Lv20クエスト
「20クエでSPもらえるぞ」
「そうだった」
アイテムも買ったし、さっさと受けてきちゃおう。
買い忘れないことを確認し……あ、そういえばドロップ品があるんだった。
カバンを見ると、『黒つや虫の足』が大量に入っていた。
あれだけ忙しいと、何を拾ったか見ている余裕が全然なかった。
アイテムをタップして説明を見る。
黒つや虫の足:不屈の根性によりちょっとピクピクしている。カラッと揚げるとおいしい。
「……」
これも食べるんだ……。
ベータテスト時代の空腹度があった時の名残なのかな?
見た目がちょっとアレだけど、ちゃんと調理すればいけるのかも?
「りょーちゃん、黒つや虫の足は何かに使える?」
「染色や料理の素材になる。ただ、大量に出回ってるから店売りでいい」
「料理素材になっちゃうんだ……」
どんな料理になるのか気になるけど、今のところ使う予定はない。
1個5G。
30個ほどあったそれを、全部店売りする。
おかげで、1000G以上に復帰した。
なんとなくうれしい。
「条件わかったぞ」
「条件?」
「黒ふさ獣のバフ」
「あー、さっきのアレ?」
WIKIとか掲示板で、情報を調べていたらしい。
「小さい子にはバフかけてくれるそうだ」
「……?」
「小学生とか」
「小学生じゃないよ!?」
「単純に身長で判断してるんじゃないか?」
「そ、そこまで小さくは……」
「140cm未満で報告があるな」
「……」
ほんのちょっと人より成長が遅いだけ。
まだまだ伸びる。
数か月後には、小さい子支援を受けられなくなってるはず。
……きっと。
「じゃあ、クエスト受けてくるね」
「ああ」
準備が整ったので、ニールさんの元へ向かう。
今回は、どんなクエストなんだろう?
時間制限ありだったら、今度こそ時間内にがんばりたい。
『冒険者さーん!』
近くまで行くと、両手を振ってアピールしてきた。
「ちょうどいいところに! 実は、折り入ってお願いしたいことがありまして……」
そのままクエスト説明に入る、
「お客さんの1人が、どうしても『もこもこタケのソテー』が食べたいとおっしゃっているんですよ」
「キノコ料理ですか?」
「はい。近所の山に行けば、ぼちぼち生えてるヤツです。ただ、今は手が離せない仕事がありまして……」
「そのキノコを採ってくればよいのでしょうか?」
「できれば、料理するところまでお願いしたいです」
「料理スキルは取っていないのですが……大丈夫でしょうか?」
「スキルなくても料理は……というか、生活スキル(※1)全般はスキルなしでも作れますよ。スキルレベルが高いと、良質な物ができやすくなるだけで」
「そうなのですか」
スキルがないとまったく作れない、ってわけじゃないんだ。
現実的なシステムを採用していたら、鍛冶スキルなんかは大変そう。
「まあ、火であぶるだけでも食べられますし、料理未経験でもなんとかなりますよ」
「わかりました」
「あ、もちろん、他の具材を混ぜて、極上の一品に仕上げてくださっても結構です。その場合は報酬に上乗せしますので」
今回は時間制限じゃなくて、料理の味で報酬が決まるようだ。
スキルなしだと、どれくらいの評価になるんだろう?
せっかくなら、おいしい料理を作りたい。
「準備ができたら、私に話しかけてください」
前回同様、いったん会話が終わる。
準備はオッケーなので、すぐに話しかける。
「受けてくれますか?」
「はい、お願いします」
「ありがとうございます!」
『はじめてのおりょうりクエストを受注しました』
画面の端に、クエスト進行マーク(※2)が付く。
内容は『もこもこタケのソテーを持ってくる』となっている。
「受けたか?」
「うん」
りょーちゃんと合流して、さっそく『もこもこタケ』を採りにいく。
クエストのヒントによると、雪ウサギマップの北の山で採りやすいらしい。
「りょーちゃん、生活スキル取ってる?」
「一切取ってない」
「じゃあ、このクエストもスキルなしでやったの?」
「料理自体作っていない」
「あ、そっか」
『持ってくる』という指定だから、自分で作らなくてもいいらしい。
露店などで完成品を買えば、すぐに終わる。
さっさと終わらせたい人なら、それが楽でいいのかも?
「クリア判定適当だから、そこらに生えてる雑草を持っていってもいい」
「キノコですらない!」
「生でもいい」
「料理ですらない!」
買うお金すら出したくない人は、それでもいいのかな……?
調理してない雑草を食べたら、おなか壊しそうだけど。
「怒られたりしないの?」
「毒草渡したヤツもいるが『刺激的な味だな!』という評価が返ってきたらしい」
「判定がワイルド!」
予想以上に判定が緩かった!
「追加報酬はもらえないが」
「食べ物じゃないからね……」
おいしい料理になるかわからないけど、せめて食べられる物を届けたい。
『ギャアアアア!』
前方で叫び声を上げるプレイヤー。
雪ウサギに捕まってしまったようだ。
『ウォオオオオ!?』
ポイっと投げ飛ばされて、一撃で昇天する。
近くに行って復活薬を投げて、支援をかける。
「あ、ありがとう」
「どういたしまして」
他にも、雪ウサギに苦戦しているプレイヤーちらほら。
パッと見ただけだと、凶悪なモンスターには見えない。
ついつい手を出して、がっちりホールドを食らう人があとを絶たない。
スキル修練を兼ね、支援スキルをばらまきながら進んでいく。
「うーん……」
復活薬を使うと、アイテム制限が気になってくる。
10個制限は少ない。
やっぱり『リザレクション』を優先しようかな?
スキルレベル1でも使えそう。
「この上だな」
雪ウサギゾーンを抜けると、うっそうとした森林が広がっていた。
葉っぱがもさもさしているので、中は暗そうな雰囲気。
「道はあるんだね」
クエストで人が通るのか、踏み固められた道が続いていた。
これといった装備はなくても、楽に通れそう。
「特に意味もなく草木切り倒していく連中もいるからな」
「あー」
草木などの背景も、破壊可能オブジェクト(※3)。
剣をぶんぶん振り回しながら歩いている人も、たまに目撃する。
それほど道は広くないので、りょーちゃんの後ろを歩いて森の中へ入っていく。
「……」
森の中を見回す。
もこもこタケは、どこにあるんだろう?
クエスト説明にある画像を見ながら、それらしき物がないか探していく。
木の根元や、倒木の裏。
湿気もそれなりにあるので、キノコの育成にはよさそうな環境。
「もっとわかりやすい目印があるぞ」
「そうなの?」
「鳥を探せばいい」
「鳥?」
「ああ、デカい鳥」
「?」
キノコが好きな鳥でもいるのかな?
もしそうなら、小さいキノコを探すよりは見つけやすい。
木々の間に鳥がいないか、見て回る。
「20クエかい?」
前から歩いてきた戦士っぽい人が、声をかけてきた。
「はい、もこもこタケを探しています」
「それなら、あっちのほうに生えてたぜ」
くいっと親指で方向を示す。
「ありがとうございます!」
「気をつけなよー」
そう言って、山から下りていく。
「20クエ受けてるって、どこかに表示出てる?」
「初期装備でこの場所なら、大半が20クエ」
「なるほど」
このくらいのレベルの人は、まだ初期装備の人が多いらしい。
ちょっと安心する。
学校帰りに程よい枝を拾って道草しばいている時の無敵感。
※1、生産スキル:料理、裁縫、鍛冶、片栗粉を使った物体Xなど、いろんな物を作り出すスキルの総称。
現実世界の職人が作れば、スキルを取っていなくても最高級品を作ることができる。
逆に、スキルレベルさえ高ければ、カレールーをグツグツ沸騰した状態で入れたり、プッチンするプリンをプッチンしないような禁忌を犯しても、最高級品ができることもある。
現実世界で説明すると、フタが外れて調味料全入れみたいなやらかしをしても、『一晩寝かせた物がこちら』とちゃんとした料理が出てくる感じ。
※2、クエスト進行マーク:どこに行って何をすればいいのか教えてくれる親切な表示。
チュートリアル的なクエストだと、ほぼ答えを教えてくれる。
クエストが進むにつれて、『森の中のどこか』とか『20~30代、もしくは40~50代の犯行』といった感じの適当具合になる。
現実世界で説明すると、
『右折です』 → オッケー……道せま! 対向車来たら詰まる! → 『直進です』 → おいおいおい、舗装すらされてねぇぞ! ラリーのコースと間違えてねぇか? → 『目的地周辺に着きました。お疲れ様でした』 → ここどこだよ! 最後まで案内しろよぉおおお!
となること。
※3、破壊可能オブジェクト:通学路に生えている草。
強力な魔法を使える人が町を1つ吹き飛ばしてしまうと、大勢の人に影響が出てしまう。
そのため、破壊できる物と破壊できない物が存在する。
山の1つくらい壊したとしても、メンテナンス明けにはだいたい直ってる。
現実世界で説明すると、便座は破壊可能オブジェクト、便座の土台も破壊可能オブジェクトだった。




