お尻のあたりまで羽毛で覆われている。

 足もがっちりしているので、走るのが得意そう。


 くんくん……ごふぉ!


 地面に顔を近づけながら、のそのそと歩いていく。

 白くて柔らかそうなしっぽが、歩くたびにフリフリと動く。

 コミカルで愛らしい。

 ある程度進んだところで、ピタリと足を止める。


「……!」


 あった!

 オオノコ鳥の足元。

 10センチほどのキノコが生えていた。


『クェー!』


 その周りをぐるぐる歩き出す。


「……何をしてるんだろう?」


 キノコを食べるわけではなく、ただ歩いているだけ。

 何か目的があるのかな?


「キノコ派を待ってる」

「キノコ派?」

「オオノコ鳥は『キノコ派』と『タケノコ派』の2つで縄張り争いをしている」

「えっと……じゃあ、あそこにいるのは」

「タケノコ派」


 周りを気にしているオオノコ鳥。

 つぶらな瞳からは想像できないけど、縄張り争いの真っ最中らしい。


「もしかして、このままキノコを採りに行くと……?」

「キノコ派と見なされ強制スタンからの背負い込み、竹やぶに拉致される」

「攻撃してくるだけじゃないんだ」

インベ(インベントリ)が埋まるまでタケノコを運んでくる」

「勧誘の仕方が積極的!」


 相手を倒すんじゃなくて、仲間を増やす戦略。

 所持アイテムが少ない状態で行ったら、大変なことになりそう。


「『タケノコ最高!』って言えば、帰してくれる」

「言わない場合は……?」

「空を飛ぶことになるな」

「あれ? オオノコ鳥って飛べるの?」

「いや、蹴りで」

「物理的な意味だった!」


 確かに、あの足でキックされたらすごく痛そうだけど。


「こだわりがあるのか、品質のいいタケノコを持ってきてくれるぞ」

「タケノコもおいしいけどね」

 

 うかつに手を出すと危険なのはわかった。

 そうなると、どこかに行ってくれることを待つしかない。


『おっ、見ーつけたっ!』


 反対側のほうから、軽装備の男性プレイヤーがやってきた。

 オオノコ鳥のことを知らないのか、そのままキノコに手を出そうとして……。


『クェエエエ!』


 ばちこーんと、羽でプレイヤーの頭を叩く。


『ぐぇぁ!』


 頭の上でひよこが走り、その場で気絶するプレイヤー。

 ひよこエフェクト(※1)出るんだ。


 ぽーん。


 くちばしで器用にプレイヤーをつかみ、背中に放り投げる。

 そして、猛烈な勢いで走り去っていった。


「行っちゃった……」

「チャンスだな」


 キノコのある場所へ近づいていて、手招きをする。


「いいのかな……」


 身代わりにしたみたいで、ちょっと気が引ける。

 でも、これでクエストが進められる。

 連れ去られた男性に感謝しつつ、キノコを採取する。


「大きいね」


 いつもスーパーで買うキノコと比べると、かなりの大きさ。

 傘は赤茶色で、まるっとしている。

 柄の部分は黄土色で、傘に近い太さ。

 『傘が赤っぽくて大きい松茸』といった感じ。

 一番大きい物だと、20センチくらいあるのかな。


「デカイほうが品質いい料理を作りやすい」

「そうなんだ」


 せっかくなので、なるべく大きいキノコを採る。

 3本もあればいいかな?

 1本が大きいので、満足のいく量になると思う。


「戻るか」

「うん」


 さっそく町に戻って、料理の準備を……。


『クェー!』


「!?」


 振り返ると、オオノコ鳥がこちらに向かって叫んでいた。

 人を乗せていないところを見ると、先ほどとは違う個体かも。


「見つかったか」

「にらんでる?」

「キノコ派だったら、このまま見逃してくれるんだが」

「見た目で違いってわかるの?」

「わからない。襲ってくるか、こないか」

「平穏に過ごしたいけど……」


 オオノコ鳥が近づいてくる。

 値踏みするようにぐるりと回り、そして……。


『クェエエエ!』


「タケノコ派だった!」


 振り回してきた羽を、ギリギリかわす。

 アレに当たったら、強制連行されてしまう!

 一気に山を駆け下りて、町まで走るしか……。


「そうだ!」


 町に戻るなら、帰還の羽を使えばいい。

 帰還の羽を取り出して、放り投げる。


 ブッブー。


「?」


 使用不可の効果音が流れる。


「戦闘中は使えない」

「こっちから手を出してなくてもダメなんだ!」


 襲いかかってくるオオノコ鳥から逃げ回る。


「戦う? 逃げる?」

「特殊モンスターだから、1ダメージしか通らない」

「逃げる一択だね!」


 全速力で逃げ出す。

 とはいえ、相手は足の速い鳥類。

 すぐに追いつき、スタン効果のある羽を振ってくる。

 判定も広そうだし、いつかは当たりそう。


『クェー!』


「増えた!?」


 叫び声でリンク反応したのか。

 3羽ほどのオオノコ鳥が、こちらに向かって走ってきた。


「オレが引きつける」

「りょーちゃん!?」


 その場に立ち止まって、追加の3羽を待ち構える。


「町で会おう」

「わかった!」


 りょーちゃんと別れて、町を目指す。


『クェエエエ!』


「!」


 岩の上から飛び降りるようにして、攻撃をかわす。

 落下ダメージ(※2)が入るけど、動きには支障がない。


『クェエエエ!』


「!?」


 体勢が崩れたところに、オオノコ鳥が降ってくる。

 転がるようにして、なんとか避ける。

 けど、下山ルートを先回りされてしまった。

 どうやっても、逃げ切れる未来が見えない。


『クェー!』


 さらに、後ろからもう1羽やってくる。

 横は草木生い茂る森。

 少し入っただけでも、すぐに立ち往生しそう。

 逃げ道が完全にふさがれてしまった。


「……」


 じりじりと近づいてくる2羽。

 どうにかしてこの包囲を抜けたいけど、どうしたらいいのか……。


『クェエエエ!』

『ギェエエエ!』


 2羽が同時に襲いかかってきた。

 足の間を抜けるようにして、地面に滑り込む。

 すぐに立ち上がって、次の行動に備える。


『クェエエエ!』

『ギェエエエ!』


「……?」


 その2羽同士で、激しいバトルを繰り広げていた。

 こちらには見向きもしない。


「……あ」


 もしかして、片方はキノコ派のオオノコ鳥なのかな?

 羽毛が飛び散るくらいの勢いで、ばっさばさと叩き合っていた。


「……」


 しばらくぼーっとしてたけど、これってチャンスだよね?

 2羽の邪魔にならないよう、そーっと後退していく。


『クェエエエ!』

『ギェエエエ!』


 白熱しているようで、まったく気づく様子はない。

 そのまま、一気に山を駆け下りた。

 帰り道の途中で何かあとがき用に書くことを思いつきましたが、家に着くころにはすっかり忘れていました。

 あれがあんな感じであれがあーする風だったと思います。


※1、ひよこエフェクト:『ピヨる』でおなじみの気絶エフェクト。

 ひよこ以外にも、星とか、妖精とか、天使がくるくる回る場合もある。

 現実世界でも妖精さんが見えちゃう人もいるらしい。

 多くの場合は病院をおすすめされる。


※2、落下ダメージ:ヒザくらいの高さから落ちたら人は死ぬ。

 高さや落下地点の硬さでダメージが変わる。

 実際にベッドから降りるだけでもヒザが『ピキッ』ってなることが多いので、わずかな高さでも致命傷になる可能性があるのは間違いない。

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